廃墟の街

歩夢

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光の国

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「おい、ねえちゃん。起きてんか」

「あい」

 瞼を押し開けると、緑色が目に入る。もう一方の瞼も頑張って開けてみると、緑色のパーカーを着た少年であることを確認する。髪がツンツンに立っていて、少し険しい目をしている。

「ほら、よだれ。しっかりしてえな」

「あ」

 自分が寝ていたと思しき場所に、湖みたいな巨大な涎が残っていた。

 ああ、そうか、やっぱり自分は寝ていたんだ、と思い、ティッシュを取って涎を拭きながら思う。

「これ」

 そう言って四角い物を差し出される。ヒーリング薬局。頭痛薬。即効性。スパッと快適。

「代金。丁度やから。はよ精算してんか」

「ああ、薬。そうか。薬局か、ここは」

「いつまで寝ぼけてんねん」

「あのさ、君……サトシくんだっけ?」

「なんや。ええからはよしてえな、サッカー始まってまう!」

 サトシ君が地団駄を踏む。

 そうか。もう七時前か。

 うん……うん、顎に手を当てて、少しばかり考える。

 代金をキャッシャーに入れてレシートを千切り、袋に商品を包む。

 それを渡しながら、言った。

「なあ、サトシくん」

「なんや」

「私、妹がいるんかもしれん」

「阿呆なこと言うな。はい、ほなどうも」

 そう言うとサトシ君……サトシ某少年は薬局から出ていった。個人経営の、小さな薬局。奥には何故か駄菓子コーナー。そして私は留守番店主。

「あーあ……」

 結局あの廃墟は何だったのか、分からなかったな……

 まあ、いいか……



 スーっ……




 また廃墟の前に立っていた。

 今度は外観が見える位置だった。

 うそおん。おお、来たか。二つの反応が内側で混沌を形成する。

 そう思いながら、廃墟の中にまた、私は足を踏み入れるのでした。今度は記憶を引き継げるかな?


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