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「…………な、な、な、なんでそんなことを言う!アレクサンダーか!アレクサンダーか!アレクサンダーだな!いや、アレクサンダーじゃないのか?じゃあ一体誰だ!ゆ、ゆ、許さん!セラフィナは俺の妻なんだぞ!!!!なぜ一人になろうとしているのだ!!」
「はー?なーに言ってんだ!私の秘密を手に入れたら私から離れて行くんでしょう?それともなに?私はどこかに閉じ込めておく?」
「……?」
「……?」
クライドはセラフィナのセリフを聞いてとても不思議そうな顔をして、セラフィナはそんなクライドの顔を見て不思議そうな顔をした。
「……どういう……」
「え?何……?私を手離さないように命令されているのではないの?国から……それは東の聖女の秘密を知りたいからではないの?」
セラフィナは眉を顰めているクライドを見て口を開いた。
「私に利用価値がなくなったら離れていくか……秘密を漏らさないように閉じ込めておくかと思ってたんだけど……」
「……」
「もしかして違う……?」
なんだか演技にしてはだらしない顔をしたクライドを見てセラフィナは自分はもしかすると思い違いをしているのでは……と思った。
「確かに国から命令はされたが、俺は君をそんな道具のように思ってはおらん」
「……じゃあ……」
「手放したくはないとは……お、お、思っているが……」
「……なんで?」
クライドの顔がみるみる間に真っ赤に染まっていく。セラフィナもそれを見てなんだか恥ずかしくなってきて頬をポッと赤く染めた。(なんなの……?)
「いやぁ……そ、す、す、す、す、す……」クライドはセラフィナの問いに少し間を置くとベッドの上でシーツを指先でぐちゃぐちゃにかき回していく……
「……な、なんなの?」セラフィナはそんなクライドを見てちょっとお察ししてきてしまい顔を真っ赤にした。
「す、す、す
………………スイテイルカラダ」
「ええ……?」
セラフィナは予想はしていたけれどこんなにストレートに言われるとは思っていなくて顔から火が出る思いがした。
「で、で、でもでもでもでも!本心か……わ、わからないじゃない!」セラフィナは目をギューッと瞑り頭を左右に振った。
「なに!?ど、ど、ど、どうすればいいんだ!これ以上は無理だぞ!なぜ信じない!?」
「だ、だ、だって王族なんだもん!あなた王族なんだもん!」
「な、なんだと……?」
クライドはセラフィナの手をギュッと握りしめると顔を見つめた。「く、くそ……それほど信じぬのならもう良い」
「…………」セラフィナは二人の関係はこれで終わるのだ、と薄目を開けた。
そしてもし、物分かりの良い態度をとっていたのなら……もしかしたら二人の関係は終わらなかったかも……と寂しくも思った。
(私って本当……人と上手くやれないんだよね)
チラッと見上げたクライドは真っ赤な顔をして「ならば一生掛けて幸せにしてくれよう。一生離さんからな……」とボソボソ呟くとセラフィナを抱き締めた。
それがまた……
なんとも格好がついていなくてセラフィナは思わず笑いを漏らす。「…………ふ、ふふふ……」
「……な、なにがおかしい……くそ、上手くできん」
「ははははは!あははははは!」
「やめろ!笑うな!くっ……羞恥心が……羞恥心で死んでしまう!やめろ!」
「あははははははは!」
「はーぁ……もういいや」
セラフィナは一頻り笑うとクライドに抱きついた。
「一生騙されても構わない……私もあなたが好きだもん」
「ほ……そ、そんなことはないと言っておろうが!」
「……ふふ、だから騙されてもいい。その代わり一生側にいて?離さないのは約束ね」クライドはセラフィナを更にギュッと抱き締めると「う、うん……一生離さん!ずっと……一緒にいよう……」と耳元で囁いた。
セラフィナはクライドの頬にキスをすると
「じゃあ……私の仕事……なんであんなことをしなければならないのか、話してあげる」
「…………無理に話さなくとも」
「ううん、聞いて……私は供物なの。……違う、神が栄養を補給するための餌袋」
「……餌袋……?」
「西は本当に知らなかったのね」セラフィナはギシリ……と立ち上がるとベッドから降りた。
「昔、昔……東と西には一人ずつ聖女がおりました。小さい頃よく聖女達に聞かされていたわ。夢物語として……まさか、私がその立場になろうとはね」
昔、昔。
東と西には聖女が一人ずつおりました。
西の聖女は神様と結婚してその心を癒やし、東の聖女は神様の食事番としてその空腹を満たしました。
神様は愛する西の聖女には特別な加護を、東の聖女には食事を与えたお礼として特別な力を与えました。
そしてその二人を与えた西と東の土地は作物が良く実るように土の栄養を豊かにしたのです。
しかしある時、東の聖女が亡くなってしまいました。
神様は空腹に我を忘れ、その怒りは嵐を呼びました。
川は氾濫し、神の怒りは街を飲み込みたくさんの命を奪ったのです。東は新しい聖女を立てましたが、それでも嵐は収まりません。
東は一人……また一人と聖女を増やし、食事の量を増やしました。
膨大な数の聖女が集まり、やっと嵐は止みました。
「だから東の聖女は数が多い、そう私たちには教えられていたのよ。……でも、この話には続きがあるの」
セラフィナはそう言うとゆっくりと瞬きをした。
彼女の肌はとても白く、青みがかって見える程だ。
「はー?なーに言ってんだ!私の秘密を手に入れたら私から離れて行くんでしょう?それともなに?私はどこかに閉じ込めておく?」
「……?」
「……?」
クライドはセラフィナのセリフを聞いてとても不思議そうな顔をして、セラフィナはそんなクライドの顔を見て不思議そうな顔をした。
「……どういう……」
「え?何……?私を手離さないように命令されているのではないの?国から……それは東の聖女の秘密を知りたいからではないの?」
セラフィナは眉を顰めているクライドを見て口を開いた。
「私に利用価値がなくなったら離れていくか……秘密を漏らさないように閉じ込めておくかと思ってたんだけど……」
「……」
「もしかして違う……?」
なんだか演技にしてはだらしない顔をしたクライドを見てセラフィナは自分はもしかすると思い違いをしているのでは……と思った。
「確かに国から命令はされたが、俺は君をそんな道具のように思ってはおらん」
「……じゃあ……」
「手放したくはないとは……お、お、思っているが……」
「……なんで?」
クライドの顔がみるみる間に真っ赤に染まっていく。セラフィナもそれを見てなんだか恥ずかしくなってきて頬をポッと赤く染めた。(なんなの……?)
