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「そうと決まったら一般人の恰好をしなくてはいけませんねっ」神殿長はうきうきした足取りで聖堂の奥へと歩いて行く。
「あ、王妃様もグレースあたりにお召し物を借りて…一時間後にこちらに集合でよろしいですか?」その途中神殿長は今思い出したかのような素振りで私を振り返った。
「え?あ、あの…」知らない人と…街へ行くのいやだわ!
「………断るんですか?」
神殿長はオロオロと口ごもる私の事をじっとりとした目で見つめると静かにそう言った。「あ、いえ…あの…!」断ろうとしてました!ごめんなさい!
「老いぼれの願い…死ぬ前に一度街へ行ってみたかったというかわいい願い…」
「はわわ…」
「じゃあ一時間後にここで」私が戸惑っている間に神殿長は勝手に約束を取りつけるとニッコリ笑って聖堂の奥へと消えて行きました…
私がしばらく呆然としているとイブが優しく「……グレースに服を借りましょうか」と声を掛けてくれたので私は現実世界に戻ってくることができました!!
「えー!羨ましいです。神殿長って素敵じゃないですか?」グレースが私に服を手渡しながら腰をクネクネさせた。
「あ…そ、そうかもしれない」教育係の聖職者を思い出すから苦手だけれど…一般的には美しく素敵な男性だ。
「私も仕事さえなければお供したいです…」グレースはちらりとイブを見ている。「んーーーーー…帰ったら倍速で働く必要がありますよ?」イブは物凄く悩んだ結果そう言った。
グレースは「はい!はい!勿論!」と嬉しそうだ。
「ふふ…」
なんだかあまり乗り気じゃなかったけど…
一応鎮静剤を飲んでおこう。ポリポリ…
「じゃ、じゃあ行ってくるからな」王様がわざわざ部屋にやってきて出発の報告をしてくださった。
危ない…後少しで着替えてしまうところでした!
「はい、いってらっしゃいませ」
「………なんだかめかし込んでないか?」王様は腰を屈めると私を色んな角度から眺めて言った。
「え?そ、そ、そそそそそんなことありません」
「…………そうか…?まあお前は普段からかわいらしいからな!!はははははははは!な、なんてな!はははははははは!はははははははは!はははははははは!!かわいらしいなんてな!はははははははは!そんななあ?はははははははは!軟派だな!軟派!それは軟派すぎるよなぁ!」
「ふ…ふふふ…ふふふ…」なんぱ?
「はははははははは!俺は本来そんな男ではない!はははははははは!ちょっとふざけただけだ!なあ!そんななあ!かわいらしいなどとなあ!はははははははは!俺はそんなお前ばかりを見ているわけではないぞ!忙しいからな!はははははははは!」
「ふふふ…」なんだろ…早く行かないかな…
見送ってくれと言われたのでついて行く。「じゃ、じゃあな行ってくるぞ?行ってくるからな」そう言うと王様は何度も何度もこちらを振り返りながら宮殿を出て行った。……怪しまれてる!?
私が今日街に出るのがバレているのかしら!!
私は動揺を悟られないようにニッコリ笑って手を振り続けた。
ドキドキ…
「ふー危なかったわね。心臓が飛び出るかと思いました…」私は側についてくれていたイブとグレースに軽口を叩く。
「なんだか物言いたげでしたね…王様」グレースがイブにコソコソと耳打ちしてる…
「そうね」イブは目をつぶると静かに頷いた。
「ま、まさか…お出かけに気付かれてしまったのでしょうか…!」私はソワソワと落ち着かない気分になる。
今回のお出かけ…本当は王様は気付いていて…街の入口で待ち構えていたらどうしよう!!そして私は斬り捨てられてしまうのでは…
ガタガタと震える私を見て神殿長様が「あははははは!」と笑っている。「それはないでしょう」と
「そ、そうですか?しかし初日に私は死ぬ寸前にまで追い詰められたのですが…」私は王様と出会った当時を思い出して身を更に震わせた。
「あはは!ひどい話だ!」
笑い事ではありません!
