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一 沖田総司之章:Heroes
池田屋事件(三)
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木屋町通を行く人々は、おれの浅《あさ》葱《ぎ》色の羽織に驚いて道を開けて、宙を滑る花乃さんに二度驚いて跳びのいた。おかげで足を止めることなく三条通に至ると、高瀬川に架かる橋の向こうに近藤さんたちの姿が見えた。旅館、池田屋の表だ。
おれはわざと足音を立てて、近藤さんたちに駆け寄った。振り返る一瞬だけ、警戒のまなざし。すぐに緊張を緩めた一団は、たった八人しかいない。
「近藤さん、遅くなってごめん。突入する前に追い付いてよかった」
「今にも押し込もうとしていたところだ。相変わらず間合いを読むのが見事だな、総司」
近藤さんは角張った顔をくしゃりと緩めて、大きな口で笑った。それから、おれのすぐそばに降り立った花乃さんに視線を向ける。花乃さんは凛として、近藤さんを見つめ返した。
「花乃と申します。妖退治やったら、お任せください」
近藤さんが曖昧にうなずいた。近藤さんのそばに立つ二番隊組長、永《なが》倉《くら》新《しん》八《ぱち》さんが、もっとわかりやすい表情をしている。つまり、この威勢がよくて少々変わった娘は何者なのかと、好奇心交じりで訝《いぶか》しんでいる。
さて、どう紹介したものか。紹介するというほど、おれも花乃さんのことをよく知らないのだけど。
「さっき偶然、そのあたりの道で会ったんだ。妖堕ちした尊攘派に囲まれてたから、おれと斎藤さんで助太刀を」
「余計な気遣いどしたわ。うちひとりで十分、戦えたんどすえ?」
「まあ、腕が立つことは確かだから、足手まといにはならないと思う。足を引っ張る程度なら、捨て置くだけだしね」
にゃあん、と、おれの肩の上でヤミが賛同する。花乃さんは屹《きっ》と横目でおれをにらんだ。
毬《まり》が弾むような足取りで跳ねて、八番隊組長の藤《とう》堂《どう》平《へい》助《すけ》がおれに体当たりをして、おれの首に腕を回した。
「総司も隅に置けねぇな。今から命懸けの突入だってのに女を引っ掛けてくるとは」
「変な言い方するなって、平助。その子が勝手に付いてきたんだよ」
「ふぅん。やっぱり色男は違うね」
にやにやしてみせる平助だって、目が大きくて華のある顔立ちをしているから、花街の島原に繰り出せば、女たちにずいぶん持てる。小柄なせいもあって、おれと同い年なのに三つも四つも若く見られて、ふてくされることもしばしばだけど。
いや、そんなことはさておき。
「近藤さん、今から突っ込むの? この人数で?」
おれの問いに、うだる暑さの夜気がぴしりと張り詰めた。近藤さんが、切れ上がった目に強い光を宿した。
「中にいる連中はまだ俺たちの動きに気付いていない。人数はおそらく二十数名。不意を突き、屋内の狭さを利用すれば、相手取れないこともない」
「土方さんたちの到着を待つのは?」
「トシたちより先に、尊攘派の増援が到着することも考えられる。長州藩邸は、このすぐ裏手だ」
「なるほどね」
近藤さんがぐるりと全員を見渡した。低く抑えてあっても通る声で告げる。
「今から池田屋への突入作戦を決行する。討ち入るのは俺と永倉、平助、総司の四人だ。ほかの者は入口を固め、一人も逃がすな。多勢に無勢だ。捕縛の余裕はない。敵と見れば、全員、確実に斬れ」
ざわりと背筋が粟《あわ》立《だ》つ。今にも吠えそうな顔でうなずく永倉さんと、大きな目を鋭く尖らせる平助。心地よい興奮に、おれは思わず微笑んだ。
と。
「にゃっ!」
ヤミが悲鳴を上げて、おれの肩にしがみ付いた。二股に分かれた尻尾をひとまとめに、ぎゅっとつかまれている。手の主は、言うまでもなく花乃さんだ。
「うちも行きます。沖田さまと一緒に討ち入りますさかい、よろしゅうお願いします」
