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14話 王子様!
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森に入った日の服に着替えて、動きやすいパンツスタイルからお坊ちゃまスタイルに戻した。
リクの服は少し大きめだけど、まあ見られるから大丈夫だろう。
リクを従者にして、俺は今日森を出る。
テントも机も椅子も全部鞄に入れたら、中くらいの肩掛け鞄をリクにも渡した。もう孤児には見えない。
何度もとかして綺麗に整えた髪は輝く金髪だし、よく笑うようになった目はきらめくアイスブルーだ。
俺は山の生活を振り返って、ちょっと遠い目になった。
リクに『なぜこんなにシゴくのか』と問われ『何らかの事情で2人がバラけることもあるだろうから、リクが1人でも生きていけるようにだよ』
みたいなことを言ったら酷く泣かれたあの失敗を思い出す。
未だに寝る時も抱え込まれて寝てるし、なんなら今俺たちの手はカップル繋ぎだ。
いくら美形にまとわりつかれてもコイツは男だ。
ちょっと虚しくなるだろ。
いや、女とそうなりたいとも思わんけど。
「今日のリクは案内兼荷物持ちだからな」
「はい」
「頼りにしてるぞ」
「!!は、はい!必ずお役に立って見せます!!」
ぎゅーっと抱きつかれて、ぐ、ぐるじい!
お、おかしいな。俺、めちゃ怪力なはずなんだけど、なぜかいつもリクを引き離せないんだよ。
苦し過ぎて涙が出てきた。
『赤い顔で涙目……はぁはぁ、なんかちんこ痛い。なんでだろ』
「な、何?」
「な、何でもないです!さ、さあ、行きましょうサフィ様!」
リクが耳元で何か呟いたけど、胸で潰されて息も絶え絶えの俺には届かなかった。
繋いだ手を振り回すリクに、こんなに町に行きたかったんなら、もっと早くに山を降りればよかったと反省したのだった。
最初に向かったのは換金所だ。
先立つものがないと何もできねえ。
荷物の中から1番色の鮮やかな宝石を1つ取り出すと店員に差し出す。
「ひとまずお金がいるのです」と。
実家が商ないをしているのだから知っている。
そこそこの身分ある貴族などが、こっそりと換金に来て金銭を得ることがあることを。
ちょっとそのふりをしてみただけだ。
そのためにいい服に着替えたのだから。
むしろ、ワケありとして、何も聞かずにさらっと換金してもらういい方法なんだよな。
「では金貨100枚で」
「ありがとう」
うほーっ。100万円分くらいになった。
暫くは生きていけるな。
まあ、宝石魔石はそんなに数がないから節約するけど、初期費用にしては大金を得られた。
店員の出したお金をパパっと鞄にしまい込もうとして、リクの鞄にも一掴み入れておくことにした。
金貨20枚くらい。金貨20枚は通貨2万カーネで日本円にして20万円くらいの価値だ。
そのくらいあれば、リクも好きなものを買えるだろという軽い気持ちだった。
「次は服かな~。どこか知ってる場所あるか?」
「はい。もちろんです」
見た目がダメだと、そもそも交渉なんてうまくいくわけがない。足元を見られて終わりだ。
着替えも何枚か欲しい。
リクについていくと古着屋さんだった。
「仕立ての服屋じゃないんだな」
「す、すみません。この町にはなくてっ」
あれ、じゃあ俺の住んでたところじゃないかも、と思ってたら、わかりやすくリクがへこんでいた。
責めるために聞いたんじゃないだけどな。
な、何か話題、何か話題……。
え、えーと。
「この町の名前は?」
「ヤスビ町です」
なるほど。森を挟んだ、キサラ街の反対側だ。ヤスビ町には仕立ての服屋がないのかあ。
でも今すぐ欲しいんだから、古着でも問題ないわな。
「そっか。じゃあ入ろ」
「は、はい!サフィ様は古着でよいのですか?」
「もちろんだよ。リクもそれでいい?」
「へっ?俺のも?」
自分の服を買ってもらえるなんて思ってなかったみたいな反応を返された。なんでだ。
むしろリクの服をサイズの合ったものに変えないと、いろいろ出掛けられないんだけど。
リクの服と俺の服とそれぞれ10セットずつは欲しいだろ?
