27 / 44
27
しおりを挟む
マリッサの両親は魅了を持っている者同士、魔女に掛け合わされた。
マリッサも勿論魅了を持っているが魔女が魅了持ちの女は世に放った方が面白いからと自分の手元には残していない。
魔女には愛欲の観念がない。
だから人間の愛欲や愛憎を見るのが大好きだ。
最大の娯楽なのだ。
マリッサの両親は互いの魅了を使って好き放題暮らしていたから家には殆どいなかった。
マリッサは家に通うお手伝いさんが淡々と家事をこなす中大きくなった。
彼女に魅了の力が発現したのは月経が来てからのことで彼女がじっと目を見つめるだけで特に男性はマリッサの言いなりになった。
特に、家に殆ど両親が帰ってこない話は鉄板でマリッサが悲しげに相談すると皆マリッサに夢中になった。
マリッサはそれが楽しくて楽しくてたまらなかった。
そんな中、幼馴染のエドガーがハルヴァのことを好きなのに気付いた。その時に幼馴染三人の関係は壊れてしまった。
マリッサが唯一魅了を使わなくても居心地が良かったこの三人は元のバランスではいられなくなってしまった。
「ねえハルヴァ?今度ディオス様に会わせてよ、お願い」
「……私ディオス様の連絡先知らないから…」
ハルヴァは気持ちを誤魔化すために紅茶に口をつけた。
「なんで?そんなわけ…」
「あ…あるの!あるの!私たち…け、契約結婚だから……っ!」
「ち、違う!契約結婚ではない!お、お、お、俺はハルヴァ殿をとてもとても愛してるんだ!ダブルデート!?なんだそれは!俺はハルヴァ殿と二人っきりがいい!」ハルヴァの背後から突然そんな声がしてハルヴァは慌てて振り返る。
そこには目深に帽子を被ったディオスが泣きそうな顔をして口を手で押さえていた。
「あ…」
ハルヴァは慌ててディオスの目元を手で隠すと「み、見ちゃ駄目!」と言った。
「マリッサごめん、ごめんね…私ディオス様が好きなの…だから…だから結婚するまではあなたと会わせたくない…ごめんね…私、ディオス様と結婚したいの…!」ハルヴァは泣きながらそう言うとマリッサに謝った。
マリッサが魅了のせいで辛い思いをしていることもハルヴァは知っていたからだ。
でも、同時に色々な噂も聞いていた。
マリッサは人の大切なものを奪うのが好きだ、と。
(あくまで噂だけど……!で、でもでも!万が一そんなことになったら私……!マリッサはやけにディオス様と話したがっていたし…!)
「あー…もう見た?ディオス様…マリッサの事見た?この前はたまたま大丈夫だったけど…二回目はもう無理…」
ハルヴァはディオスを覗き込むように見ると涙をポロポロと流した。
「ハルヴァ殿…泣かないでくれ」
ディオスはハルヴァの頬を包むように手で覆うと涙を指で拭う。
「ご、ごめんなさい…マリッサのこと…みんな好きになっちゃうの…見ると、……仕方がないことなんだけど…嫌なの、ディ、ディオス様だけは駄目……っ」
ハルヴァはメソメソ泣くとそう言った。
「……?俺は一生君以外の女は見ない、霞んで見えるからな」
ディオスは人目をはばからずハルヴァを強く抱き締めた後、耳元でそう囁いた。
「え?」
ハルヴァは目から大粒の涙を一つ落としてディオスを見た。
(比喩的なことだろうか…)
しかし、例えそう思っていたとしても…マリッサに惹かれて行く気持ちを止める事などできないのだ。
(そんなの嫌…!ディオス様は私の婚約者なのに!)