目を丸くしたり顔をしかめたりする男たちを、花乃さんは平然と睥《へい》睨《げい》した。皆の視線がおれに集中する。疑問や異論があるなら、花乃さんに直接話し掛ければいいのに。
「まあ、さっきも言ったとおり、この娘、妖が相手だったら腕は立つから。妖じゃない人間相手の場合、どこまで本気の殺意を持てるか、おれにもわからないけどね」
人を斬る覚悟はあるんだねと、言葉の裏で花乃さんに問い掛ける。花乃さんは顎《あご》を引いて、負けん気の強い目をした。どうしても来たいなら、おれは止めない。男だろうが女だろうが子どもだろうが、殺し合いの場では関係ないんだから。
仕切り直して、近藤さんが改めて号令をかけた。
「いざ、突入するッ!」
おうッ、と一同は吠えて応えた。近藤さんが表戸を叩く。鍵の開く音がして、戸が細く開かれる。
「こない遅ぉに、どちらはんどす?」
柔らかな物腰で男が問うた。池田屋の旦那だろうか。その瞬間、戸の脇に控えていた永倉さんが、男を外へ引きずり出した。近藤さんが戸を全開にして、中に叫ぶ。
「新撰組の御用改めであるッ! 無礼すまいぞッ!」
永倉さんに投げ出された男が、ひぃっと悲鳴を上げた。大事な証人だ。こいつは殺さない。戸口の守りを担《にな》う隊士が、またたく間に男を捕縛する。
近藤さんを先頭に、おれたちは池田屋に突入した。わぁっ、と大声を浴びせられる。廊下を走って斬りかかってくる男が三人。
身軽な平助が飛び出した。
「一階は俺に任せろ!」
叫びながら打ち振るう刀が最初の敵を斬り伏せた。平助の隣に踏み込んだ永倉さんが背中で告げる。
「俺も平助と一緒に一階に残る。敵の本隊は上だ。近藤さん、総司、頼んだ!」
「おうッ!」
一声吠えて、近藤さんが狭い階段を駆け上がる。大部屋の襖《ふすま》が開いた。月代《さかやき》の伸びた男が飛び出してきて、刀に手を掛ける。顔が恐怖に歪んでいる。
「し、新撰組だ!」
それが最期の言葉になった。近藤さんは問答無用で男を斬った。絶命した男が階段を転げ落ちる。その死体を跳び越えて、おれは階段を登る。宙に浮いた花乃さんが続く。
登り上がった途端、異様な臭気に鼻を打たれた。
「奥に妖がいるね」
やはり、と近藤さんがうなずく。
「俺はここから先に踏み込めそうにない。敵のうち、環を持たない者も同じだ。部屋から出てくるだろう。俺はそいつらをここで迎え撃つ」
「わかった。妖のほうは、おれに任せて」
言い終わるかどうかのところで、開いた襖からわらわらと男たちが飛び出してきた。おれは刀を抜く。近藤さんがおれの背中を叩く。
「行け、総司! ここは全員、俺が引き受けた!」
おれは、怯《ひる》んだ顔の男に当て身を食らわせて吹っ飛ばして、大部屋に転がり込んだ。ぴったりと花乃さんが付いてくる。背後で、足音と怒号、悲鳴が入り乱れる。
男が五人、爛々《らんらん》と光る目をして立っている。額の赤い環が、その目よりさらに不気味な光を発している。
「少し手強いかもしれまへんえ?」
花乃さんが襷《たすき》を掛けた。うなずきながら、おれは、吐き出す息に血の匂いを嗅いだ。まずい。空気が悪すぎる。暑気と湿気に妖気が混じって、胸の病にひどく障《さわ》る。
おれの肩から下りたヤミが、金色の目でおれを見上げる。おれはかぶりを振った。まだ、おまえの力は必要ない。
部屋に残っていた、環を持たない男たちが全員、小さな窓から飛び降りた。それを見届けてから、環を持つ男の一人が口を開いた。
「桂サンが来るマデ、持ち応えルで。僕らはアキラメん!」
「桂? 長州の変装の名人、逃げの小五郎だっけ。あんたたち、やっぱり尊攘派の長州藩士ってことで間違いないね?」
「幕府の狗《いぬ》ドモは間違っチョル。正しいのは僕らダ! 殺す殺ス殺ス!」
細長い形をした町屋の大部屋が、ぐにゃりと平坦に広がる。近藤さんは力場に呑まれずに済んだだろうか。平助たちは妖気に当てられていないか。不安がある。不安を消すには、目の前の敵を消すしかない。