下着も欲しいし靴も欲しい。
アレもこれもパッパッと選んでいると、リクが震える声で聞いてきた。
「そんなに買ってもらっても、何も返せないのですが」
だと。
「あのな。リクは俺の奴隷だろう?俺の奴隷が汚いなんて、俺の評価が下がっちゃうの。わかる?」
リクがコクコクと頷いた。
「じゃあわかったところで、これに着替えてきて」
黒の上下服を押し付けると、試着部屋に押し込んだ。
「おじさ~ん、ひとまずこれだけ会計してください」
「たくさんありがとうよ。金貨5枚までまけてやろう」
たくさん買った俺に、おじさんがほっくりと笑った。
俺はポケットから金貨を取り出して支払う。
「ところで、この辺りで泊まれるお宿か、格安の借家はないかな?」
「飯付きがよければ斜向かいのクカグ宿を勧めるが、借家ならモーリーさんに聞くといいよ。月辺り金貨2枚から借りられるから、10日以上宿にいるよりは安いだろうな」
「モーリーさんって?」
「宿屋の親父さ」
じゃあどのみち、お宿に顔を出せと言うことか。
「着替えました」
お、おお。
恥ずかしげに出てきたリクを見て、おじさんと俺は声を上げた。
馬子にも衣装、じゃなくって。
え、こんなにかっこよかったっけ?リクって。
「上は黒よりも白の方がいいのでは?」
「そうだな。ちょっと青の装飾が入ってるのとかあるか?」
「ありますよ。こうしてみると、トレアン王に似ていますなあ。いや、不敬ですかな。やっぱり、もう少し飾りませんか」
「いいですね」
んで調子に乗ってやり過ぎた。
「若様、傑作ですぞ」
身につける服から装飾品からふんだんに揃えている店なだけある。
素材のいい人間を飾りつけるのは店主も楽しいのだろう。
リクが貴族みたいになった。
「本当に眼福だな~。かっこいいよ」
「か!」
リクが真っ赤になったと思ったら、ぎゅーっとされた。
背中をバンバン叩く。
だから、苦しいって!
何で怪力スキル発動しないかな!
しかし、まさか衣装だけで金貨15枚も払うことになるとは思わなかったぞ。
リクの服に金貨10枚だぞ。
まあ、投資するだけの価値はあったが。
1店目でこんなに金使うとか、もう、宿屋ではなく借家にするしか選択肢は無くなった気がする。
1日いくらで食事付きではなくて、1月いくらで借りて節約自炊決定だろ。
先行きが不安だなー。
リクの服は少し大きめだけど、まあ見られるから大丈夫だろう。
リクを従者にして、俺は今日森を出る。
テントも机も椅子も全部鞄に入れたら、中くらいの肩掛け鞄をリクにも渡した。もう孤児には見えない。
何度もとかして綺麗に整えた髪は輝く金髪だし、よく笑うようになった目はきらめくアイスブルーだ。
俺は山の生活を振り返って、ちょっと遠い目になった。
リクに『なぜこんなにシゴくのか』と問われ『何らかの事情で2人がバラけることもあるだろうから、リクが1人でも生きていけるようにだよ』
みたいなことを言ったら酷く泣かれたあの失敗を思い出す。
未だに寝る時も抱え込まれて寝てるし、なんなら今俺たちの手はカップル繋ぎだ。
いくら美形にまとわりつかれてもコイツは男だ。
ちょっと虚しくなるだろ。
いや、女とそうなりたいとも思わんけど。
「今日のリクは案内兼荷物持ちだからな」
「はい」
「頼りにしてるぞ」
「!!は、はい!必ずお役に立って見せます!!」
ぎゅーっと抱きつかれて、ぐ、ぐるじい!