「いやぁ……そ、す、す、す、す、す……」クライドはセラフィナの問いに少し間を置くとベッドの上でシーツを指先でぐちゃぐちゃにかき回していく……
「……な、なんなの?」セラフィナはそんなクライドを見てちょっとお察ししてきてしまい顔を真っ赤にした。
「す、す、す
………………スイテイルカラダ」
「ええ……?」
セラフィナは予想はしていたけれどこんなにストレートに言われるとは思っていなくて顔から火が出る思いがした。
「で、で、でもでもでもでも!本心か……わ、わからないじゃない!」セラフィナは目をギューッと瞑り頭を左右に振った。
「なに!?ど、ど、ど、どうすればいいんだ!これ以上は無理だぞ!なぜ信じない!?」
「だ、だ、だって王族なんだもん!あなた王族なんだもん!」
「な、なんだと……?」
クライドはセラフィナの手をギュッと握りしめると顔を見つめた。「く、くそ……それほど信じぬのならもう良い」
「…………」セラフィナは二人の関係はこれで終わるのだ、と薄目を開けた。
そしてもし、物分かりの良い態度をとっていたのなら……もしかしたら二人の関係は終わらなかったかも……と寂しくも思った。
(私って本当……人と上手くやれないんだよね)
チラッと見上げたクライドは真っ赤な顔をして「ならば一生掛けて幸せにしてくれよう。一生離さんからな……」とボソボソ呟くとセラフィナを抱き締めた。
それがまた……
なんとも格好がついていなくてセラフィナは思わず笑いを漏らす。「…………ふ、ふふふ……」
「……な、なにがおかしい……くそ、上手くできん」
「ははははは!あははははは!」
「やめろ!笑うな!くっ……羞恥心が……羞恥心で死んでしまう!やめろ!」
「あははははははは!」
「はーぁ……もういいや」
セラフィナは一頻り笑うとクライドに抱きついた。
「一生騙されても構わない……私もあなたが好きだもん」
「ほ……そ、そんなことはないと言っておろうが!」
「……ふふ、だから騙されてもいい。その代わり一生側にいて?離さないのは約束ね」クライドはセラフィナを更にギュッと抱き締めると「う、うん……一生離さん!ずっと……一緒にいよう……」と耳元で囁いた。
セラフィナはクライドの頬にキスをすると
「じゃあ……私の仕事……なんであんなことをしなければならないのか、話してあげる」
「…………無理に話さなくとも」
「ううん、聞いて……私は供物なの。……違う、神が栄養を補給するための餌袋」
「……餌袋……?」
「西は本当に知らなかったのね」セラフィナはギシリ……と立ち上がるとベッドから降りた。
「昔、昔……東と西には一人ずつ聖女がおりました。小さい頃よく聖女達に聞かされていたわ。夢物語として……まさか、私がその立場になろうとはね」
昔、昔。
東と西には聖女が一人ずつおりました。
西の聖女は神様と結婚してその心を癒やし、東の聖女は神様の食事番としてその空腹を満たしました。
神様は愛する西の聖女には特別な加護を、東の聖女には食事を与えたお礼として特別な力を与えました。
そしてその二人を与えた西と東の土地は作物が良く実るように土の栄養を豊かにしたのです。
しかしある時、東の聖女が亡くなってしまいました。
神様は空腹に我を忘れ、その怒りは嵐を呼びました。
川は氾濫し、神の怒りは街を飲み込みたくさんの命を奪ったのです。東は新しい聖女を立てましたが、それでも嵐は収まりません。
東は一人……また一人と聖女を増やし、食事の量を増やしました。
膨大な数の聖女が集まり、やっと嵐は止みました。
「だから東の聖女は数が多い、そう私たちには教えられていたのよ。……でも、この話には続きがあるの」
セラフィナはそう言うとゆっくりと瞬きをした。
彼女の肌はとても白く、青みがかって見える程だ。
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