【R18】さよなら、婚約者様

mokumoku

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「私も実はあまり宝石に詳しいわけではないのですが…あの、どんなイメージですか?」
「え?イメージ…」
「あ、プレゼントですよね?…美人で強そう、だとか芯が通っているとか…お好きな色とか!」
ハルヴァは以前競技場で見た女性兵士を思い浮かべながらそう述べた。青だとか黒だとかが似合いそうな格好いい女性だった。
「……す、好きな色は…わからん。何が好きなんだ…」
「あ、そうなんですね」
「すまん……」
「いいんですよ。中々普段好きな色を聞く機会はないですよね…なんだか良く持っている物とかは好きな色の場合が多いですよね」ハルヴァは(自分なら好きな色を身につけるな)と思いそうアドバイスした。
「……ピンクだとか…白だとか……水色か…」
(意外とフェミニン!)
「あの、どんなイメージですか?」
「……優しくて、かわいくてキレイだ。性格も良くて…かわいくてかわいい。とても頑張り屋さんで優しくてかわいい、いつも周りのことを考えていてかわいい。お、俺が不甲斐なくても話しかけてくれて…感謝してる、上手く返せないが…」ディオスは顔を真っ赤にして俯くとそう言った。ハルヴァはディオスがそんな顔をするのは初めて見たので(本当にその方が好きなのね)と思った。
羨ましくてなんだか胸が痛い…

「そんな風に感じてらっしゃるのですね。ではかわいらしい…この水色の宝石がついたネックレス等いかがでしょう?」ハルヴァは店員にそれを出してもらうと手の平に掛けて、頭の横に掲げた。
「……似合うな」
「そうなんですね。では、候補として…」ハルヴァは店員にネックレスを渡すと、店員は手元に広げた布の上にそれを載せてくれた。
「これは?」
「似合うと思う」
ハルヴァが提案するとディオスは次々とそれを「似合う」と肯定していく。(よっぽどその方が好きなのね。なんでも似合うなんて)数点選べた物から一つに絞ろう、と提案すると二人は奥の部屋に通された。
店員に「どうぞお座りください」と立派なソファに隣同士座らされ、テーブルの上に先ほど選んだ商品が丁寧に並べられていく。

「ディオス様、どれが一番良さそうですか?」
テーブルの上をじっと眺めるディオスにハルヴァは声を掛ける。するとディオスは
「……ぜ、全部」
「へ?」
「全部似合うと思う。全部くれ」
ディオスは大富豪発言をした。




「全部買われてしまうとは…あの、失礼ですが大丈夫ですか?」
「……問題ない、金を使うことなんかほぼないし…それに…ぜ、全部似合うと思うし…」
帰りの馬車の中、ハルヴァは心配になりディオスの顔を覗き込む。(大丈夫なんだろうか…まあ、お相手が素敵すぎて選べなかったのでしょうか…ディオス様ってお金持ちなのね)
ディオスはそっぽを向きながら「こ、これ」と先ほど買い物した物を差し出してきたので「渡すタイミングですか?次に会う時に一つずつ渡してはどうでしょう?贈り物の個数分会えますし!素敵ではありませんか?」
「う…そ、そうか、そうだな」
ディオスは顔を真っ赤に染めるとそれを引っ込めて膝の上に置いた。
「楽しみですね」
「う、うん。そうだな…楽しみだな」

それからどうなったのかはわからない。
なぜならそれ以降二人は会っていないからだ。

(ディオス様上手く渡せたかな?)

しばらくはなんとなく気にしていたが、忙しさの中でだんだんとあまり思考の中にも浮かばなくなった頃…もう会わずに数ヶ月は経っただろうか?
そんな時、サラに街へ行こうと誘われてハルヴァはサラと街を歩いていた。
すると港に大きな船が到着すると言うので冷やかしついでに見に行くことにした。「魔女のところから帰ってくるらしいよ?軍人さんが」
「へー!」サラの言葉にハルヴァは目を丸くすると街からすぐ傍にある港へと足を進めた。

(この船に乗る人はそんな危険なところから帰って来られたんだ…よかった)

ハルヴァ達が到着すると物凄く大きな船が既に港に着いていて、階段がゆっくりと下ろされている最中だった。
「なんでこんなに人が集まっているのでしょう?」
サラが近くにいたダンディな雰囲気の初老の男性に目をハートにしながら声を掛けている。
「彼らが血の戦争を終わらせることができるかもしれないらしいんだよ」男性は心做しか声を弾ませて隣にいる同い年位の女性に「なあ?」と相槌を促している。
(ああ、サラが露骨にガッカリした顔を…)

「血の戦争が終わる?」
「私も詳細はよく…わからないんだが」男性がハルヴァの質問に答えてくれようとした時、大きな歓声が上がった。

船の方に目を向けると階段からゆっくりとディオスと女性兵士が寄り添いながら降りてきた。
ハルヴァはそれを見て、なんだか胸が苦しくなったので咳払いをする。ディオスの横に立つ長身の女性は右手で赤い髪を払うと、それがまた艶々と光輝き美しい…
(あれがディオス様の優しくてかわいくてキレイで性格も良くてかわいくてかわいいとても頑張り屋さんで優しくてかわいい、いつも周りのことを考えていてかわいい女性…)

「なにアイツ……キモっ」
ディオスとその女性騎士を見たサラが隣で吐き捨てるようにそう言ったのでハルヴァは噴いた。
そしてなんだかちょっと泣いてしまった。
笑いすぎたのかもしれない。
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