お、おかしいな。俺、めちゃ怪力なはずなんだけど、なぜかいつもリクを引き離せないんだよ。
苦し過ぎて涙が出てきた。
『赤い顔で涙目……はぁはぁ、なんかちんこ痛い。なんでだろ』
「な、何?」
「な、何でもないです!さ、さあ、行きましょうサフィ様!」
リクが耳元で何か呟いたけど、胸で潰されて息も絶え絶えの俺には届かなかった。
繋いだ手を振り回すリクに、こんなに町に行きたかったんなら、もっと早くに山を降りればよかったと反省したのだった。
最初に向かったのは換金所だ。
先立つものがないと何もできねえ。
荷物の中から1番色の鮮やかな宝石を1つ取り出すと店員に差し出す。
「ひとまずお金がいるのです」と。
実家が商ないをしているのだから知っている。
そこそこの身分ある貴族などが、こっそりと換金に来て金銭を得ることがあることを。
ちょっとそのふりをしてみただけだ。
そのためにいい服に着替えたのだから。
むしろ、ワケありとして、何も聞かずにさらっと換金してもらういい方法なんだよな。
「では金貨100枚で」
「ありがとう」
うほーっ。100万円分くらいになった。
暫くは生きていけるな。
まあ、宝石魔石はそんなに数がないから節約するけど、初期費用にしては大金を得られた。
店員の出したお金をパパっと鞄にしまい込もうとして、リクの鞄にも一掴み入れておくことにした。
金貨20枚くらい。金貨20枚は通貨2万カーネで日本円にして20万円くらいの価値だ。
そのくらいあれば、リクも好きなものを買えるだろという軽い気持ちだった。
「次は服かな~。どこか知ってる場所あるか?」
「はい。もちろんです」
見た目がダメだと、そもそも交渉なんてうまくいくわけがない。足元を見られて終わりだ。
着替えも何枚か欲しい。
リクについていくと古着屋さんだった。
「仕立ての服屋じゃないんだな」
「す、すみません。この町にはなくてっ」
あれ、じゃあ俺の住んでたところじゃないかも、と思ってたら、わかりやすくリクがへこんでいた。
責めるために聞いたんじゃないだけどな。
な、何か話題、何か話題……。
え、えーと。
「この町の名前は?」
「ヤスビ町です」
なるほど。森を挟んだ、キサラ街の反対側だ。ヤスビ町には仕立ての服屋がないのかあ。
でも今すぐ欲しいんだから、古着でも問題ないわな。
「そっか。じゃあ入ろ」
「は、はい!サフィ様は古着でよいのですか?」
「もちろんだよ。リクもそれでいい?」
「へっ?俺のも?」
自分の服を買ってもらえるなんて思ってなかったみたいな反応を返された。なんでだ。
むしろリクの服をサイズの合ったものに変えないと、いろいろ出掛けられないんだけど。
リクの服と俺の服とそれぞれ10セットずつは欲しいだろ?
下着も欲しいし靴も欲しい。
アレもこれもパッパッと選んでいると、リクが震える声で聞いてきた。
「そんなに買ってもらっても、何も返せないのですが」
だと。
「あのな。リクは俺の奴隷だろう?俺の奴隷が汚いなんて、俺の評価が下がっちゃうの。わかる?」
リクがコクコクと頷いた。
「じゃあわかったところで、これに着替えてきて」
黒の上下服を押し付けると、試着部屋に押し込んだ。
「おじさ~ん、ひとまずこれだけ会計してください」
「たくさんありがとうよ。金貨5枚までまけてやろう」
たくさん買った俺に、おじさんがほっくりと笑った。
俺はポケットから金貨を取り出して支払う。
「ところで、この辺りで泊まれるお宿か、格安の借家はないかな?」
「飯付きがよければ斜向かいのクカグ宿を勧めるが、借家ならモーリーさんに聞くといいよ。月辺り金貨2枚から借りられるから、10日以上宿にいるよりは安いだろうな」
「モーリーさんって?」
「宿屋の親父さ」
じゃあどのみち、お宿に顔を出せと言うことか。
「着替えました」
お、おお。
恥ずかしげに出てきたリクを見て、おじさんと俺は声を上げた。
馬子にも衣装、じゃなくって。
え、こんなにかっこよかったっけ?リクって。
「上は黒よりも白の方がいいのでは?」
「そうだな。ちょっと青の装飾が入ってるのとかあるか?」
「ありますよ。こうしてみると、トレアン王に似ていますなあ。いや、不敬ですかな。やっぱり、もう少し飾りませんか」
「いいですね」
んで調子に乗ってやり過ぎた。
「若様、傑作ですぞ」
身につける服から装飾品からふんだんに揃えている店なだけある。
素材のいい人間を飾りつけるのは店主も楽しいのだろう。
リクが貴族みたいになった。
「本当に眼福だな~。かっこいいよ」
「か!」
リクが真っ赤になったと思ったら、ぎゅーっとされた。
背中をバンバン叩く。
だから、苦しいって!
何で怪力スキル発動しないかな!
しかし、まさか衣装だけで金貨15枚も払うことになるとは思わなかったぞ。
リクの服に金貨10枚だぞ。
まあ、投資するだけの価値はあったが。
1店目でこんなに金使うとか、もう、宿屋ではなく借家にするしか選択肢は無くなった気がする。
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