五人の妖の志士たちが変《へん》化《げ》する。肉体が形を失った。腕が胴体に呑まれる。首が肩ほどに太くなる。左右の脚がくっついて、頭から足の先まで、のっぺりと凹凸のない筒になる。
五つの筒がばたりばたりと倒れて、のたうちながらつながっていく。人間の柔らかい皮膚が剥《は》がれ落ちた。みしみしと音を立てて、赤黒い鱗が生えそろう。
蛇だ。一体の大蛇が鎌首をもたげて、おれたちを見下ろした。何かを叫ぶように、蛇は大口を開けて喉を鳴らす。先の割れた舌がうごめく。
「趣味が悪いね。あんなふうにはなりたくないな」
独り言《ご》ちて、身構える。ちょっと厄介な敵だ。四肢のある獣ならまだしも、蛇が相手じゃ動きが読みづらい。だったら、どうするか。黙って出方を待つのは、おれの流儀じゃない。
切っ先を下げた構えのまま、おれは唐突に飛び込んだ。蛇の喉だか胸だかわからないあたりに、一閃。
十分に踏み込んだつもりが浅かった。あるいは、滑って逃げる蛇のほうが素早かったのか。手応えが弱い。鱗が硬い。舌打ちした、その刹《せつ》那《な》。
真横から打たれた。
とっさに体を縮める。自分を打ったのが蛇の尾だと、視界の隅に確認した。床に叩き付けられて、受け身を取って跳ね起きる。怪我はない。痛みも大したことはない。
おれは再び飛び出そうとした。できなかった。
肺腑のどこかが、ぐちゃりと音を立ててよじれた。
上がってきた咳を抑えられない。体を折って咳き込む。よじれたままの肺腑が痛んで、咳と一緒に血が、おれの口から飛び出した。震える手が刀を取り落とす。
「沖田さま!?」
花乃さんが駆け寄ってくる。いけない。隙だらけで二人固まっていては、狙ってくれと言うのと同じだ。
蛇がとぐろを巻く。花乃さんがおれの前に立ちはだかった。印を結ぶ背中。蛇がこちらへ向けて跳躍する。はッ、と花乃さんが気迫を発する。
足下から滝が噴き上がった。次の瞬間、滝が凍った。
蛇が、凍った滝に激突する。氷は蛇を弾き返した。うっすら透ける向こう側で、蛇が引っ繰り返ってのたうつ。
凍った滝は、おれと花乃さんとヤミを中心に、ぐるりと四周を囲んでいる。冷やされた空気が肺腑に優しい。
「時間稼ぎに過ぎひんわ。沖田さま、薬か何か持ってはらへんのどすか?」
花乃さんは早口で言って、おれの背中をさすろうとした。大丈夫、と制するおれの手は、吐いた血で真っ赤に染まっている。情けない。どうせ血に染まるなら、敵の返り血がいい。
ヤミがおれに体をすり寄せた。おれはヤミを抱き上げる。
おいで。
念じた瞬間、胸にまっすぐ、ずるりと黒猫の体が染み込んできた。全身の血が騒ぐ。右手の甲の環が燃える。疼《うず》く頭から耳が、尻に二股の尾が生える。目も耳も鼻も冴える。体が軽い。肺腑の痛みが消える。
おれは刀を拾って立ち上がった。
「迷惑かけたね」
微笑むと、花乃さんは息を呑んだ。
「沖田さま、その目……その姿……!」
この目は今、ヤミと同じ金色に変じて、瞳が縦に開いているはずだ。笑えば、唇から牙がこぼれる。おれは尻尾を振って、つやつやした毛並みの耳を動かしてみせた。
「おれは胸を病んでてね。労《ろう》咳《がい》だよ。熱が出たり咳が出たりして起きられない日がたまにあるんだけど、黒猫には労咳を鎮める力があるからって土方さんがヤミを拾ってきて以来、こうしていつでも自由に動けるようになった」
「猫又の力を、体の内に取り込んではるの?」
「たぶんそんな感じ。おれも細かいことはわかんないや。ちゃんと動いて戦える力が手に入るなら、何でもいいんだ」
どすんと震動が起こる。蛇が氷の壁に体当たりした。壁にひびが走る。時間はあまりないらしい。
「壁が破られたら、うちがあの蛇を足止めします。沖田さまは、切り刻んだってください」
「了解。いきなりけちが付いちまったぶんは、きっちり取り返さないとね」
また蛇が、どすんと壁にぶつかってくる。ひびが広がる。
いつでも来い。おれは腰をためて身構えた。