「……信じられないのか…正直、君の友人を見ているが見ていない。霞んでよく見えない、ハルヴァ殿にしか焦点が合ったことがない。
キミアナ様もサラ殿も実はよく顔を認識していない…顔がよくわからない。キミアナ様は背が高くて髪が赤い、サラ殿はいつも君のそばにいる」
ディオスはハルヴァの頬をゆっくりと伝う最後の涙を指で拭い取ると、なんでもないことのようにそう言った。
「そんなこと…」
「ある。俺は興味がないことは視界を霞ませることができる」
ディオスはマリッサに軽く会釈をするとハルヴァの隣に座り、ペーパータオルを机に広げた。
U^ェ^U
ディオスは中央に犬のイラストを描いた。
「犬?」
「犬だ、見えない?」
「上手!かわいい」
ディオスはハルヴァに褒められて嬉しかったのかヘラヘラと笑う。
「犬はな…こっちとか、こっちとか…色んな音がしたとするだろ?例えば…工事の音だとか、ロックミュージックだとか騒音」
ディオスはサラサラと犬の周りに矢印を書き足していく。
↘ ↓ ↙
→ U^ェ^U ←
↗ ↑ ↖
「うん…」
「でもその中でも的確に飼い主の声を聞き取ることができる、なぜだかわかるか?」
「……好きだから?」
● ● ●
● U^ェ^U ●
↗ ● ●
ディオスは矢印を一つだけのこして後は塗りつぶした。
「そう、犬は必要ない音は遮断することができる。音量をゼロにできるんだ…俺の視界がこれだ」
ディオスはヘラヘラ笑いながらハルヴァを見つめた。
その臀部には大きな尻尾が見えるような気がしてくる…
ブンブンと大きく揺れる…
ハルヴァはディオスの頭をそっと撫でると「よしよし」と笑った。
ディオスは口元を緩めるとハルヴァの頬を手で包み、愛おしそうに見つめる。
「俺は…君だけのものだ」
ディオスの手は大きくて、壊れやすい宝物を触るような丁寧で優しい動作に…ハルヴァはなんだか照れくさくなってしまう。
「うふふ…私もディオス様だけのもの」
マリッサは二人の様子を口を開けてぽかんと眺めている。
そんな姿さえも彼女はかわいらしい。
「マリッサ…ごめんね、一つ聞きたいことがあって…」
ハルヴァはディオスに頬を手で挟まれながらその手に自身の手を添えて照れくさそうに笑い、マリッサを見た。
「え…?」
「私…エドガーのこと一瞬たりとも好きだったこと…ないの」
それを聞いてディオスが露骨に肩の力を抜いた。
(危ない…悪かったな、エドガー)
ディオスは芽生えてかなりの大きさに膨らんでいたエドガーへの殺意をそっと縮ませた。
「え?でも…」
「マリッサはなんでそう思ったの?」
「え?た、確か…エドガーが」
ハルヴァは眉を寄せると「じゃあエドガーに言っておいて?顔も様子も全然タイプじゃない…変なこと言いふらさないで…あの時ちゃんと言ったでしょ?って!もう…エドガーったら、からかうのはよして欲しいな。……私…大きくて筋肉質な人が好きなの…すごく」
ハルヴァはディオスを見上げて微笑んだ。
「ハ、ハルヴァ殿…ぐ、ぐぐぐ…」
「ディオス様?結婚してからにしましょうね?」ハルヴァは目をギラギラさせるディオスにそう柔らかく言うと、彼は気を取り直すように目元を手のひらで擦り頷く。
そうしてマリッサの方に顔を向けると「ご友人殿、自分としてはハルヴァ殿と他の男を交流させるのは誠に遺憾です。……二組で逢引のご提案はお断りさせていただきたいのだが…まあ、ハルヴァ殿がどうしてもと言うのならば俺としても…まあ、まあ、耐えるという選択肢もあるにはあるが…」前半は凛とした声で、後半は蚊の鳴くような声で言った。
