1001部隊 ~幻の最強部隊、異世界にて~

鮪鱚鰈

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ゲルマン皇帝ヨハイネバルグ

首都防衛兵団長ローグ②

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「団長!この扉ですね」

「うむ・・・久しく来ていなかった・・ロブライさんを思い出すな」

「ロブライというとリン様のお父様の」

「ああ、俺がまだ新兵学校にいたとき、まだ『死神の鎌』は封印されていなかった」

「確か国宝として飾られていましたね」

「ああ!悪魔ってやつを見たのもそれが最初だったな」

ローグがまだ新平の頃『死神の鎌』は国宝として評議会の中庭に飾られていた

危険もあるので常に首都防衛兵がそれを守る役目を担っていた
ローグも登板でその役目についていたある日の夜

番犬が一斉に吠え出したかと思えば、一斉に静かになる
異変を知らせる声が聞こえたと思ったら、およそ人間の声に聞こえない雄叫びとも悲鳴ともいわれる声が
聞こえた

評議会の裏手を守っていたローグも異変を感じ表に回る、既に異変を感じた防衛兵たちが集まっていた

そこには宙に浮かぶ防衛兵の姿がある口から泡が出ていて息をしていないようだった

「う~ん軟弱な体だ!依り代に向いていない」
泡を吹きながら浮かぶ防衛兵は気を失うかのように地に落ちる

「どうした!おい?」
仲間の問いかけにそいつは答える様子はない、明らかに精神をやられていた

その時魔法士団のロダン団長とロブロイ副長と他魔法士団の精鋭がやってきた
その頃のベルドアの魔法士団と言えば隣国ヴァルハラの魔法部隊にも勝る集団だった

「そこから離れなさい!」
ロダン団長の声に戸惑う俺ら
すぐにその訳が分かった 次から次へを防衛兵が気が狂ったように死んでいく

「ロブロイ急ぐぞ!」

「おう!」

防衛兵団小隊長の様子がおかしくなったと思ったら、小隊長の声とは思えない声で叫びだす
「なんだおぬしら!聖魔導師か・・ククク!」

小隊長の目が赤く光る、手の波動から何かが出たと思ったら前にいた魔法士団の一人が黒く染まりそして絶命する

「親父!早く!」

「ああ、わかっとる!」

ロブロイ副長と魔法士の精鋭が小隊長を詠唱で抑えよう押している

「えええい!先ほどよりましだが、軟弱な体!人間は500年前より弱くなったか!」
小隊長が叫ぶ

その間にも詠唱を唱える魔法士は一人また一人と倒れていく

新兵であった俺はただそれを見ていることしかできなかった

「次は!お前だ!」

小隊長が赤い目で俺を見る
その目を見ていると周りの景色が見えなくなったようだ・・

「いかん!」

ロブロイ副長が俺を突き飛ばした

俺は意識を回復したが何が起きたか、分からなかった

見るとロブロイ副長が苦しんでいる

「邪魔をしおって!いい依り代だが!ええい、おとなしくこの体を渡さぬか!」

「そうはいくか、お前を復活させるわけにはいかないのだ、この命に代えてでも!おやじ~俺事やれ、早くしろ!」

ロブロイ副長は同じ口から違う人物と副長とがしゃべっているようだ

「しかし、ロブロイ、なんということじゃ」

「早くしろ!俺もそろそろ限界だ」

「く!ロブロイ!」

ロダン団長が唱えた詠唱で無数の光の矢がロブロイ副長を突き刺す

「うぎゃ!・・・人間ごときが!・・またしても・・・・しかし、まだだ!まだ死なぬ」

ロブロイ副長の顔が溶けていた、いや溶けたというよりは顔の下から新しい顔が見えていた、その顔は正しく悪魔

「イヤ・・・イヤ・・ロブロイ副長!イヤ!戻ってきて!イヤ~」
まだ魔法士になりたてのカメラか・・・そういえばそこにいたな

「防衛兵たちよ!トドメを刺してやってくれ・・・」
ロブロイが力なく俺たちにいう

「ダメ!ロブロイ副長が悪魔なんかに負けるわけない!ダメ」
カメラが騒ぐ

「カメラ!黙りなさい・・つらいのはお前だけではない、ロブロイの命を無駄にしてはいけない」

「ああああ」
カメラはその場に崩れ落ちた

「さあ!我が士団は既にこの場で動けるものがいない!頼む防衛兵団の方々!」

「しかし」
防衛兵団も当然躊躇する、小隊長が死に、残っているのは俺のような新兵ばかりだ
だが俺は感じていた、俺の中に入ってこようとしたものの恐ろしさを

俺は槍をロブロイ副長に向けて突進する

俺の槍はロブロイの胸を貫いた

「うあああああ!くそが!人間が」

そういうと黒い塊は『死神の鎌』戻っていくように消えていった

俺は震えが止まらずにいた、ロブロイの顔は半分溶けたかのように見えたが、それはあの黒いものと重なっていたからだったようだ
現在は元の精悍な顔つきになっている

そして俺にしだれかかるように倒れてきた
「新兵か?ありがとうな、いい顔つきだ!強くなってこの国を守ってくれよ」

ロブロイは俺の耳元でそうささやいた

「リン・・・・ごめ・・・」

そしてロブロイの体から力が消えた

ロダン団長曰く『死神の鎌』には悪魔の力が封印されている、故に特別な力を持っていた
聖に属するものは決して扱えない、そして今日は狂月、鎌自体の力が弱くなる夜だった
その為鎌に封印されている悪魔がよみがえる可能性がある、来てみれば案の定だった。