氷の壁が破れる。
降り注ぐ氷片の中を、おれは駆ける。蛇の胴体を踏み台に跳躍して、狙うは頭。まぶたのない目に、刀の切っ先を突き入れる。蛇が、かすれた音で絶叫した。
のたうつ尾を避けて跳ぶ。隙を見ては斬り付ける。おれが使う天《てん》然《ねん》理《り》心《しん》流《りゅう》は、何でもござれの喧嘩剣術だ。型破りな体勢から斬撃を繰り出せば、虚を突かれた蛇が怯《ひる》む。
「中途半端に人間の理性が残ってるみたいだね。だから、おれの動きに惑わされるんだ」
花乃さんが印を結んで、力を解放した。白い霧が蛇の体にまとわり付く。胴の一部が霜《しも》に覆われて、明らかに動きが鈍る。
「蛇は冬には出てきぃひん。冷やっこいんは苦手どっしゃろ?」
花乃さんは、蛇に容赦なく水を、次いで冷気を浴びせる。蛇の鱗が凍る。逃げようとする蛇は、しかし遅い。
片目の蛇が花乃さんを威《い》嚇《かく》する。巨大な口から先割れの舌がのぞいた瞬間、おれはそいつを斬り払った。血しぶきが飛ぶ。
「よそ見するなよ。おれが相手してやるからさ」
もたげた鎌首の真下に入り込んで斬り上げる。鱗を突き破って、血管を裂く手応え。生臭い返り血。
傷を押して反撃に転じた蛇の頭が、おれが迎え撃つより先に、がくんと止まる。足下から噴き上がった水柱に、頭だけ突っ込んだ格好だ。水之戒から逃れようと、首から下がじたばたと動き回る。
「あら、見苦しい。暴れんといてくれはる?」
五本の水柱が一斉に噴き上がる。うねったままの格好で、蛇が留め付けられた。
「お見事」
「長ぉは持ちまへん。さっさと切り刻みよし」
「了解」
首を刎《は》ねる。喉元から刀を突き立てて、心臓のありそうな一帯を縦に裂く。骨ごと一気に臓器を潰していく。蛇の体に、びくびくと硬直が走る。噴き出す血に、おれも水柱も赤く染まる。
生命を破壊していく感触。背筋を駆け抜ける興奮。右手の甲で環が熱を持つ。妖の狂気に酔い痴れる一歩手前で、おれは刀を振るっている。
並の刀なら、とっくになまくらになっているだろう。おれの刀は違う。いや、もとは並の刀だったはずが、いつしか妖気が乗り移ったらしい。斬っても斬っても、決して刃こぼれしない。
得意の刺突の一撃で終わる試合も好きだ。でも、たまにこうして遠慮なく妖を切り刻むのも、くたびれるけど楽しい。
もとは五人の妖の志士だった蛇は、十以上の肉塊に成り果てて、まだ動いている。花乃さんは、一つを除いて、水柱を消し去った。もがき続ける頭だけ、水之戒から解き放たれない。
「ほな、終わらせましょか」
おちょぼ口が歌うように言って、細い指が印を結んだ。ぱしんと打ち合わされる二つの手のひら。水柱が凍って、そしてばらばらに砕け散った。凍ったままの蛇の頭も、もろともに。
唐突に暗がりが訪れた。行灯《あんどん》が倒れて、火が消えている。
蒸し暑さに包まれた。夏の京都の町屋の二階。乱闘の痕跡。血みどろの死体。動く気配は、おれと花乃さんだけ。
おれは刀を提げたまま、聞き耳を立てた。おれ自身よりずっと鋭いヤミの聴覚が、階下の声を聞き分ける。
平助と永倉さんを呼ぶ声がする。土方さんの声だ。平助と永倉さんがそれに応じる。怪我をしている。でも、命の危険はないらしい。
階段を駆け上がってくる、ほとんど響かない足音。あれは間違いなく、斎藤さんだ。果たして、近藤さんの無事を確認する斎藤さんの声がする。
おれは刀を鞘に収めた。険しい表情を崩さない花乃さんに、笑顔を向ける。
「もう大丈夫。新撰組の増援が来たから。ほら」
襖《ふすま》を蹴破って、斎藤さんと土方さんが部屋に飛び込んできた。二人ともちょっと遅いよ、と憎まれ口を言ってやろうかと思った途端、ずるりと、おれの胸からヤミが転がり落ちた。
途端に体が重くなる。肺腑にたまっていた血が一気に込み上げて、喉が塞がった。うずくまって咳き込むうちに、頭が真っ白になっていく。背中をさする男の手は、斎藤さんか土方さんか。