ハルヴァはディオスにそっと寄り添い「私…デートはディオス様と二人っきりがいい。…マリッサごめんね、また二人でお茶しよう」とニッコリ笑って言った。
マリッサは自分のことを全く気にする素振りもないディオスと二人のイチャイチャぶりをぼんやりと見つめながら「わ、わかったわ…」と呟くように言った。
マリッサも勿論魅了を持っているが魔女が魅了持ちの女は世に放った方が面白いからと自分の手元には残していない。
魔女には愛欲の観念がない。
だから人間の愛欲や愛憎を見るのが大好きだ。
最大の娯楽なのだ。
マリッサの両親は互いの魅了を使って好き放題暮らしていたから家には殆どいなかった。
マリッサは家に通うお手伝いさんが淡々と家事をこなす中大きくなった。
彼女に魅了の力が発現したのは月経が来てからのことで彼女がじっと目を見つめるだけで特に男性はマリッサの言いなりになった。
特に、家に殆ど両親が帰ってこない話は鉄板でマリッサが悲しげに相談すると皆マリッサに夢中になった。
マリッサはそれが楽しくて楽しくてたまらなかった。
そんな中、幼馴染のエドガーがハルヴァのことを好きなのに気付いた。その時に幼馴染三人の関係は壊れてしまった。
マリッサが唯一魅了を使わなくても居心地が良かったこの三人は元のバランスではいられなくなってしまった。
「ねえハルヴァ?今度ディオス様に会わせてよ、お願い」
「……私ディオス様の連絡先知らないから…」
ハルヴァは気持ちを誤魔化すために紅茶に口をつけた。
「なんで?そんなわけ…」
「あ…あるの!あるの!私たち…け、契約結婚だから……っ!」
「ち、違う!契約結婚ではない!お、お、お、俺はハルヴァ殿をとてもとても愛してるんだ!ダブルデート!?なんだそれは!俺はハルヴァ殿と二人っきりがいい!」ハルヴァの背後から突然そんな声がしてハルヴァは慌てて振り返る。
そこには目深に帽子を被ったディオスが泣きそうな顔をして口を手で押さえていた。
「あ…」
ハルヴァは慌ててディオスの目元を手で隠すと「み、見ちゃ駄目!」と言った。
「マリッサごめん、ごめんね…私ディオス様が好きなの…だから…だから結婚するまではあなたと会わせたくない…ごめんね…私、ディオス様と結婚したいの…!」ハルヴァは泣きながらそう言うとマリッサに謝った。
マリッサが魅了のせいで辛い思いをしていることもハルヴァは知っていたからだ。
でも、同時に色々な噂も聞いていた。
マリッサは人の大切なものを奪うのが好きだ、と。
(あくまで噂だけど……!で、でもでも!万が一そんなことになったら私……!マリッサはやけにディオス様と話したがっていたし…!)
「あー…もう見た?ディオス様…マリッサの事見た?この前はたまたま大丈夫だったけど…二回目はもう無理…」
ハルヴァはディオスを覗き込むように見ると涙をポロポロと流した。
「ハルヴァ殿…泣かないでくれ」
ディオスはハルヴァの頬を包むように手で覆うと涙を指で拭う。
「ご、ごめんなさい…マリッサのこと…みんな好きになっちゃうの…見ると、……仕方がないことなんだけど…嫌なの、ディ、ディオス様だけは駄目……っ」
ハルヴァはメソメソ泣くとそう言った。
「……?俺は一生君以外の女は見ない、霞んで見えるからな」
ディオスは人目をはばからずハルヴァを強く抱き締めた後、耳元でそう囁いた。
「え?」
ハルヴァは目から大粒の涙を一つ落としてディオスを見た。
(比喩的なことだろうか…)
しかし、例えそう思っていたとしても…マリッサに惹かれて行く気持ちを止める事などできないのだ。
(そんなの嫌…!ディオス様は私の婚約者なのに!)
