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第一章
疑問
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看守のけたたましい声で私は一日をスタートした。
とはいえ、昨夜あんなことがあって熟睡は出来ず仮眠程度の睡眠時間だった。
重い瞼をなんとか開き、自分の独房の掃除を始めた。
昨日の子はなんだったんだろう……もしかしたら私の夢だったのかな。
でも、ハッキリ覚えてる。
エリックという名前も赤眼だったことも優しい笑顔も悲しそうな顔も……なんか悪いことしたな。
あんなに優しいのに……悲しい顔させちゃった。謝りたいな。
どこかにいるかな……また会えるかな。
エリックのことを考えている間に掃除は終わっていた。
「おい、007番掃除が終わったなら早く食堂に行け」
「……はい」
昨日の記憶を頼りに食堂に向かった。
まだ、どこに何があるのかを把握していない私にとってここは迷路に等しい。
入り組んだ廊下、全く意味のない扉、同じような内装の部屋、誰かいないと迷子になりそう。
刑務所はこんなものなのかな……。
やっとの思いで着いた食堂はテレビを見ているアランとシェイラだけだった。
素早く朝食を摂った私は自分の独房に戻ろうとしたが、二人に絡まれてしまった。
「カーラおはよう。遅かったじゃん」
「カーランは迷っちゃったのかなー」
「おはよう……迷ってない。てか何? カーランって」
「ん? あだ名だよ。あだ名」
「シェイラは仲良くしたい人にはあだ名をつけるんだよ」
「そうなんだ」
「だから私はカーランと仲良くしたい。改めてよろしくね」
「昨日のことを反省してるならいいけど」
「反省してるよ。それにここでは唯一の女友達だから」
「……分かったよ」
「やったぁ」
「良かったねカーラ。友達だって」
照れくさくて私は少し頷くことを返事として返した。
これまで友達が少なかった私にとっては嬉しいことだ。
その後、シェイラとはすぐ打ち解けてカードゲームやボードゲームをして自由時間を満喫した。
「お前ら今から仕事の時間だ。作業室に移動しろ」
作業室では本棚や椅子を作る作業を任された。二人糸組で私とシェイラ、アランとヨハン、リックと看守で作業を進めた。
シェイラに教えられながら少しずつ本棚を作っていった。
作業ノルマは一組一つ作り上げることで私達は最後に作業を終わらせた。
作業が終わった人達は自由時間になり、それぞれの時間を過ごしていた。
私とシェイラは途中で終わっていたポーカーの続きをアランを入れてしている。
まだ二人に一度も勝てていない私は試行錯誤を繰り返して作り上げたフルハウスをテーブルに出した。
「残念。フォーカード」
「ストレートフラッシュ」
「……二人共強すぎ」
「いいや、カーラが弱いんだよ」
「カーランも頑張ってるけどまだまだ私には及ばないね」
イカサマでもしてるんじゃないかと疑いたくなる。
なんでフルハウスで勝てないの? しかもストレートフラッシュとか何%で出してんの?
せめてアランには勝ちたい。
次の手札を配って何となくシェイラに聞いてみた。
「ねぇシェイラ、刑務所ってこんなに入り組んでるの?」
「うーん、色んなとこに入れられたけどここは特別分かりにくね。他のところはここまで分かりにくくはなかったかな」
「ここは他のところとどうして違うの?」
「ここのお偉いさんが変わった時に内装も変わったらしいよ。アランは何か知ってる?」
「俺もそれくらいしか知らない。リックならもっと詳しく知ってるんじゃないかな?」
「……やっぱり今日迷ったんでしょ」
「迷ってない」
どれだけの金額がかかったのかな。てゆうか、シェイラは何回捕まったんだろう。
変えるって言っても多分全体的に変えてるよね。なんでそこまでしたんだろう。
それにここにいる囚人は少なすぎる。私を合わせて五人……ここには前まで二人居たって聞いたけどそれでも少ない。
普通二十人以上居てもいいはずだけど。
後でリックに聞きいてみよう。
「カーラ、次だよ」
「えっ! うん」
「大丈夫? 疲れた?」
「大丈夫。少しボーッとしてただけ」
「じゃあ、私から……」
*
夕食後、早々と独房に戻るリックに声をかけた。
するとリックは行き先を図書室に変更して私の話を聞いてくれた。
「あの……なんでここはこんなに入り組んでるんですか? シェイラとアランはお偉いさんが変わったからって言ってたんですけど……」
「そのことか。まぁ間違いではないね」
「でも、他のところとは違う造りなのはどうして」
「それはあれさ。脱獄者を出さないためだよ。元にこれまで脱獄した者は居ないし」
「でもそれは、人数が少なかったからしゃないんですか?」
「違う。本当はもっと人は居た。でも急に大体の人は違う刑務所に移ることになった。それに反発した者達が脱獄を試みたが皆失敗だった。一時期ここはわしとヨハンの二人だけになったがアランとシェイラが別の刑務所から移っできたんだ」
「どうして、そんなに移る人が多かったんですか?」
「それは分からないな」
「……そうですか」
「聞きたいことは以上かな……妙な考えは持たないことが身のためだよ」
「最後に一つだけ。赤眼の幽霊って見たことありますか?」
「見たことは無いね。霊的なものはアランに聞いた方がいい」
そういうとリックは図書室を出ていった。
一人残された私はリックとの会話を整理した。
それからはエリックのことが気になってその日の自由時間はずっと図書室に閉じこもり、本を探した――。
気がつくと私は自分のベットの上にいた。
なんでここに? 記憶が曖昧で分からない。
