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「王妃様…先ほどのご提案はちょっと保留にしておきましょうね」使用人が優しく私の肩を擦る。
「そう?…いい案だと思ったのだけれど…」
「………あ、王妃様!まだ王宮内を案内しておりませんよね?案内させていただいても?」
え?わーい!
案内してもらえるのね!楽しみ!
私は異国から嫁いで来たし、王にはあまり良く思われていないし…あまりウロウロするのは…と自粛していたけれど。自分のいた国でさえ、王宮の中のことはあまりよく知らないのだ。
…私は9番目だったし、母の身分はあまり高くないし…
第一私自身の能力が…だから王宮を歩く権利がなかったのよね。
でも、ここでは私も王宮を歩いていいみたい。
嬉しいわ!ふふふ
今住む王宮は北側と南側に分かれていて、私と王が住んでいるのは北側なんだそうです。
「我が国は現在はとても暑いので…北側が良い住まいの方向とされているのです」使用人はそう微笑んで私の部屋のドアを開けてくれた。
「そうなのね。私が前にいた国では逆でした」あちらは寒かったから南側が良い住まい。だから今、彼女からその話を聞かなければ私は冷遇されているのでは?と勘違いするところだったわ…
「王妃様が今いらっしゃるお部屋が3階になってらっしゃいまして…このエリアの中では一番高い場所になります」
「そうなのね。ふふ…」一番高い良い場所に居住させてもらってるなんて意外と大切にされてるのかも…なんて…ふふ…
もともと姉が住む予定のスペースにそのまま私を住まわせているだろうし…この待遇は本来私に向けられたものではないのかもしれないけれどね。
長い廊下を進む。廊下は窓ガラスがないので風が吹き抜けていく。涼しい…しばらく進むと下のホールまで続く階段がある。円形になっている壁に沿って取り付けられた階段を降りると「2階へはこちらから行きます」と途中で使用人が足を止め教えてくれた。
そちらは客室や客間になっているようで客人を持て成すときに利用するようだ。
ホールに着くとそこには王の背後にいつも立っている女性騎士が苦しそうに蹲っていた。
「あ…だ、大丈夫ですか?」いつも凛と立っている彼女の姿に驚いた私は慌てて駆け寄った。
「お、王妃様…」彼女は私を見て立ち上がろうとしたのでそれを手で制す。「いけないわ…無理しないで?…どうしましょう…お医者様を…」私が使用人を見ると彼女はコクコク頷きながら「今すぐ呼んで参ります!」と走って行った。
王宮見学には一人だけ使用人がついてきてくれていて、他の方々はお部屋を整えてくれている…なので私は女性騎士の方と今二人きり…
聞きたいことはたくさんあるのだけれど…とにかく彼女は今苦しそう…「大丈夫ですか?何か私にできることは…」私が彼女の手を握り顔を覗き込むと苦しそうに歪んだ顔を見せまいとしたのか彼女がふ…と笑った。
「王妃様…こんな私にそのように優しくしてくださるとは…あなたはなんと優しいお心をお持ちなのでしょう…」
「え…?そんな…こちらこそあなたには苦しい思いを…本当にごめんなさい…私…」私がそこまで話した時「なにをしてる!!」とホールに大きな声が響き渡りました。
「貴様!!ツヴァイから離れろ!」
私は後ろに引き倒されると女性騎士から引き離されて床に尻もちをついた。驚いて見上げると王が怒りに顔を真っ赤にさせていた。私は女性騎士に害をなしたと思われていることに気付き言い訳をしようと口を開いたけれど、その時使用人がお医者様を連れてきてくれたので私は口を噤んだ。…私の感情を優先させて治療が間に合わなくなっては困る…
…別に今更王になんと思われたとしてももうすでに私は殺すリストに入っているんだし…
女性騎士の方…大丈夫だといいのだけれど…
「お、王妃様!いかがなさいましたか!」私が床に座り込んでいるのを見て慌てて使用人が駆け寄って来てくれた。
「あ…平気です」私は手を借り立ち上がるとスカートのホコリを払った。使用人を心配させてしまったわ。私ったらぼんやりしているから…座ったままぼんやりしないですぐ立ち上がればよかった。
女性騎士は王に付き添われてお医者様と去る。その背中を私はまたしてもぼんやりと見つめた。
これがこの国の男女関係か…と
私のいた国にはこのよう関係性はない。
少なくとも父は母がこのような目に合っても駆けつけたり、付き添ったりはしないだろう。……なんだか不思議だわ。
それに…「…私…なんだか誤解されてしまったかもしれません…」私が眉を下げると私の母ほどの年の差があるであろう使用人は私をギュっと抱きしめて「大丈夫ですよ王妃様。あなたの優しいお人柄は必ずや王の心を溶かしましょう…」と言ってくれたので「…心はいらないの…男性器を挿し込んでさえくれればそれでいいのよ…」と私は使用人の背中を撫でた。
使用人は驚いたような顔で私から少し離れると笑ったので私も笑った。
ホールには二人の女性の笑い声が響き渡る。
ああ!早く男性器を挿し込んで欲しい!
