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しおりを挟む「え?王様が?一体なんの用なのかしら…嫌だわ」
もう仲良くなるのは無理であろう王からの訪問のお知らせで一気に憂鬱な気分になってしまう。
……殺戮されるのでは…?
私はこの前知らなかったとは言え王に閨を共にするように迫ってしまったし…おまけに誤解とは言え女性騎士に害をなしたと思われていて…さぞかし気分を悪くされたのではないかしら…
私は使用人に胸が目立たない服を用意するように伝えるとリビングにあるソファに腰掛けた。
彼女たちはしっかりと首元まで覆われた襟付きのドレスを選んできてくれて、それに袖を通す。
…ちょっと暑いけど仕方がないわ。
数々の無礼を働いて、それを反省していないと感じられてしまっては…私の首は即座に落とされてしまうかも!!
「お綺麗ですよ。王妃様」
私は苦しい胸元をそっと撫でると「ふふふ…ありがとう」とニッコリ笑う。
はぁ…怖い…彼は前回の事を怒っているからこちらへ来るのだろうか…処刑というのは事前に「処刑するって決まったので…これから王が訪問して正式に通達されますからね」と事前に教えられはしないものなのかしら…
急に本番なのだろうか…
ゴツゴツと軍靴の音が鳴ると「王様がいらっしゃいました」と使用人に告げられて立ち上がる。
ほら…軍靴は不幸を呼んでくるのよ…嫌だわ…
ガチャリと扉が開くと私の心臓はドクドクと脈打ち口から飛び出してしまいそう…なんの用なんだろう…私のところに来るなんて…
「王様…ようこそいらっしゃいました」
「…あ、ああ…」
王は私をちらりと一瞥すると胸元を見てホッと安堵の息を吐いている。私はなんだか顔が熱くなってしまう。
「前は大変失礼いたしました…あ、あの…異文化を理解しておりませんで…こちらの男性は愛がないと女性と床を共にされないんですね。大変お恥ずかしい…申し訳ございません」
私は前回の無礼を恥、使用人にお茶の準備をするように声を掛ける。
「もうあのような無礼は致しません。大変申し訳ございませんでした」私は深々と頭を下げて王からの言葉を待つ。
「あ…そ、そのことだが…」
「はい」
「その…」
「……」
「……」
王は非常に言いづらそうにしていたかと思うと押し黙ってしまった。恐らく私とは今後閨事はできないと言いたいのであろう…それが言いづらいのでしょうね…
それを言えずに口籠っているのだとしたら…彼は実は優しくて思いやりのある方なのではないだろうか。
それに…閨事をしないと言うことは私たちの間に子は生まれないということ…しかし跡継ぎは必要なのでは?
しかしこちらの国は王を決めるとき実力制のようでもあるし…彼が失脚した際はまた新たな王がなんらかの形で選出されるのかもしれない。
「王様…以前は私、このような習慣を存じ上げておりませんで…これからは私たち閨事など男女の関係ではなく…あの、親しくなれたら…と私思っておりまして…」そう…そして少しは私のことを殺戮しなくてもいいか!という情を抱いてほしい…
「…え…」
このような慣習があるのでは、もしかすると私が王に恋心を抱いていると思われてしまっていないかしら…それはそれで本来の想い人に危害を加えてしまいそうだから、と処刑の恐れがあるわ。無礼にならない程度にそこもアピールしなければ…!
「私…王様のことをとても尊敬しております。あ、でも…今後それが愛に変わることはないのでご安心いただいて…なのであの、友人と言ってはおこがましいのですが、とにかく親しくなれたらな…と…王様も心に決めた女性がいらっしゃいましたらその方を事実上正妻にしても構いませんし、その際には私もあちらの国から男性を一人呼ばせていただけたらな、と…」
私がそこまで言い終わり王の顔を見上げると彼は顔を真っ赤に染めて鬼のような顔をしていた。
「な、なんだと!!貴様!!」
「ひぇ…た、大変申し訳ございません…過ぎた真似を…」キャーすごく怒らせてしまったわ!!
私は再び頭を下げると「あ…あの…お恥ずかしいながら私、身体が火照って眠れないのでございます。お調べしたところ、こちらには男娼などはいらっしゃらないようなので…あちらの国から…と思った次第でございます」もう少し段階を踏んでお願いするべきだった…
ああー!失敗した!!
もー!バカバカバカバカ!
ああ…そんな事を考えていたら身体が…陰核が育ってきてしまった…ダメよ…男娼のことは考えないで!!
ああ…!今陰部を濡らしてる愛液を陰核につけて…それを思いっ切りぐるぐると円を描くように捏ね回したい!さぞかしヌルヌルして気持ちがいいに違いないわ…
ハァハァ…
「無理ならば…あの、大丈夫です。自分で慰めますので…」
私がそう言うとガタン!!と物凄い音がしたのでそちらを見ると顔を血まみれにした王が仰向けに倒れていた。
え…?
なに?
敵襲!?
「だ、大丈夫でございますか?王様?王様?」
一体どうしてしまったの!?
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