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マリッサの両親は魅了を持っている者同士、魔女に掛け合わされた。
マリッサも勿論魅了を持っているが魔女が魅了持ちの女は世に放った方が面白いからと自分の手元には残していない。
魔女には愛欲の観念がない。
だから人間の愛欲や愛憎を見るのが大好きだ。
最大の娯楽なのだ。
マリッサの両親は互いの魅了を使って好き放題暮らしていたから家には殆どいなかった。
マリッサは家に通うお手伝いさんが淡々と家事をこなす中大きくなった。
彼女に魅了の力が発現したのは月経が来てからのことで彼女がじっと目を見つめるだけで特に男性はマリッサの言いなりになった。
特に、家に殆ど両親が帰ってこない話は鉄板でマリッサが悲しげに相談すると皆マリッサに夢中になった。
マリッサはそれが楽しくて楽しくてたまらなかった。
そんな中、幼馴染のエドガーがハルヴァのことを好きなのに気付いた。その時に幼馴染三人の関係は壊れてしまった。
マリッサが唯一魅了を使わなくても居心地が良かったこの三人は元のバランスではいられなくなってしまった。
「ねえハルヴァ?今度ディオス様に会わせてよ、お願い」
「……私ディオス様の連絡先知らないから…」
ハルヴァは気持ちを誤魔化すために紅茶に口をつけた。
「なんで?そんなわけ…」
「あ…あるの!あるの!私たち…け、契約結婚だから……っ!」
「ち、違う!契約結婚ではない!お、お、お、俺はハルヴァ殿をとてもとても愛してるんだ!ダブルデート!?なんだそれは!俺はハルヴァ殿と二人っきりがいい!」ハルヴァの背後から突然そんな声がしてハルヴァは慌てて振り返る。
そこには目深に帽子を被ったディオスが泣きそうな顔をして口を手で押さえていた。
「あ…」
ハルヴァは慌ててディオスの目元を手で隠すと「み、見ちゃ駄目!」と言った。
「マリッサごめん、ごめんね…私ディオス様が好きなの…だから…だから結婚するまではあなたと会わせたくない…ごめんね…私、ディオス様と結婚したいの…!」ハルヴァは泣きながらそう言うとマリッサに謝った。
マリッサが魅了のせいで辛い思いをしていることもハルヴァは知っていたからだ。
でも、同時に色々な噂も聞いていた。
マリッサは人の大切なものを奪うのが好きだ、と。
(あくまで噂だけど……!で、でもでも!万が一そんなことになったら私……!マリッサはやけにディオス様と話したがっていたし…!)
「あー…もう見た?ディオス様…マリッサの事見た?この前はたまたま大丈夫だったけど…二回目はもう無理…」
ハルヴァはディオスを覗き込むように見ると涙をポロポロと流した。
「ハルヴァ殿…泣かないでくれ」
ディオスはハルヴァの頬を包むように手で覆うと涙を指で拭う。
「ご、ごめんなさい…マリッサのこと…みんな好きになっちゃうの…見ると、……仕方がないことなんだけど…嫌なの、ディ、ディオス様だけは駄目……っ」
ハルヴァはメソメソ泣くとそう言った。
「……?俺は一生君以外の女は見ない、霞んで見えるからな」
ディオスは人目をはばからずハルヴァを強く抱き締めた後、耳元でそう囁いた。
「え?」
ハルヴァは目から大粒の涙を一つ落としてディオスを見た。
(比喩的なことだろうか…)
しかし、例えそう思っていたとしても…マリッサに惹かれて行く気持ちを止める事などできないのだ。
(そんなの嫌…!ディオス様は私の婚約者なのに!)