私は確か……図書室にいて……リックと話してた……本も探してて……寝ちゃたった? 誰かが私を運んでくれたのかな。後でお礼をしなきゃ。
とはいえ、昨夜あんなことがあって熟睡は出来ず仮眠程度の睡眠時間だった。
重い瞼をなんとか開き、自分の独房の掃除を始めた。
昨日の子はなんだったんだろう……もしかしたら私の夢だったのかな。
でも、ハッキリ覚えてる。
エリックという名前も赤眼だったことも優しい笑顔も悲しそうな顔も……なんか悪いことしたな。
あんなに優しいのに……悲しい顔させちゃった。謝りたいな。
どこかにいるかな……また会えるかな。
エリックのことを考えている間に掃除は終わっていた。
「おい、007番掃除が終わったなら早く食堂に行け」
「……はい」
昨日の記憶を頼りに食堂に向かった。
まだ、どこに何があるのかを把握していない私にとってここは迷路に等しい。
入り組んだ廊下、全く意味のない扉、同じような内装の部屋、誰かいないと迷子になりそう。
刑務所はこんなものなのかな……。
やっとの思いで着いた食堂はテレビを見ているアランとシェイラだけだった。
素早く朝食を摂った私は自分の独房に戻ろうとしたが、二人に絡まれてしまった。
「カーラおはよう。遅かったじゃん」
「カーランは迷っちゃったのかなー」
「おはよう……迷ってない。てか何? カーランって」
「ん? あだ名だよ。あだ名」
「シェイラは仲良くしたい人にはあだ名をつけるんだよ」
「そうなんだ」
「だから私はカーランと仲良くしたい。改めてよろしくね」
「昨日のことを反省してるならいいけど」
「反省してるよ。それにここでは唯一の女友達だから」
「……分かったよ」
「やったぁ」
「良かったねカーラ。友達だって」
照れくさくて私は少し頷くことを返事として返した。
これまで友達が少なかった私にとっては嬉しいことだ。
その後、シェイラとはすぐ打ち解けてカードゲームやボードゲームをして自由時間を満喫した。
「お前ら今から仕事の時間だ。作業室に移動しろ」
作業室では本棚や椅子を作る作業を任された。二人糸組で私とシェイラ、アランとヨハン、リックと看守で作業を進めた。
シェイラに教えられながら少しずつ本棚を作っていった。
作業ノルマは一組一つ作り上げることで私達は最後に作業を終わらせた。
作業が終わった人達は自由時間になり、それぞれの時間を過ごしていた。
私とシェイラは途中で終わっていたポーカーの続きをアランを入れてしている。
まだ二人に一度も勝てていない私は試行錯誤を繰り返して作り上げたフルハウスをテーブルに出した。
「残念。フォーカード」
「ストレートフラッシュ」
「……二人共強すぎ」
「いいや、カーラが弱いんだよ」
「カーランも頑張ってるけどまだまだ私には及ばないね」
イカサマでもしてるんじゃないかと疑いたくなる。
なんでフルハウスで勝てないの? しかもストレートフラッシュとか何%で出してんの?
せめてアランには勝ちたい。
次の手札を配って何となくシェイラに聞いてみた。
「ねぇシェイラ、刑務所ってこんなに入り組んでるの?」
「うーん、色んなとこに入れられたけどここは特別分かりにくね。他のところはここまで分かりにくくはなかったかな」
「ここは他のところとどうして違うの?」
「ここのお偉いさんが変わった時に内装も変わったらしいよ。アランは何か知ってる?」
「俺もそれくらいしか知らない。リックならもっと詳しく知ってるんじゃないかな?」
「……やっぱり今日迷ったんでしょ」
「迷ってない」
どれだけの金額がかかったのかな。てゆうか、シェイラは何回捕まったんだろう。
変えるって言っても多分全体的に変えてるよね。なんでそこまでしたんだろう。
それにここにいる囚人は少なすぎる。私を合わせて五人……ここには前まで二人居たって聞いたけどそれでも少ない。
普通二十人以上居てもいいはずだけど。
後でリックに聞きいてみよう。
「カーラ、次だよ」
「えっ! うん」
「大丈夫? 疲れた?」
「大丈夫。少しボーッとしてただけ」
「じゃあ、私から……」
*
夕食後、早々と独房に戻るリックに声をかけた。
するとリックは行き先を図書室に変更して私の話を聞いてくれた。
「あの……なんでここはこんなに入り組んでるんですか? シェイラとアランはお偉いさんが変わったからって言ってたんですけど……」
「そのことか。まぁ間違いではないね」
「でも、他のところとは違う造りなのはどうして」
「それはあれさ。脱獄者を出さないためだよ。元にこれまで脱獄した者は居ないし」
「でもそれは、人数が少なかったからしゃないんですか?」
「違う。本当はもっと人は居た。でも急に大体の人は違う刑務所に移ることになった。それに反発した者達が脱獄を試みたが皆失敗だった。一時期ここはわしとヨハンの二人だけになったがアランとシェイラが別の刑務所から移っできたんだ」
「どうして、そんなに移る人が多かったんですか?」
「それは分からないな」
「……そうですか」
「聞きたいことは以上かな……妙な考えは持たないことが身のためだよ」
「最後に一つだけ。赤眼の幽霊って見たことありますか?」
「見たことは無いね。霊的なものはアランに聞いた方がいい」
そういうとリックは図書室を出ていった。
一人残された私はリックとの会話を整理した。
それからはエリックのことが気になってその日の自由時間はずっと図書室に閉じこもり、本を探した――。
気がつくと私は自分のベットの上にいた。
なんでここに? 記憶が曖昧で分からない。
私は確か……図書室にいて……リックと話してた……本も探してて……寝ちゃたった? 誰かが私を運んでくれたのかな。後でお礼をしなきゃ。
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