我々が遅れたのは聖魔封印の法の会得に時間がかかった為・・間に合いはしたが・・・かけがいのないものを失ってしまった

そしてこの地の地下に封印した、ロダン団長の魔力の半分以上を使っている

防衛兵団は死者5名、内小隊長1名の損害だったが

魔法士団は中心となるロブロイ副長他精鋭が8名死亡し残ったロダン団長も魔力を封印に大きく使うため力は大きく落ちることとなった

それでもロブロイの一人娘リンやあの時のカメラなどが成長し魔法士団の復活は近いように見えたが

ローグの目の前には『死神の鎌』がある
これをあの男に渡してはいけない・・・とんでもないことになりそうだ

聖布に包まれた『死神の鎌』を手に取る、重い、斧戦士や、大検戦士の使う武器よりも重いだろう

「団長・・いいのですか」

「ダメだろう・・・これを渡したら」

その時大きな気配が同じ空間に現れた

「ご苦労様!ローグ君。おかげでロダンの結界が溶けたよ」

「な?ヨハイネ!」

「ふふ、驚いているね、死してなお、結界に力があった、流石はロダン殿ですな」

「ね!おじいちゃんも厄介なもの作ってたね」

「ふふふ、でもね結界の発動条件はこの台にその鎌がある事なのよ・・・ふふ、なにせ私の目の前でロダンは結界をはってましたから」

リンとカメラもいつの間にかにその空間にいる

「まあ、あの時新兵であったあなたがそれを知っているはずもないわね、ローグ」
カメラはきりっとした目で俺を見た

「カメラ・・その鎌は、あのロブロイさんが命を懸けて封印した悪魔がいる。それをこの男にわたしていいのか?」

「あら!ロブロイを殺したのは貴方じゃないの・・お忘れになって?ローグ!」

「しかし・・あれは!」

「ふふふ恨んでなんかないわよ!ロブロイを私は心から愛していたわ、でも彼は私を妹のようにしか扱ってくれなかった・・・いけずよね・・・人間だった私は愛なんかに縛られて愚かだったわ」

「ふーん、お父さんを殺した人なんだ・・・さぞかしお父さんは美味しかった?ローグ?」

「くそ!ヨハイネ!貴様この二人にいったい何を!」

俺は『死神の鎌』を投げ捨て剣を取ろうとする
しかし体が動かない、『死神の鎌』もろとも何かに縛られているようだ

「ふふふローグ君、君を利用させてもらった、それはその鎌をこの台からとる役目だけではないのだよ」

ヨハイネはにやりと笑いながら俺に近づく

「貴様!」

「そう!選ばれたのです、特別に私自ら洗礼してあげましょう!」
ヨハイネは手のひらを俺の額にかぶせる

「貴様何をする気だ!」

「団長!」
団員達も後ろで叫ぶ、俺と同じように動けないようだ


ヨハイネの手は俺の脳みそをかき回すかのようだ、なんだ、覚えがある、あの時の悪魔か・・・そうかヨハイネはやはり悪魔か・・・

何を迷っていた?俺は強くなるんだろう!強くなるのに聖の考えなんて邪魔だ、殺せばいい
何を怖がっていた?魔が怖いなら戦うのではなく魔になればいい・・そんな簡単なことに気づかぬとは

魔は殺せば殺すほど強くなれる、簡単じゃないか、騎士だ戦士だ血のにじむ努力で成長する奴らが哀れである
ただ殺せばいい、ヨハイネ様の世界は素晴らしい秩序、力あるものが無いものを殺す、素晴らしいではないか。



「団長!大丈夫ですか?」

「ガサムか・・ふむ大丈夫だ」
ローグはヨハイネの元を離れるとガサムの元に近づく

「団長?」
感のいいガサムはローグの異変に気付く

「ガサム、私の力になってくれるか?」

「団長?しっかりしてください」

そのとき『死神の鎌』は黒く光りだす

「ほう!私を認めてくれるか死神の鎌よ」

聖布は黒く爛れ崩れ切れる

主を得た鎌は黒く光っていた

「やはりか、一度この鎌の悪魔に入られた男、この男が適応していたか」
ヨハイネがにやりと笑う

「あら?ヨハイネ様が使うのではないのですか?」
カメラが聞く

「ふん、鎌なぞ前時代的な武器には用はないが、鎌に選ばれた男がいる、そう直感がありましてね、そしてその男はいい働きをしてくれそうですから、ふふふ」

ローグはガサムに向けて鎌を振り落とす

動けないガサムは肩口から二つに切り放された

「ううううああああ」

それを見ていたほかの団員は一斉に逃げ出す、体が動かせるようになったからでもある
それは魔法の力で縛っていたカメラの味付けにすぎない

そしてローグの鎌は一振りで残りの4人の胴体と下半身を切り離した


「遅くなりりましたヨハイネ様、ローグこれよりヨハイネ様の配下としてお使いください」
ローグはヨハイネの前にひざまずいた

「あら素敵になったはねローグ」
カメラがローグに口づけをする

「よろしくねローグ!」
リンも同じように口づけしてきた

こうしてヨハイネは新たな腹心を得たのである

















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