「……信じられないのか…正直、君の友人を見ているが見ていない。霞んでよく見えない、ハルヴァ殿にしか焦点が合ったことがない。
キミアナ様もサラ殿も実はよく顔を認識していない…顔がよくわからない。キミアナ様は背が高くて髪が赤い、サラ殿はいつも君のそばにいる」
ディオスはハルヴァの頬をゆっくりと伝う最後の涙を指で拭い取ると、なんでもないことのようにそう言った。
「そんなこと…」
「ある。俺は興味がないことは視界を霞ませることができる」
ディオスはマリッサに軽く会釈をするとハルヴァの隣に座り、ペーパータオルを机に広げた。
U^ェ^U
ディオスは中央に犬のイラストを描いた。
「犬?」
「犬だ、見えない?」
「上手!かわいい」
ディオスはハルヴァに褒められて嬉しかったのかヘラヘラと笑う。
「犬はな…こっちとか、こっちとか…色んな音がしたとするだろ?例えば…工事の音だとか、ロックミュージックだとか騒音」
ディオスはサラサラと犬の周りに矢印を書き足していく。
↘ ↓ ↙
→ U^ェ^U ←
↗ ↑ ↖
「うん…」
「でもその中でも的確に飼い主の声を聞き取ることができる、なぜだかわかるか?」
「……好きだから?」
● ● ●
● U^ェ^U ●
↗ ● ●
ディオスは矢印を一つだけのこして後は塗りつぶした。
「そう、犬は必要ない音は遮断することができる。音量をゼロにできるんだ…俺の視界がこれだ」
ディオスはヘラヘラ笑いながらハルヴァを見つめた。
その臀部には大きな尻尾が見えるような気がしてくる…
ブンブンと大きく揺れる…
ハルヴァはディオスの頭をそっと撫でると「よしよし」と笑った。
ディオスは口元を緩めるとハルヴァの頬を手で包み、愛おしそうに見つめる。
「俺は…君だけのものだ」
ディオスの手は大きくて、壊れやすい宝物を触るような丁寧で優しい動作に…ハルヴァはなんだか照れくさくなってしまう。
「うふふ…私もディオス様だけのもの」
マリッサは二人の様子を口を開けてぽかんと眺めている。
そんな姿さえも彼女はかわいらしい。
「マリッサ…ごめんね、一つ聞きたいことがあって…」
ハルヴァはディオスに頬を手で挟まれながらその手に自身の手を添えて照れくさそうに笑い、マリッサを見た。
「え…?」
「私…エドガーのこと一瞬たりとも好きだったこと…ないの」
それを聞いてディオスが露骨に肩の力を抜いた。
(危ない…悪かったな、エドガー)
ディオスは芽生えてかなりの大きさに膨らんでいたエドガーへの殺意をそっと縮ませた。
「え?でも…」
「マリッサはなんでそう思ったの?」
「え?た、確か…エドガーが」
ハルヴァは眉を寄せると「じゃあエドガーに言っておいて?顔も様子も全然タイプじゃない…変なこと言いふらさないで…あの時ちゃんと言ったでしょ?って!もう…エドガーったら、からかうのはよして欲しいな。……私…大きくて筋肉質な人が好きなの…すごく」
ハルヴァはディオスを見上げて微笑んだ。
「ハ、ハルヴァ殿…ぐ、ぐぐぐ…」
「ディオス様?結婚してからにしましょうね?」ハルヴァは目をギラギラさせるディオスにそう柔らかく言うと、彼は気を取り直すように目元を手のひらで擦り頷く。
そうしてマリッサの方に顔を向けると「ご友人殿、自分としてはハルヴァ殿と他の男を交流させるのは誠に遺憾です。……二組で逢引のご提案はお断りさせていただきたいのだが…まあ、ハルヴァ殿がどうしてもと言うのならば俺としても…まあ、まあ、耐えるという選択肢もあるにはあるが…」前半は凛とした声で、後半は蚊の鳴くような声で言った。