神殿長は聖職者とは思えないほど呑気な方だわ。
背中の真ん中ほどまである長い髪は先ほど神殿では垂らしていらしたけれど今は頭の下辺りで一本にまとめられている。
艷やかで絹のような金髪ね…
美しい。
シンプルな襟付きのシャツとこれまたシンプルな下履きをはいてらっしゃるけれどスタイルが良いのでとても様になっている。
100才…
「王妃様、人の年齢はあまり意味がありません」
「え?」
「この世に生まれ落ち、ここで何年生活をしている…ただその年数を数えたにすぎないのです」神殿長は馬車の窓の縁に肘をのせて頬杖をついている。なんで私が年齢のことを考えているのがわかったのかしら…
「私は勘がいいタイプでして…子どもの頃からずっと」神殿長は薄っすら笑うとそう言った。「勘がいい…」
「色んな事柄に匂いがあるのには気付いてらっしゃいますか?王妃。呪物、幸福物、はたまた感情や気分まで…私は鼻がいいんですよ」「???」神殿長は不思議なお話をしてくださいましたが、私は学がないのでついて行けずただ目をパチパチさせることしかできませんでした…
「あははは!久しぶりだなぁ!外界は!」神殿長は馬車が停まるやいなやドアを開けて外に飛び出すと本当に嬉しそうにはしゃいでいる。
「神殿長。あなたがいなくなられては…私どもは万が一王様に見られた時なんと言われるか…」「わかってる。わかってる。あははは!」イブが命乞いに近い緊迫感で繰り出す質問に神殿長は大したことではないような様子で呑気に答えた。
そんなことより私は初めて出る街の様子に目が眩む思いがした。
「わあ…」
馬車を降りると広場があってそこはたくさんの人が行き交っている。広場の向こう側には小さなお店がたくさん並んでいて私は心をワクワクさせてしまった。
「ねえ?グレースあれはなに?」私は一つのテントのような物を指差す。そこの下ではふわふわとした雲のようなものを巻き取っている職人がいた。
「あれは綿の飴でございます。王妃様」
「綿の飴?」
「なにそれ!食べてみよう!食べてみよう!私が以前100年前に街に出た時はなかったぞ?人類はすごいなあ。発展していますね!」神官長は私の手を引くとテントの下まで引っ張った。
「あ!あの!ちょっと困ります!お、お二方様!」イブが神殿長とも王妃とも言えずなんだか様子のおかしなことになっている。「わかってる。変なことはしないので安心してくださいな。イブは過保護だなあ」神殿長は胸ポケットに手を入れると銀貨を数枚出した。
イブとグレースが息を乱しながら人混みをかき分けこちらに来てくれた。
「ごちそうしてあげましょう」私が初めて見た銀貨に感動していると神殿長は手のひらにポトリとそれを置いてくれた。
これもまた匂いがしたのだろうか。
「重たい」
「金貨を見たことがありますか?あれはもう少し重いですよ」
私は本で見た金貨を思い浮かべてなるほど…と思う。
銀より金の方が重いものね。と
「価値も金の方が上です。不思議ですね。価値を重さで決めたのかな?重さなんてもんはあまり意味が…あ、すいませんこれを2つ…あ、4つください」
私が何も口にしなくても伝わる…なんて便利なのかしら。人類にその機能があれば…と私は考えて首を振った。
いけないわ。
王様の気持ちが全てわかってしまったら…私は側にいられないかも…それに私が日頃男性器のことばかり考えているのがバレてしまうわ!!
私は震えました!
「わー!本当に綿の飴…」私は噴水の縁に座り、飴に口をつけると次々と溶けてなくなってしまうことに感動して声を上げる。
「甘いですねえ…」神殿長はなんだか少し辛そうだ。
私は空を眺めてそこに浮かぶ雲を見た。あの雲も甘いのかしら?口に入れたら消えてしまう?「ふふふ…」私がなんだかおかしくなって笑うとイブがこちらを見て「王妃様が幸せそうでなによりでございます」と笑いながら言った。
「あ、王妃様もグレースあたりにお召し物を借りて…一時間後にこちらに集合でよろしいですか?」その途中神殿長は今思い出したかのような素振りで私を振り返った。
「え?あ、あの…」知らない人と…街へ行くのいやだわ!