「……信じられないのか…正直、君の友人を見ているが見ていない。霞んでよく見えない、ハルヴァ殿にしか焦点が合ったことがない。
キミアナ様もサラ殿も実はよく顔を認識していない…顔がよくわからない。キミアナ様は背が高くて髪が赤い、サラ殿はいつも君のそばにいる」
ディオスはハルヴァの頬をゆっくりと伝う最後の涙を指で拭い取ると、なんでもないことのようにそう言った。
「そんなこと…」
「ある。俺は興味がないことは視界を霞ませることができる」
ディオスはマリッサに軽く会釈をするとハルヴァの隣に座り、ペーパータオルを机に広げた。
U^ェ^U
ディオスは中央に犬のイラストを描いた。
「犬?」
「犬だ、見えない?」
「上手!かわいい」
ディオスはハルヴァに褒められて嬉しかったのかヘラヘラと笑う。
「犬はな…こっちとか、こっちとか…色んな音がしたとするだろ?例えば…工事の音だとか、ロックミュージックだとか騒音」
ディオスはサラサラと犬の周りに矢印を書き足していく。
↘ ↓ ↙
→ U^ェ^U ←
↗ ↑ ↖
「うん…」
「でもその中でも的確に飼い主の声を聞き取ることができる、なぜだかわかるか?」
「……好きだから?」
● ● ●
● U^ェ^U ●
↗ ● ●
ディオスは矢印を一つだけのこして後は塗りつぶした。
「そう、犬は必要ない音は遮断することができる。音量をゼロにできるんだ…俺の視界がこれだ」
ディオスはヘラヘラ笑いながらハルヴァを見つめた。
その臀部には大きな尻尾が見えるような気がしてくる…
ブンブンと大きく揺れる…
ハルヴァはディオスの頭をそっと撫でると「よしよし」と笑った。
ディオスは口元を緩めるとハルヴァの頬を手で包み、愛おしそうに見つめる。
「俺は…君だけのものだ」
ディオスの手は大きくて、壊れやすい宝物を触るような丁寧で優しい動作に…ハルヴァはなんだか照れくさくなってしまう。
「うふふ…私もディオス様だけのもの」
マリッサは二人の様子を口を開けてぽかんと眺めている。
そんな姿さえも彼女はかわいらしい。
「マリッサ…ごめんね、一つ聞きたいことがあって…」
ハルヴァはディオスに頬を手で挟まれながらその手に自身の手を添えて照れくさそうに笑い、マリッサを見た。
「え…?」
「私…エドガーのこと一瞬たりとも好きだったこと…ないの」
それを聞いてディオスが露骨に肩の力を抜いた。
(危ない…悪かったな、エドガー)
ディオスは芽生えてかなりの大きさに膨らんでいたエドガーへの殺意をそっと縮ませた。
「え?でも…」
「マリッサはなんでそう思ったの?」
「え?た、確か…エドガーが」
ハルヴァは眉を寄せると「じゃあエドガーに言っておいて?顔も様子も全然タイプじゃない…変なこと言いふらさないで…あの時ちゃんと言ったでしょ?って!もう…エドガーったら、からかうのはよして欲しいな。……私…大きくて筋肉質な人が好きなの…すごく」
ハルヴァはディオスを見上げて微笑んだ。
「ハ、ハルヴァ殿…ぐ、ぐぐぐ…」
「ディオス様?結婚してからにしましょうね?」ハルヴァは目をギラギラさせるディオスにそう柔らかく言うと、彼は気を取り直すように目元を手のひらで擦り頷く。
そうしてマリッサの方に顔を向けると「ご友人殿、自分としてはハルヴァ殿と他の男を交流させるのは誠に遺憾です。……二組で逢引のご提案はお断りさせていただきたいのだが…まあ、ハルヴァ殿がどうしてもと言うのならば俺としても…まあ、まあ、耐えるという選択肢もあるにはあるが…」前半は凛とした声で、後半は蚊の鳴くような声で言った。
ハルヴァはディオスにそっと寄り添い「私…デートはディオス様と二人っきりがいい。…マリッサごめんね、また二人でお茶しよう」とニッコリ笑って言った。
マリッサは自分のことを全く気にする素振りもないディオスと二人のイチャイチャぶりをぼんやりと見つめながら「わ、わかったわ…」と呟くように言った。
1,477
お気に入りに追加
2,402
あなたにおすすめの小説
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。

その眼差しは凍てつく刃*冷たい婚約者にウンザリしてます*
音爽(ネソウ)
恋愛
義妹に優しく、婚約者の令嬢には極寒対応。
塩対応より下があるなんて……。
この婚約は間違っている?
*2021年7月完結

【完】愛していますよ。だから幸せになってくださいね!