ハルヴァはディオスにそっと寄り添い「私…デートはディオス様と二人っきりがいい。…マリッサごめんね、また二人でお茶しよう」とニッコリ笑って言った。
マリッサは自分のことを全く気にする素振りもないディオスと二人のイチャイチャぶりをぼんやりと見つめながら「わ、わかったわ…」と呟くように言った。
マリッサも勿論魅了を持っているが魔女が魅了持ちの女は世に放った方が面白いからと自分の手元には残していない。
魔女には愛欲の観念がない。
だから人間の愛欲や愛憎を見るのが大好きだ。
最大の娯楽なのだ。
マリッサの両親は互いの魅了を使って好き放題暮らしていたから家には殆どいなかった。
マリッサは家に通うお手伝いさんが淡々と家事をこなす中大きくなった。
彼女に魅了の力が発現したのは月経が来てからのことで彼女がじっと目を見つめるだけで特に男性はマリッサの言いなりになった。
特に、家に殆ど両親が帰ってこない話は鉄板でマリッサが悲しげに相談すると皆マリッサに夢中になった。
マリッサはそれが楽しくて楽しくてたまらなかった。
そんな中、幼馴染のエドガーがハルヴァのことを好きなのに気付いた。その時に幼馴染三人の関係は壊れてしまった。
マリッサが唯一魅了を使わなくても居心地が良かったこの三人は元のバランスではいられなくなってしまった。
「ねえハルヴァ?今度ディオス様に会わせてよ、お願い」
「……私ディオス様の連絡先知らないから…」
ハルヴァは気持ちを誤魔化すために紅茶に口をつけた。
「なんで?そんなわけ…」
「あ…あるの!あるの!私たち…け、契約結婚だから……っ!」
「ち、違う!契約結婚ではない!お、お、お、俺はハルヴァ殿をとてもとても愛してるんだ!ダブルデート!?なんだそれは!俺はハルヴァ殿と二人っきりがいい!」ハルヴァの背後から突然そんな声がしてハルヴァは慌てて振り返る。
そこには目深に帽子を被ったディオスが泣きそうな顔をして口を手で押さえていた。
「あ…」
ハルヴァは慌ててディオスの目元を手で隠すと「み、見ちゃ駄目!」と言った。
「マリッサごめん、ごめんね…私ディオス様が好きなの…だから…だから結婚するまではあなたと会わせたくない…ごめんね…私、ディオス様と結婚したいの…!」ハルヴァは泣きながらそう言うとマリッサに謝った。
マリッサが魅了のせいで辛い思いをしていることもハルヴァは知っていたからだ。
でも、同時に色々な噂も聞いていた。
マリッサは人の大切なものを奪うのが好きだ、と。
(あくまで噂だけど……!で、でもでも!万が一そんなことになったら私……!マリッサはやけにディオス様と話したがっていたし…!)
「あー…もう見た?ディオス様…マリッサの事見た?この前はたまたま大丈夫だったけど…二回目はもう無理…」
ハルヴァはディオスを覗き込むように見ると涙をポロポロと流した。
「ハルヴァ殿…泣かないでくれ」
ディオスはハルヴァの頬を包むように手で覆うと涙を指で拭う。
「ご、ごめんなさい…マリッサのこと…みんな好きになっちゃうの…見ると、……仕方がないことなんだけど…嫌なの、ディ、ディオス様だけは駄目……っ」
ハルヴァはメソメソ泣くとそう言った。
「……?俺は一生君以外の女は見ない、霞んで見えるからな」
ディオスは人目をはばからずハルヴァを強く抱き締めた後、耳元でそう囁いた。
「え?」
ハルヴァは目から大粒の涙を一つ落としてディオスを見た。
(比喩的なことだろうか…)
しかし、例えそう思っていたとしても…マリッサに惹かれて行く気持ちを止める事などできないのだ。
(そんなの嫌…!ディオス様は私の婚約者なのに!)
「……信じられないのか…正直、君の友人を見ているが見ていない。霞んでよく見えない、ハルヴァ殿にしか焦点が合ったことがない。
キミアナ様もサラ殿も実はよく顔を認識していない…顔がよくわからない。キミアナ様は背が高くて髪が赤い、サラ殿はいつも君のそばにいる」
ディオスはハルヴァの頬をゆっくりと伝う最後の涙を指で拭い取ると、なんでもないことのようにそう言った。
「そんなこと…」
「ある。俺は興味がないことは視界を霞ませることができる」
ディオスはマリッサに軽く会釈をするとハルヴァの隣に座り、ペーパータオルを机に広げた。
U^ェ^U
ディオスは中央に犬のイラストを描いた。
「犬?」
「犬だ、見えない?」
「上手!かわいい」
ディオスはハルヴァに褒められて嬉しかったのかヘラヘラと笑う。
「犬はな…こっちとか、こっちとか…色んな音がしたとするだろ?例えば…工事の音だとか、ロックミュージックだとか騒音」
ディオスはサラサラと犬の周りに矢印を書き足していく。
↘ ↓ ↙
→ U^ェ^U ←
↗ ↑ ↖
「うん…」
「でもその中でも的確に飼い主の声を聞き取ることができる、なぜだかわかるか?」
「……好きだから?」
● ● ●
● U^ェ^U ●
↗ ● ●
ディオスは矢印を一つだけのこして後は塗りつぶした。
「そう、犬は必要ない音は遮断することができる。音量をゼロにできるんだ…俺の視界がこれだ」
ディオスはヘラヘラ笑いながらハルヴァを見つめた。
その臀部には大きな尻尾が見えるような気がしてくる…
ブンブンと大きく揺れる…
ハルヴァはディオスの頭をそっと撫でると「よしよし」と笑った。
ディオスは口元を緩めるとハルヴァの頬を手で包み、愛おしそうに見つめる。
「俺は…君だけのものだ」
ディオスの手は大きくて、壊れやすい宝物を触るような丁寧で優しい動作に…ハルヴァはなんだか照れくさくなってしまう。
「うふふ…私もディオス様だけのもの」
マリッサは二人の様子を口を開けてぽかんと眺めている。
そんな姿さえも彼女はかわいらしい。
「マリッサ…ごめんね、一つ聞きたいことがあって…」
ハルヴァはディオスに頬を手で挟まれながらその手に自身の手を添えて照れくさそうに笑い、マリッサを見た。
「え…?」
「私…エドガーのこと一瞬たりとも好きだったこと…ないの」
それを聞いてディオスが露骨に肩の力を抜いた。
(危ない…悪かったな、エドガー)
ディオスは芽生えてかなりの大きさに膨らんでいたエドガーへの殺意をそっと縮ませた。
「え?でも…」
「マリッサはなんでそう思ったの?」
「え?た、確か…エドガーが」
ハルヴァは眉を寄せると「じゃあエドガーに言っておいて?顔も様子も全然タイプじゃない…変なこと言いふらさないで…あの時ちゃんと言ったでしょ?って!もう…エドガーったら、からかうのはよして欲しいな。……私…大きくて筋肉質な人が好きなの…すごく」
ハルヴァはディオスを見上げて微笑んだ。
「ハ、ハルヴァ殿…ぐ、ぐぐぐ…」
「ディオス様?結婚してからにしましょうね?」ハルヴァは目をギラギラさせるディオスにそう柔らかく言うと、彼は気を取り直すように目元を手のひらで擦り頷く。
そうしてマリッサの方に顔を向けると「ご友人殿、自分としてはハルヴァ殿と他の男を交流させるのは誠に遺憾です。……二組で逢引のご提案はお断りさせていただきたいのだが…まあ、ハルヴァ殿がどうしてもと言うのならば俺としても…まあ、まあ、耐えるという選択肢もあるにはあるが…」前半は凛とした声で、後半は蚊の鳴くような声で言った。
ハルヴァはディオスにそっと寄り添い「私…デートはディオス様と二人っきりがいい。…マリッサごめんね、また二人でお茶しよう」とニッコリ笑って言った。
マリッサは自分のことを全く気にする素振りもないディオスと二人のイチャイチャぶりをぼんやりと見つめながら「わ、わかったわ…」と呟くように言った。
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