「………断るんですか?」
神殿長はオロオロと口ごもる私の事をじっとりとした目で見つめると静かにそう言った。「あ、いえ…あの…!」断ろうとしてました!ごめんなさい!
「老いぼれの願い…死ぬ前に一度街へ行ってみたかったというかわいい願い…」
「はわわ…」
「じゃあ一時間後にここで」私が戸惑っている間に神殿長は勝手に約束を取りつけるとニッコリ笑って聖堂の奥へと消えて行きました…
私がしばらく呆然としているとイブが優しく「……グレースに服を借りましょうか」と声を掛けてくれたので私は現実世界に戻ってくることができました!!
「えー!羨ましいです。神殿長って素敵じゃないですか?」グレースが私に服を手渡しながら腰をクネクネさせた。
「あ…そ、そうかもしれない」教育係の聖職者を思い出すから苦手だけれど…一般的には美しく素敵な男性だ。
「私も仕事さえなければお供したいです…」グレースはちらりとイブを見ている。「んーーーーー…帰ったら倍速で働く必要がありますよ?」イブは物凄く悩んだ結果そう言った。
グレースは「はい!はい!勿論!」と嬉しそうだ。
「ふふ…」
なんだかあまり乗り気じゃなかったけど…
一応鎮静剤を飲んでおこう。ポリポリ…
「じゃ、じゃあ行ってくるからな」王様がわざわざ部屋にやってきて出発の報告をしてくださった。
危ない…後少しで着替えてしまうところでした!
「はい、いってらっしゃいませ」
「………なんだかめかし込んでないか?」王様は腰を屈めると私を色んな角度から眺めて言った。
「え?そ、そ、そそそそそんなことありません」
「…………そうか…?まあお前は普段からかわいらしいからな!!はははははははは!な、なんてな!はははははははは!はははははははは!はははははははは!!かわいらしいなんてな!はははははははは!そんななあ?はははははははは!軟派だな!軟派!それは軟派すぎるよなぁ!」
「ふ…ふふふ…ふふふ…」なんぱ?
「はははははははは!俺は本来そんな男ではない!はははははははは!ちょっとふざけただけだ!なあ!そんななあ!かわいらしいなどとなあ!はははははははは!俺はそんなお前ばかりを見ているわけではないぞ!忙しいからな!はははははははは!」
「ふふふ…」なんだろ…早く行かないかな…
見送ってくれと言われたのでついて行く。「じゃ、じゃあな行ってくるぞ?行ってくるからな」そう言うと王様は何度も何度もこちらを振り返りながら宮殿を出て行った。……怪しまれてる!?
私が今日街に出るのがバレているのかしら!!
私は動揺を悟られないようにニッコリ笑って手を振り続けた。
ドキドキ…
「ふー危なかったわね。心臓が飛び出るかと思いました…」私は側についてくれていたイブとグレースに軽口を叩く。
「なんだか物言いたげでしたね…王様」グレースがイブにコソコソと耳打ちしてる…
「そうね」イブは目をつぶると静かに頷いた。
「ま、まさか…お出かけに気付かれてしまったのでしょうか…!」私はソワソワと落ち着かない気分になる。
今回のお出かけ…本当は王様は気付いていて…街の入口で待ち構えていたらどうしよう!!そして私は斬り捨てられてしまうのでは…
ガタガタと震える私を見て神殿長様が「あははははは!」と笑っている。「それはないでしょう」と
「そ、そうですか?しかし初日に私は死ぬ寸前にまで追い詰められたのですが…」私は王様と出会った当時を思い出して身を更に震わせた。
「あはは!ひどい話だ!」
笑い事ではありません!