さこの
恋愛
「僕の事愛してる?」
「はい、愛しています」
「ごめん。僕は……婚約が決まりそうなんだ、何度も何度も説得しようと試みたけれど、本当にごめん」
「はい。その件はお聞きしました。どうかお幸せになってください」
「え……?」
「さようなら、どうかお元気で」
愛しているから身を引きます。
*全22話【執筆済み】です( .ˬ.)"
ホットランキング入りありがとうございます
2021/09/12
※頂いた感想欄にはネタバレが含まれていますので、ご覧の際にはお気をつけください!
2021/09/20
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
婚約者を想うのをやめました
かぐや
恋愛
女性を侍らしてばかりの婚約者に私は宣言した。
「もうあなたを愛するのをやめますので、どうぞご自由に」
最初は婚約者も頷くが、彼女が自分の側にいることがなくなってから初めて色々なことに気づき始める。
*書籍化しました。応援してくださった読者様、ありがとうございます。
【完結】365日後の花言葉
Ringo
恋愛
許せなかった。
幼い頃からの婚約者でもあり、誰よりも大好きで愛していたあなただからこそ。
あなたの裏切りを知った翌朝、私の元に届いたのはゼラニウムの花束。
“ごめんなさい”
言い訳もせず、拒絶し続ける私の元に通い続けるあなたの愛情を、私はもう一度信じてもいいの?
※勢いよく本編完結しまして、番外編ではイチャイチャするふたりのその後をお届けします。

『親友』との時間を優先する婚約者に別れを告げたら
黒木メイ
恋愛
筆頭聖女の私にはルカという婚約者がいる。教会に入る際、ルカとは聖女の契りを交わした。会えない間、互いの不貞を疑う必要がないようにと。
最初は順調だった。燃えるような恋ではなかったけれど、少しずつ心の距離を縮めていけたように思う。
けれど、ルカは高等部に上がり、変わってしまった。その背景には二人の男女がいた。マルコとジュリア。ルカにとって初めてできた『親友』だ。身分も性別も超えた仲。『親友』が教えてくれる全てのものがルカには新鮮に映った。広がる世界。まるで生まれ変わった気分だった。けれど、同時に終わりがあることも理解していた。だからこそ、ルカは学生の間だけでも『親友』との時間を優先したいとステファニアに願い出た。馬鹿正直に。
そんなルカの願いに対して私はダメだとは言えなかった。ルカの気持ちもわかるような気がしたし、自分が心の狭い人間だとは思いたくなかったから。一ヶ月に一度あった逢瀬は数ヶ月に一度に減り、半年に一度になり、とうとう一年に一度まで減った。ようやく会えたとしてもルカの話題は『親友』のことばかり。さすがに堪えた。ルカにとって自分がどういう存在なのか痛いくらいにわかったから。
極めつけはルカと親友カップルの歪な三角関係についての噂。信じたくはないが、間違っているとも思えなかった。もう、半ば受け入れていた。ルカの心はもう自分にはないと。
それでも婚約解消に至らなかったのは、聖女の契りが継続していたから。
辛うじて繋がっていた絆。その絆は聖女の任期終了まで後数ヶ月というところで切れた。婚約はルカの有責で破棄。もう関わることはないだろう。そう思っていたのに、何故かルカは今更になって執着してくる。いったいどういうつもりなの?
戸惑いつつも情を捨てきれないステファニア。プライドは捨てて追い縋ろうとするルカ。さて、二人の未来はどうなる?
※曖昧設定。
※別サイトにも掲載。

お姉さまが家を出て行き、婚約者を譲られました
さこの
恋愛
姉は優しく美しい。姉の名前はアリシア私の名前はフェリシア
姉の婚約者は第三王子
お茶会をすると一緒に来てと言われる
アリシアは何かとフェリシアと第三王子を二人にしたがる
ある日姉が父に言った。
アリシアでもフェリシアでも婚約者がクリスタル伯爵家の娘ならどちらでも良いですよね?
バカな事を言うなと怒る父、次の日に姉が家を、出た
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる