【R18】聖なる☆契約結婚

mokumoku

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クライドが先に馬車から降りる。

(……さあ、俺は愛しの妻を優しくエスコートするか)
向こうからニコニコしながらやってくる年老いた神殿長を眺めながら生まれ変わったクライドは浮かれていた。
手を握られたので優しげな眼差しでそちらを見るとオリビアがクスクス笑いながら立っていたのでクライドは顔を真っ赤にしながらオリビアをエスコートして神殿長のところまで連れて行く。

神殿長はゼーゼーしながら無理やり微笑むと「オリビア様とこうして公の場に出るなんて三十年ぶりでございますなぁ!」と嬉しそうに言っている。

(……一体オリビア様はおいくつなんだ……?)

クライドが呆気にとられていると嫌な予感がして振り返る。セラフィナが一人で馬車から降りようとしているではないか!
クライドは慌ててセラフィナに駆け寄るとセラフィナが不思議そうな顔をして彼を見た。
透けるように白い陶器のような肌が陽の光で輝いているようだ。その神々しい様子に似合わず口を薄っすら開けてキョトンとしている……その様子がクライドに可愛くて可愛くて堪らなかった。
「……くっ……セ、セラフィナ殿、お一人で馬車から降りられぬようにお願い致します」クライドはあまり露骨にデレデレしては気持ちが悪いのでは?と頬を引き締めた。

「あー……ごめん、ごめん」
セラフィナは軽い調子でそう謝ると肘を差し出したクライドに向けて「……どうすればいいの?」と尋ねてきた。

クライドの心に魔がさした。



「……俺の肘に手を置いてなるべく密着するのがマナーだ」



クライドは嘘をついた。

「そうなのね。わかった!」
セラフィナはそんなクライドの嘘を信じるとぴったりと身を寄せる。ぽよん……とラッキースケベの音がする……(素直でかわいい俺の妻よ……)
「歩きづらい……」
すっかり興奮したクライドは全てのチャンスをものにすることに決めた。
「じゃあ、こうしましょう」そっとセラフィナの腰を抱く。彼女の体温と香り……そして柔らかな触り心地にクライドは大興奮した。
「息が荒くありませんか?」
「……大丈夫だ。気にするな」(いかん……落ち着け……)
「もう少しの辛抱だから……お互い頑張ろうね」セラフィナが優しげにそう言ったのを聞いて……クライドはまさか?と思う。
(……まさか……まさかセラフィナ殿も……興奮しているのでは!?こ、こ、こ、これは……屋敷に帰ったら俺がしたいあれやこれやが待っているのでは!?)

クライドは誓った。

この可愛らしい妻に……恥はかかすまい。と

(俺に任せろ、妻よ)


クライドが無事エスコートを終えて東の王の前に立った時、彼らがセラフィナにあまり興味がなさそうなのを見てクライドは少し疑問を感じた。
(自国の元聖女なのに……彼女を見もしない)

真っ直ぐ前を向く東の王と王妃からは……あまり人間に対しての情を感じずクライドは少しだけ眉を顰めた。

(お国柄なのか?それとも本当に興味がないのか……それとも他に意味があるのか?)



「してクライドよ」
クライドが考えを巡らせていると西の王に声を掛けられる。
「はい」

「私の従者と神殿から話がある。ちょっと残ってくれないか」
「はい」

セラフィナが不安そうにこちらを見ている。
(大丈夫だセラフィナ!こんな用事はパパパっとお手軽に済ませてすぐに君の元に舞い戻ろうではないか!ふふふ……甘えているのか?かわいいヤツめ!)
「あそこの壁にくっついて待っていてくれ」クライドはいやらしい手つきでセラフィナの腰を撫でると、彼女は彼を見上げ、コクコクと頷いている。

(か、かわいいな……)


「仲睦まじくしているようで何よりだ」

クライドがデレデレしていると西の王がそう言った。
「はい」
「……スモークルームを貸し切りたい。東の王……少しの時間よろしいか?」
「ははは、構いませんよ?密談ですか?」
「はははは、私は行きませんよ」

二人の王は穏やかに会話しているが、内情はどうだ。

クライドは指示されたようにスモークルームに向かう。
そこには既に王の従者と神殿長の代行なのか神殿で二番目に古い聖職者がいた。

「お待たせいたしました」

クライドは軽く会釈をして椅子をひくとそこに腰を下ろす。
「いいえ、こんなときに申し訳ございません」従者が頭を下げた。
「今、ここにいらしていただいておりますのは……奥さまとのことで」
「……仲睦まじく見えただろう」
クライドは腕を組むと椅子に背を預けた。
ギシリ……と音がする。

「はい、それはもう……
……それより奥様は何か変わった行動等はとられていませんか?あの、私生活で」聖職者にそう尋ねられてクライドは考えを巡らせたが特に思い当たる節はない。
「……特には」
「どこかに出かけているだとか……」
「昼間街に出たようだが……ずっとこちらで指名した西出身のメイドと一緒だったようだ」
「……なるほど」

聖職者は手帳を取り出すと何やらペンを走らせている。

「外ではないのかな……」
「……?」

聖職者の言葉になんだか引っかかりを感じていると、従者が「屋敷の建設位置を指定してきたのはあちらでしたし……もしかすると外ではないのかもしれません」と聖職者に向かって言った。

「それさえわかればお役御免だと考えていましたが……なかなかボロを出しませんね」
「……なんの話だ」
クライドが静かに言うと従者は少し考えを巡らせた後、「……王からは特に口止めされていませんので……」と聖職者に目配せをした。


「奥様とクライド様の結婚の目的はご存知ですよね?」
「……西と東の友好のためだ。……表向きはな」従者の問いかけにクライドはそう答えた。今までの彼らのやり取りを聞くとそれだけではないのだろう、と思った。

「はははは、さすがクライド様、話が早い」
従者のおべっかにクライドは若干苛ついたが表には出さなかった。意味がないし、時間が長くなるからだ。
「……それ以外の理由は?」
「西には神から寵愛を受けた聖女がおります。しかし、東には神が存在するのに必要な物を持っている……それが何なのか、我々は探るのが仕事です」
「それと妻になんの関係がある」
クライドはカタカタと膝を揺すった。

「かつて東にはたくさんの聖女がおりました」
「…………」
「しかし、神のお世話をしている聖女はごくわずか……その中でも最終的に残ったのは奥様……セラフィナ様のみでございます」
「なに?」
「奥様がご存知なはず……神に必要な物を……それが何なのか、どこにあるのかわかれば奥様は解放して構いません」従者はニッコリ微笑む。

「だってそうすれば、神は我々のものになりますから」
「……どういう……」
「いいですか?クライド様、王からの命令です。妻を虜にし、西の秘密がわかるまで……妻を離してはならない……と。それが今のあなたの仕事でございます。クライド様。…………しかし、奥様の衣装はオリビア様との衣装の差がかなりありましたが……東は文句一つ言わない……そこが不気味ですよねぇ……殿下もまあ、なんだか遊び心があるというか幼心があるというか……ははっまあ、これはここだけの話と言うことで」







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