せっかく手柄を立てたのにな。最後まで体が持たないんじゃ、格好が付かないよ。
そっと苦笑いした意識はそのまま、溶け落ちるように闇に沈んだ。
たくさん刀を振るって疲れた後に見る夢は、いつも、何もない。ただ静かな闇だ。
おれはわざと足音を立てて、近藤さんたちに駆け寄った。振り返る一瞬だけ、警戒のまなざし。すぐに緊張を緩めた一団は、たった八人しかいない。
「近藤さん、遅くなってごめん。突入する前に追い付いてよかった」
「今にも押し込もうとしていたところだ。相変わらず間合いを読むのが見事だな、総司」
近藤さんは角張った顔をくしゃりと緩めて、大きな口で笑った。それから、おれのすぐそばに降り立った花乃さんに視線を向ける。花乃さんは凛として、近藤さんを見つめ返した。
「花乃と申します。妖退治やったら、お任せください」
近藤さんが曖昧にうなずいた。近藤さんのそばに立つ二番隊組長、永《なが》倉《くら》新《しん》八《ぱち》さんが、もっとわかりやすい表情をしている。つまり、この威勢がよくて少々変わった娘は何者なのかと、好奇心交じりで訝《いぶか》しんでいる。
さて、どう紹介したものか。紹介するというほど、おれも花乃さんのことをよく知らないのだけど。
「さっき偶然、そのあたりの道で会ったんだ。妖堕ちした尊攘派に囲まれてたから、おれと斎藤さんで助太刀を」
「余計な気遣いどしたわ。うちひとりで十分、戦えたんどすえ?」
「まあ、腕が立つことは確かだから、足手まといにはならないと思う。足を引っ張る程度なら、捨て置くだけだしね」
にゃあん、と、おれの肩の上でヤミが賛同する。花乃さんは屹《きっ》と横目でおれをにらんだ。
毬《まり》が弾むような足取りで跳ねて、八番隊組長の藤《とう》堂《どう》平《へい》助《すけ》がおれに体当たりをして、おれの首に腕を回した。
「総司も隅に置けねぇな。今から命懸けの突入だってのに女を引っ掛けてくるとは」
「変な言い方するなって、平助。その子が勝手に付いてきたんだよ」
「ふぅん。やっぱり色男は違うね」
にやにやしてみせる平助だって、目が大きくて華のある顔立ちをしているから、花街の島原に繰り出せば、女たちにずいぶん持てる。小柄なせいもあって、おれと同い年なのに三つも四つも若く見られて、ふてくされることもしばしばだけど。
いや、そんなことはさておき。
「近藤さん、今から突っ込むの? この人数で?」
おれの問いに、うだる暑さの夜気がぴしりと張り詰めた。近藤さんが、切れ上がった目に強い光を宿した。
「中にいる連中はまだ俺たちの動きに気付いていない。人数はおそらく二十数名。不意を突き、屋内の狭さを利用すれば、相手取れないこともない」
「土方さんたちの到着を待つのは?」
「トシたちより先に、尊攘派の増援が到着することも考えられる。長州藩邸は、このすぐ裏手だ」
「なるほどね」
近藤さんがぐるりと全員を見渡した。低く抑えてあっても通る声で告げる。
「今から池田屋への突入作戦を決行する。討ち入るのは俺と永倉、平助、総司の四人だ。ほかの者は入口を固め、一人も逃がすな。多勢に無勢だ。捕縛の余裕はない。敵と見れば、全員、確実に斬れ」
ざわりと背筋が粟《あわ》立《だ》つ。今にも吠えそうな顔でうなずく永倉さんと、大きな目を鋭く尖らせる平助。心地よい興奮に、おれは思わず微笑んだ。
と。
「にゃっ!」
ヤミが悲鳴を上げて、おれの肩にしがみ付いた。二股に分かれた尻尾をひとまとめに、ぎゅっとつかまれている。手の主は、言うまでもなく花乃さんだ。
「うちも行きます。沖田さまと一緒に討ち入りますさかい、よろしゅうお願いします」
目を丸くしたり顔をしかめたりする男たちを、花乃さんは平然と睥《へい》睨《げい》した。皆の視線がおれに集中する。疑問や異論があるなら、花乃さんに直接話し掛ければいいのに。
「まあ、さっきも言ったとおり、この娘、妖が相手だったら腕は立つから。妖じゃない人間相手の場合、どこまで本気の殺意を持てるか、おれにもわからないけどね」
人を斬る覚悟はあるんだねと、言葉の裏で花乃さんに問い掛ける。花乃さんは顎《あご》を引いて、負けん気の強い目をした。どうしても来たいなら、おれは止めない。男だろうが女だろうが子どもだろうが、殺し合いの場では関係ないんだから。
仕切り直して、近藤さんが改めて号令をかけた。
「いざ、突入するッ!」
おうッ、と一同は吠えて応えた。近藤さんが表戸を叩く。鍵の開く音がして、戸が細く開かれる。
「こない遅ぉに、どちらはんどす?」
柔らかな物腰で男が問うた。池田屋の旦那だろうか。その瞬間、戸の脇に控えていた永倉さんが、男を外へ引きずり出した。近藤さんが戸を全開にして、中に叫ぶ。
「新撰組の御用改めであるッ! 無礼すまいぞッ!」
永倉さんに投げ出された男が、ひぃっと悲鳴を上げた。大事な証人だ。こいつは殺さない。戸口の守りを担《にな》う隊士が、またたく間に男を捕縛する。
近藤さんを先頭に、おれたちは池田屋に突入した。わぁっ、と大声を浴びせられる。廊下を走って斬りかかってくる男が三人。
身軽な平助が飛び出した。
「一階は俺に任せろ!」
叫びながら打ち振るう刀が最初の敵を斬り伏せた。平助の隣に踏み込んだ永倉さんが背中で告げる。
「俺も平助と一緒に一階に残る。敵の本隊は上だ。近藤さん、総司、頼んだ!」
「おうッ!」
一声吠えて、近藤さんが狭い階段を駆け上がる。大部屋の襖《ふすま》が開いた。月代《さかやき》の伸びた男が飛び出してきて、刀に手を掛ける。顔が恐怖に歪んでいる。
「し、新撰組だ!」
それが最期の言葉になった。近藤さんは問答無用で男を斬った。絶命した男が階段を転げ落ちる。その死体を跳び越えて、おれは階段を登る。宙に浮いた花乃さんが続く。
登り上がった途端、異様な臭気に鼻を打たれた。
「奥に妖がいるね」
やはり、と近藤さんがうなずく。
「俺はここから先に踏み込めそうにない。敵のうち、環を持たない者も同じだ。部屋から出てくるだろう。俺はそいつらをここで迎え撃つ」
「わかった。妖のほうは、おれに任せて」
言い終わるかどうかのところで、開いた襖からわらわらと男たちが飛び出してきた。おれは刀を抜く。近藤さんがおれの背中を叩く。
「行け、総司! ここは全員、俺が引き受けた!」
おれは、怯《ひる》んだ顔の男に当て身を食らわせて吹っ飛ばして、大部屋に転がり込んだ。ぴったりと花乃さんが付いてくる。背後で、足音と怒号、悲鳴が入り乱れる。
男が五人、爛々《らんらん》と光る目をして立っている。額の赤い環が、その目よりさらに不気味な光を発している。
「少し手強いかもしれまへんえ?」
花乃さんが襷《たすき》を掛けた。うなずきながら、おれは、吐き出す息に血の匂いを嗅いだ。まずい。空気が悪すぎる。暑気と湿気に妖気が混じって、胸の病にひどく障《さわ》る。
おれの肩から下りたヤミが、金色の目でおれを見上げる。おれはかぶりを振った。まだ、おまえの力は必要ない。
部屋に残っていた、環を持たない男たちが全員、小さな窓から飛び降りた。それを見届けてから、環を持つ男の一人が口を開いた。
「桂サンが来るマデ、持ち応えルで。僕らはアキラメん!」
「桂? 長州の変装の名人、逃げの小五郎だっけ。あんたたち、やっぱり尊攘派の長州藩士ってことで間違いないね?」
「幕府の狗《いぬ》ドモは間違っチョル。正しいのは僕らダ! 殺す殺ス殺ス!」
細長い形をした町屋の大部屋が、ぐにゃりと平坦に広がる。近藤さんは力場に呑まれずに済んだだろうか。平助たちは妖気に当てられていないか。不安がある。不安を消すには、目の前の敵を消すしかない。
五人の妖の志士たちが変《へん》化《げ》する。肉体が形を失った。腕が胴体に呑まれる。首が肩ほどに太くなる。左右の脚がくっついて、頭から足の先まで、のっぺりと凹凸のない筒になる。
五つの筒がばたりばたりと倒れて、のたうちながらつながっていく。人間の柔らかい皮膚が剥《は》がれ落ちた。みしみしと音を立てて、赤黒い鱗が生えそろう。