誰でもいいわ!
「そう?…いい案だと思ったのだけれど…」
「………あ、王妃様!まだ王宮内を案内しておりませんよね?案内させていただいても?」
え?わーい!
案内してもらえるのね!楽しみ!
私は異国から嫁いで来たし、王にはあまり良く思われていないし…あまりウロウロするのは…と自粛していたけれど。自分のいた国でさえ、王宮の中のことはあまりよく知らないのだ。
…私は9番目だったし、母の身分はあまり高くないし…
第一私自身の能力が…だから王宮を歩く権利がなかったのよね。
でも、ここでは私も王宮を歩いていいみたい。
嬉しいわ!ふふふ
今住む王宮は北側と南側に分かれていて、私と王が住んでいるのは北側なんだそうです。
「我が国は現在はとても暑いので…北側が良い住まいの方向とされているのです」使用人はそう微笑んで私の部屋のドアを開けてくれた。
「そうなのね。私が前にいた国では逆でした」あちらは寒かったから南側が良い住まい。だから今、彼女からその話を聞かなければ私は冷遇されているのでは?と勘違いするところだったわ…
「王妃様が今いらっしゃるお部屋が3階になってらっしゃいまして…このエリアの中では一番高い場所になります」
「そうなのね。ふふ…」一番高い良い場所に居住させてもらってるなんて意外と大切にされてるのかも…なんて…ふふ…
もともと姉が住む予定のスペースにそのまま私を住まわせているだろうし…この待遇は本来私に向けられたものではないのかもしれないけれどね。
長い廊下を進む。廊下は窓ガラスがないので風が吹き抜けていく。涼しい…しばらく進むと下のホールまで続く階段がある。円形になっている壁に沿って取り付けられた階段を降りると「2階へはこちらから行きます」と途中で使用人が足を止め教えてくれた。
そちらは客室や客間になっているようで客人を持て成すときに利用するようだ。
ホールに着くとそこには王の背後にいつも立っている女性騎士が苦しそうに蹲っていた。
「あ…だ、大丈夫ですか?」いつも凛と立っている彼女の姿に驚いた私は慌てて駆け寄った。
「お、王妃様…」彼女は私を見て立ち上がろうとしたのでそれを手で制す。「いけないわ…無理しないで?…どうしましょう…お医者様を…」私が使用人を見ると彼女はコクコク頷きながら「今すぐ呼んで参ります!」と走って行った。
王宮見学には一人だけ使用人がついてきてくれていて、他の方々はお部屋を整えてくれている…なので私は女性騎士の方と今二人きり…
聞きたいことはたくさんあるのだけれど…とにかく彼女は今苦しそう…「大丈夫ですか?何か私にできることは…」私が彼女の手を握り顔を覗き込むと苦しそうに歪んだ顔を見せまいとしたのか彼女がふ…と笑った。
「王妃様…こんな私にそのように優しくしてくださるとは…あなたはなんと優しいお心をお持ちなのでしょう…」
「え…?そんな…こちらこそあなたには苦しい思いを…本当にごめんなさい…私…」私がそこまで話した時「なにをしてる!!」とホールに大きな声が響き渡りました。
「貴様!!ツヴァイから離れろ!」
私は後ろに引き倒されると女性騎士から引き離されて床に尻もちをついた。驚いて見上げると王が怒りに顔を真っ赤にさせていた。私は女性騎士に害をなしたと思われていることに気付き言い訳をしようと口を開いたけれど、その時使用人がお医者様を連れてきてくれたので私は口を噤んだ。…私の感情を優先させて治療が間に合わなくなっては困る…
…別に今更王になんと思われたとしてももうすでに私は殺すリストに入っているんだし…
女性騎士の方…大丈夫だといいのだけれど…
「お、王妃様!いかがなさいましたか!」私が床に座り込んでいるのを見て慌てて使用人が駆け寄って来てくれた。
「あ…平気です」私は手を借り立ち上がるとスカートのホコリを払った。使用人を心配させてしまったわ。私ったらぼんやりしているから…座ったままぼんやりしないですぐ立ち上がればよかった。
女性騎士は王に付き添われてお医者様と去る。その背中を私はまたしてもぼんやりと見つめた。
これがこの国の男女関係か…と
私のいた国にはこのよう関係性はない。
少なくとも父は母がこのような目に合っても駆けつけたり、付き添ったりはしないだろう。……なんだか不思議だわ。
それに…「…私…なんだか誤解されてしまったかもしれません…」私が眉を下げると私の母ほどの年の差があるであろう使用人は私をギュっと抱きしめて「大丈夫ですよ王妃様。あなたの優しいお人柄は必ずや王の心を溶かしましょう…」と言ってくれたので「…心はいらないの…男性器を挿し込んでさえくれればそれでいいのよ…」と私は使用人の背中を撫でた。
使用人は驚いたような顔で私から少し離れると笑ったので私も笑った。
ホールには二人の女性の笑い声が響き渡る。
ああ!早く男性器を挿し込んで欲しい!
誰でもいいわ!
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