【R18】フォルテナよ幸せに

mokumoku

文字の大きさ
上 下
23 / 43

23

しおりを挟む
「……!!」

クロードはフォルテナと結婚してからというもの絶対の絶対にフォルテナより先に起きると決めていた。かわいらしい寝顔を見たかったのだ。

クロードは身を起こすと朝の生理現象なのかなんなのかよくわからない股間を抑えつけてフォルテナの寝顔を眺めニヤニヤした。

(なんてかわいらしいのだろう)

フォルテナの閉じた瞼に美しく並ぶまつ毛、ふっくらとした唇、全部自分にはなくて触れると壊れそうなほど愛おしかった。
クロードはしばらくフォルテナを眺めると立ち上がり寝室を出た。

『妻に花束を贈りたいのだが』

クロードはそろそろ妻と仲良くなれてきたような気がしていた。
ハーネットははじめの頃フォルテナはクロードをあまりよく思っていないと言っていたけれどこれだけ床を共にして、少しその感情も軟化したのではないかと……
今ならプレゼントも受け取ってくれるのでは……?

クロードは朝食後メイソンにメモを見せるとメイソンは目を細めてゆっくり頷いた。
メイソンは心の底からよかった。と思う。

奥様がどのようなお気持ちかはわかりませんが、少なくともぼ……旦那様がこんなに嬉しそうにしている。
屋敷に戻ってきてからどことなく元気のなかったクロードがメイソンは心配で心配で堪らなかった。
騎士になってからはここにいるときよりも生き生きと生活をしているように感じていたけれど屋敷に本格的に戻ってきてからはなんとなく元気がないように感じていたのだ。

もうご両親もお兄様もいないのに……

メイソンはウキウキと手を振るクロードを眺めると彼の幸せを願った。


『女性はどんな花が好きだろうか』
「うーん……そうですね……」
クロードが前のめりにメモを見せると庭師は頭を抱えた。
彼の本気さに適当なことは言えないと思ったからだ。
「あ……そ、そうだ!ハーネット!ハーネットに聞きましょう!奥様以外では唯一の女……ハーネットに!」


(大きい、小さい……ちょっと小さい……)クロードが何度見ても三種類ほどにしか見えない花を眺めていると庭師がハーネットを連れてやってきた。
「ハーネット!貰うならどんな花がいい?」庭師がハーネットに尋ねる。
「わ、私が?……そ、そうですね……薔薇とか……?」ハーネットは少し気恥ずかしそうにすると赤い花を指さした。庭師はそれをチョンと切り、トゲを削ぎ落としている。
「後二種類位選べ!ハーネット!」
「……え?あ、あれとあれ……?」
素敵な花束ができたが……なんだかクロードは違うような気がしていた。……これではハーネットが欲しい花束では?と
「旦那様!いかがでしょう!女性好みの花束でございます!」
庭師がそれをクロードの前に差し出したが『それはハーネットに』『俺はちょっと書庫に』『仕事の邪魔をしてすまない』とメモを見せると屋敷に戻った。


少し変でも自分で選ぶべきな気がする……

ハーネットが選んだ花をもらってフォルテナ殿は嬉しいだろうか……クロードは書庫へ向かうと花の図鑑を取り出した。
自分なら他の男がアドバイスした贈り物を貰ってもあまり嬉しくないだろう……
床にドカリと座るとページをめくる。

目次を確認すると『花束』の項目があったのでめくる。

さすが図鑑……俺の知りたいことがなんでも載っている……

『花には各種類に花言葉というものが存在します。それに意味を込めて贈るとロマンチックですね』

クロードはこれだ……と思った。

自分は口が聞けない代わりにフォルテナへ贈る花は自分の想いをたっぷりと込めて贈ろう……と

クロードはめちゃくちゃ勉強した。
花の種類と花言葉をめちゃくちゃ覚えた。

フォルテナが喜んでくれるといいな。と思いながら。



『妻に今回はこの本を』

慣れない生活で退屈していないかと毎週届けている書物の中にこっそり花の図鑑を紛れ込ませておく。フォルテナ殿は少し賢すぎるのか経済書が好みのようだ。とハーネットから報告を受けているが……時折娯楽小説も混ぜてみている。