蛇だ。一体の大蛇が鎌首をもたげて、おれたちを見下ろした。何かを叫ぶように、蛇は大口を開けて喉を鳴らす。先の割れた舌がうごめく。
「趣味が悪いね。あんなふうにはなりたくないな」
独り言《ご》ちて、身構える。ちょっと厄介な敵だ。四肢のある獣ならまだしも、蛇が相手じゃ動きが読みづらい。だったら、どうするか。黙って出方を待つのは、おれの流儀じゃない。
切っ先を下げた構えのまま、おれは唐突に飛び込んだ。蛇の喉だか胸だかわからないあたりに、一閃。
十分に踏み込んだつもりが浅かった。あるいは、滑って逃げる蛇のほうが素早かったのか。手応えが弱い。鱗が硬い。舌打ちした、その刹《せつ》那《な》。
真横から打たれた。
とっさに体を縮める。自分を打ったのが蛇の尾だと、視界の隅に確認した。床に叩き付けられて、受け身を取って跳ね起きる。怪我はない。痛みも大したことはない。
おれは再び飛び出そうとした。できなかった。
肺腑のどこかが、ぐちゃりと音を立ててよじれた。
上がってきた咳を抑えられない。体を折って咳き込む。よじれたままの肺腑が痛んで、咳と一緒に血が、おれの口から飛び出した。震える手が刀を取り落とす。
「沖田さま!?」
花乃さんが駆け寄ってくる。いけない。隙だらけで二人固まっていては、狙ってくれと言うのと同じだ。
蛇がとぐろを巻く。花乃さんがおれの前に立ちはだかった。印を結ぶ背中。蛇がこちらへ向けて跳躍する。はッ、と花乃さんが気迫を発する。
足下から滝が噴き上がった。次の瞬間、滝が凍った。
蛇が、凍った滝に激突する。氷は蛇を弾き返した。うっすら透ける向こう側で、蛇が引っ繰り返ってのたうつ。
凍った滝は、おれと花乃さんとヤミを中心に、ぐるりと四周を囲んでいる。冷やされた空気が肺腑に優しい。
「時間稼ぎに過ぎひんわ。沖田さま、薬か何か持ってはらへんのどすか?」
花乃さんは早口で言って、おれの背中をさすろうとした。大丈夫、と制するおれの手は、吐いた血で真っ赤に染まっている。情けない。どうせ血に染まるなら、敵の返り血がいい。
ヤミがおれに体をすり寄せた。おれはヤミを抱き上げる。
おいで。
念じた瞬間、胸にまっすぐ、ずるりと黒猫の体が染み込んできた。全身の血が騒ぐ。右手の甲の環が燃える。疼《うず》く頭から耳が、尻に二股の尾が生える。目も耳も鼻も冴える。体が軽い。肺腑の痛みが消える。
おれは刀を拾って立ち上がった。
「迷惑かけたね」
微笑むと、花乃さんは息を呑んだ。
「沖田さま、その目……その姿……!」
この目は今、ヤミと同じ金色に変じて、瞳が縦に開いているはずだ。笑えば、唇から牙がこぼれる。おれは尻尾を振って、つやつやした毛並みの耳を動かしてみせた。
「おれは胸を病んでてね。労《ろう》咳《がい》だよ。熱が出たり咳が出たりして起きられない日がたまにあるんだけど、黒猫には労咳を鎮める力があるからって土方さんがヤミを拾ってきて以来、こうしていつでも自由に動けるようになった」
「猫又の力を、体の内に取り込んではるの?」
「たぶんそんな感じ。おれも細かいことはわかんないや。ちゃんと動いて戦える力が手に入るなら、何でもいいんだ」
どすんと震動が起こる。蛇が氷の壁に体当たりした。壁にひびが走る。時間はあまりないらしい。
「壁が破られたら、うちがあの蛇を足止めします。沖田さまは、切り刻んだってください」
「了解。いきなりけちが付いちまったぶんは、きっちり取り返さないとね」
また蛇が、どすんと壁にぶつかってくる。ひびが広がる。
いつでも来い。おれは腰をためて身構えた。
氷の壁が破れる。
降り注ぐ氷片の中を、おれは駆ける。蛇の胴体を踏み台に跳躍して、狙うは頭。まぶたのない目に、刀の切っ先を突き入れる。蛇が、かすれた音で絶叫した。
のたうつ尾を避けて跳ぶ。隙を見ては斬り付ける。おれが使う天《てん》然《ねん》理《り》心《しん》流《りゅう》は、何でもござれの喧嘩剣術だ。型破りな体勢から斬撃を繰り出せば、虚を突かれた蛇が怯《ひる》む。