神殿長は聖職者とは思えないほど呑気な方だわ。
背中の真ん中ほどまである長い髪は先ほど神殿では垂らしていらしたけれど今は頭の下辺りで一本にまとめられている。
艷やかで絹のような金髪ね…
美しい。
シンプルな襟付きのシャツとこれまたシンプルな下履きをはいてらっしゃるけれどスタイルが良いのでとても様になっている。
100才…
「王妃様、人の年齢はあまり意味がありません」
「え?」
「この世に生まれ落ち、ここで何年生活をしている…ただその年数を数えたにすぎないのです」神殿長は馬車の窓の縁に肘をのせて頬杖をついている。なんで私が年齢のことを考えているのがわかったのかしら…
「私は勘がいいタイプでして…子どもの頃からずっと」神殿長は薄っすら笑うとそう言った。「勘がいい…」
「色んな事柄に匂いがあるのには気付いてらっしゃいますか?王妃。呪物、幸福物、はたまた感情や気分まで…私は鼻がいいんですよ」「???」神殿長は不思議なお話をしてくださいましたが、私は学がないのでついて行けずただ目をパチパチさせることしかできませんでした…
「あははは!久しぶりだなぁ!外界は!」神殿長は馬車が停まるやいなやドアを開けて外に飛び出すと本当に嬉しそうにはしゃいでいる。
「神殿長。あなたがいなくなられては…私どもは万が一王様に見られた時なんと言われるか…」「わかってる。わかってる。あははは!」イブが命乞いに近い緊迫感で繰り出す質問に神殿長は大したことではないような様子で呑気に答えた。
そんなことより私は初めて出る街の様子に目が眩む思いがした。
「わあ…」
馬車を降りると広場があってそこはたくさんの人が行き交っている。広場の向こう側には小さなお店がたくさん並んでいて私は心をワクワクさせてしまった。
「ねえ?グレースあれはなに?」私は一つのテントのような物を指差す。そこの下ではふわふわとした雲のようなものを巻き取っている職人がいた。
「あれは綿の飴でございます。王妃様」
「綿の飴?」
「なにそれ!食べてみよう!食べてみよう!私が以前100年前に街に出た時はなかったぞ?人類はすごいなあ。発展していますね!」神官長は私の手を引くとテントの下まで引っ張った。
「あ!あの!ちょっと困ります!お、お二方様!」イブが神殿長とも王妃とも言えずなんだか様子のおかしなことになっている。「わかってる。変なことはしないので安心してくださいな。イブは過保護だなあ」神殿長は胸ポケットに手を入れると銀貨を数枚出した。
イブとグレースが息を乱しながら人混みをかき分けこちらに来てくれた。
「ごちそうしてあげましょう」私が初めて見た銀貨に感動していると神殿長は手のひらにポトリとそれを置いてくれた。
これもまた匂いがしたのだろうか。
「重たい」
「金貨を見たことがありますか?あれはもう少し重いですよ」
私は本で見た金貨を思い浮かべてなるほど…と思う。
銀より金の方が重いものね。と
「価値も金の方が上です。不思議ですね。価値を重さで決めたのかな?重さなんてもんはあまり意味が…あ、すいませんこれを2つ…あ、4つください」
私が何も口にしなくても伝わる…なんて便利なのかしら。人類にその機能があれば…と私は考えて首を振った。
いけないわ。
王様の気持ちが全てわかってしまったら…私は側にいられないかも…それに私が日頃男性器のことばかり考えているのがバレてしまうわ!!
私は震えました!
「わー!本当に綿の飴…」私は噴水の縁に座り、飴に口をつけると次々と溶けてなくなってしまうことに感動して声を上げる。
「甘いですねえ…」神殿長はなんだか少し辛そうだ。
私は空を眺めてそこに浮かぶ雲を見た。あの雲も甘いのかしら?口に入れたら消えてしまう?「ふふふ…」私がなんだかおかしくなって笑うとイブがこちらを見て「王妃様が幸せそうでなによりでございます」と笑いながら言った。
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