「奥様が会いたい時にはこちらから連絡するから、とおっしゃっておりました」

ハーネットにそう伝えられてからなんとなく遠慮してしまいフォルテナに直接会うことがクロードにはできないでいた。
やはり自分はあまり好かれていないのだろう。と思う。

でもそれも仕方がないことだ。と思った。
少しずつ歩み寄ることができれば、と

自分はフォルテナをひと目見た時に恋をしてしまったが向こうはそうではないのだ。しかし、恋した相手と結婚できるなど……幸せなことではないだろうか。



クロードはうっきうきで庭へ行くとフォルテナのために花束を作った。ジプソフィラにピンク色のガーベラとルドベキアだ。
ジプソフィラは単純にフォルテナのようにかわいらしくて美しいのもあるが花言葉が「無垢の愛」ピンク色のガーベラは「熱愛」ルドベキアは「あなたを見つめる」という意味があるらしいので選んだのだ。
クロードはあまりにも露骨すぎるだろうか……と顔を赤くすると俯いた。




「あ……は、はい」
フォルテナが扉を開ける。
いつもよりなんとなく儚げなフォルテナを見てクロードは胸がより一層高鳴った。彼女は自分の花束を気に入ってくれるだろうか……
しかし彼女は「……すいません。今ハーネットはいないんです……恐らくどこか別のとこにいると思うので……そちらで渡してもらえますか?」と頭を下げて扉を閉めた。

クロードは一瞬意味がわからず聞き返そうとドアをノックしようとしたが……(自分への贈り物は使用人であるハーネットを通せということか……?)と上げた手を下ろした。


なんだか少し寂しい気持ちになった。
声が出ればすぐ尋ねることができただろうに。
しおりを挟む
感想 316

あなたにおすすめの小説

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

【完結】お飾りの妻からの挑戦状

おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。 「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」 しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ…… ◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています ◇全18話で完結予定

【完結】私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね

江崎美彩
恋愛
 王太子殿下の婚約者候補を探すために開かれていると噂されるお茶会に招待された、伯爵令嬢のミンディ・ハーミング。  幼馴染のブライアンが好きなのに、当のブライアンは「ミンディみたいなじゃじゃ馬がお茶会に出ても恥をかくだけだ」なんて揶揄うばかり。 「私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね! 王太子殿下に見染められても知らないんだから!」  ミンディはブライアンに告げ、お茶会に向かう…… 〜登場人物〜 ミンディ・ハーミング 元気が取り柄の伯爵令嬢。 幼馴染のブライアンに揶揄われてばかりだが、ブライアンが自分にだけ向けるクシャクシャな笑顔が大好き。 ブライアン・ケイリー ミンディの幼馴染の伯爵家嫡男。 天邪鬼な性格で、ミンディの事を揶揄ってばかりいる。 ベリンダ・ケイリー ブライアンの年子の妹。 ミンディとブライアンの良き理解者。 王太子殿下 婚約者が決まらない事に対して色々な噂を立てられている。 『小説家になろう』にも投稿しています

【完結】「心に決めた人がいる」と旦那様は言った

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
「俺にはずっと心に決めた人がいる。俺が貴方を愛することはない。貴女はその人を迎え入れることさえ許してくれればそれで良いのです。」 そう言われて愛のない結婚をしたスーザン。 彼女にはかつて愛した人との思い出があった・・・ 産業革命後のイギリスをモデルにした架空の国が舞台です。貴族制度など独自の設定があります。 ---- 初めて書いた小説で初めての投稿で沢山の方に読んでいただき驚いています。 終わり方が納得できない!という方が多かったのでエピローグを追加します。 お読みいただきありがとうございます。

とまどいの花嫁は、夫から逃げられない

椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ 初夜、夫は愛人の家へと行った。 戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。 「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」 と言い置いて。 やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に 彼女は強い違和感を感じる。 夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り 突然彼女を溺愛し始めたからだ ______________________ ✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定) ✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです ✴︎なろうさんにも投稿しています 私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

忙しい男

菅井群青
恋愛
付き合っていた彼氏に別れを告げた。忙しいという彼を信じていたけれど、私から別れを告げる前に……きっと私は半分捨てられていたんだ。 「私のことなんてもうなんとも思ってないくせに」 「お前は一体俺の何を見て言ってる──お前は、俺を知らな過ぎる」 すれ違う想いはどうしてこうも上手くいかないのか。いつだって思うことはただ一つ、愛おしいという気持ちだ。 ※ハッピーエンドです かなりやきもきさせてしまうと思います。 どうか温かい目でみてやってくださいね。 ※本編完結しました(2019/07/15) スピンオフ &番外編 【泣く背中】 菊田夫妻のストーリーを追加しました(2019/08/19) 改稿 (2020/01/01) 本編のみカクヨムさんでも公開しました。

処理中です...