「中途半端に人間の理性が残ってるみたいだね。だから、おれの動きに惑わされるんだ」
花乃さんが印を結んで、力を解放した。白い霧が蛇の体にまとわり付く。胴の一部が霜《しも》に覆われて、明らかに動きが鈍る。
「蛇は冬には出てきぃひん。冷やっこいんは苦手どっしゃろ?」
花乃さんは、蛇に容赦なく水を、次いで冷気を浴びせる。蛇の鱗が凍る。逃げようとする蛇は、しかし遅い。
片目の蛇が花乃さんを威《い》嚇《かく》する。巨大な口から先割れの舌がのぞいた瞬間、おれはそいつを斬り払った。血しぶきが飛ぶ。
「よそ見するなよ。おれが相手してやるからさ」
もたげた鎌首の真下に入り込んで斬り上げる。鱗を突き破って、血管を裂く手応え。生臭い返り血。
傷を押して反撃に転じた蛇の頭が、おれが迎え撃つより先に、がくんと止まる。足下から噴き上がった水柱に、頭だけ突っ込んだ格好だ。水之戒から逃れようと、首から下がじたばたと動き回る。
「あら、見苦しい。暴れんといてくれはる?」
五本の水柱が一斉に噴き上がる。うねったままの格好で、蛇が留め付けられた。
「お見事」
「長ぉは持ちまへん。さっさと切り刻みよし」
「了解」
首を刎《は》ねる。喉元から刀を突き立てて、心臓のありそうな一帯を縦に裂く。骨ごと一気に臓器を潰していく。蛇の体に、びくびくと硬直が走る。噴き出す血に、おれも水柱も赤く染まる。
生命を破壊していく感触。背筋を駆け抜ける興奮。右手の甲で環が熱を持つ。妖の狂気に酔い痴れる一歩手前で、おれは刀を振るっている。
並の刀なら、とっくになまくらになっているだろう。おれの刀は違う。いや、もとは並の刀だったはずが、いつしか妖気が乗り移ったらしい。斬っても斬っても、決して刃こぼれしない。
得意の刺突の一撃で終わる試合も好きだ。でも、たまにこうして遠慮なく妖を切り刻むのも、くたびれるけど楽しい。
もとは五人の妖の志士だった蛇は、十以上の肉塊に成り果てて、まだ動いている。花乃さんは、一つを除いて、水柱を消し去った。もがき続ける頭だけ、水之戒から解き放たれない。
「ほな、終わらせましょか」
おちょぼ口が歌うように言って、細い指が印を結んだ。ぱしんと打ち合わされる二つの手のひら。水柱が凍って、そしてばらばらに砕け散った。凍ったままの蛇の頭も、もろともに。
唐突に暗がりが訪れた。行灯《あんどん》が倒れて、火が消えている。
蒸し暑さに包まれた。夏の京都の町屋の二階。乱闘の痕跡。血みどろの死体。動く気配は、おれと花乃さんだけ。
おれは刀を提げたまま、聞き耳を立てた。おれ自身よりずっと鋭いヤミの聴覚が、階下の声を聞き分ける。
平助と永倉さんを呼ぶ声がする。土方さんの声だ。平助と永倉さんがそれに応じる。怪我をしている。でも、命の危険はないらしい。
階段を駆け上がってくる、ほとんど響かない足音。あれは間違いなく、斎藤さんだ。果たして、近藤さんの無事を確認する斎藤さんの声がする。
おれは刀を鞘に収めた。険しい表情を崩さない花乃さんに、笑顔を向ける。
「もう大丈夫。新撰組の増援が来たから。ほら」
襖《ふすま》を蹴破って、斎藤さんと土方さんが部屋に飛び込んできた。二人ともちょっと遅いよ、と憎まれ口を言ってやろうかと思った途端、ずるりと、おれの胸からヤミが転がり落ちた。
途端に体が重くなる。肺腑にたまっていた血が一気に込み上げて、喉が塞がった。うずくまって咳き込むうちに、頭が真っ白になっていく。背中をさする男の手は、斎藤さんか土方さんか。
せっかく手柄を立てたのにな。最後まで体が持たないんじゃ、格好が付かないよ。
そっと苦笑いした意識はそのまま、溶け落ちるように闇に沈んだ。
たくさん刀を振るって疲れた後に見る夢は、いつも、何もない。ただ静かな闇だ。
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