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第20話 恋愛と約束
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千佳はすぐに立ち上がると、残りの2人を睨む。予想していなかった展開に俺は少し戸惑っていた。
「な、なんなんだ。そいつの仲間か?」
「うーん、強いて言うなら弱い者の味方?」
何もできなかった俺の胸が痛む。彼女はハッタリじゃなく、本当に打開出来る力がある。
情け無い……。
今思い返せば、いつも千佳に助けられている。
「来ないの? 早くしないと警察来ちゃうと思うんだけど?」
彼女は2人を煽る。
「女だから油断していた所を、偶然上手くいったからっていい気になるなよ?」
1人の男が千佳に殴りかかろうとする。
千佳は、腰を捻りまた外側に逃げる。その瞬間に顎を鋭く掌で打った。
脳を揺らされた男は、膝を落とすとそのまま顎を掴み倒し、股間に一撃を入れると男は動かなくなった。
正直恐怖すら覚える鮮やかな技。
その瞬間、もう1人の男が蹴りを繰り出す。慌てて声を出そうとするも、声がでない。
だが、彼女は蹴りに合わせる様に膝に掌手を突き立て膝を折る。そしてすぐに起き上がり溝落ちを蹴り上げ、男は倒れた。
一瞬にして3人……それも千佳より遥かに身体の大きな男ばかりを倒す。
「千佳……」
「あー、無事……ではないか……」
「いや、助かったよ」
そう言うと、千佳はボロボロになっている俺に肩を貸す。
「何? 純にカッコいい所でも見せようと思ったの?」
「いや、切り抜けるにはこうするしか無いかなって……」
立ち上がり、足を引き摺る俺の元に清水さんが警察を連れて走ってくるのが見えた。
「千佳、長坂くん、大丈夫?」
「あたしは大丈夫だけど、優は立つのがやっとって感じかな?」
そう言うと、警察官が駆け寄る。
「彼女から襲われたと聞いていたが、どうゆう状況なんだ……」
「それは……」
千佳がそう言いかけると、俺は咄嗟に言った。
「俺がやりました……」
「優……」
千佳は驚いた様な顔をする。俺は晴れた顔で千佳に笑顔でかえす。正直これくらいしか出来ない。殴られている俺なら多少は見逃してくれるだろうと楽観的に考えた。
後で文句を言われてもいい。ただ、ここまで千佳に背負ってもらうわけにはいかない。
「やりましたって、君も大分やられているじゃ無いか……」
「まぁ……そうっすね」
警察は困った様にそう言うと、とりあえず彼らと俺たちは警察署に向かう事になった。
向かう途中、千佳は俺に言った。
「なんで、あんな事言ったのよ?」
「あー、俺がしたって事?」
「別に、あたしが好きでやってるんだし……」
フェードアウトする様に千佳の声が小さくなる。
「俺が何も出来なかったから」
「助けてたじゃん?」
「俺的には何もしてない。出来てない……千佳に頼りっぱなしだよ……」
痛む足をさすり、自転車に乗る。
「そんな理由で?」
「結構大きな理由なんですけど?」
そう言うと、清水さんも口を挟む。
「本当は千佳が倒したって聞いてびっくりしたよ」
「まぁ、あたしは小さい頃から護身術……の空手みたいなのをやってたからね……」
「空手って、フルコンでもあんな技無いだろ?」
「だからみたいなのって言ってるじゃん」
千佳の言っている空手は、多分俺が聞いたこともない様なもっと武術的な物なのだと思った。
「でも……優。ありがとね」
「なんだよ急に……」
「あんまり一般人に、技を使うのは良くないから……優が言ってくれた時──」
そうだろうと思った。
世間的にどうなのかはわからないけど、格闘技を習っている人が普段、それを使うのは問題があると聞いたことがある。
だから……俺はそれでいいと思う。
ほんの少しでも、千佳に返せたら。あまり良くは思ってはくれないのだろうけど。
警察署では、色々と聞かれた。
「なるほど……真犯人を吐かせる為にねぇ……もうちょっと警察を信用してほしい所だけど、理由は分かった」
「それじゃ……」
「まぁ、攻撃の正当性はあるだろうけど、相手次第かなぁ……」
帰ったはずのカズアキも実は千佳に抑えられていて、捕まっていた。彼に関しては大した怪我はしてなかったのだが、通り魔の犯人として多分捕まると警察は言った。
のこりの3人は色々と重症だった事もあり、相手次第では裁判になるかもしれないのだそうだ。
だが、奴らは何故か千佳にやられたとは言わず、俺の言った事を認める形になった。
正直面倒くさい事になってしまった訳なのだけど、比較的マシな内容で落ち着いた様に思えた。
だが、俺は打撲が酷かったせいか次の日高熱が出て、学校とバイトを休んだ。
──それから2日後。
学校では、顔が腫れている事は、階段から落ちた事にする事にした。心配はされたもののそれ以上深くは聞かれなかった。
そして、浅井さんが復活して明日から登校するのだと聞いた。
その日の放課後。
俺たちはまたカフェに集まる。
なんとなく普段の生活が少し物足りない様に感じたのは、あれだけの事があったからなのだろう。
俺はあの日の事を早く2人と話したくて、多分2人もそう思っているのだろうと思った。
「なんか変な感じだよねー!」
集まってすぐに千佳はそう言った。ついこないだまで仲が良かった訳じゃない。強いて言うなら悪かったと言えるだろう。
「でも、2人のおかげで解決出来たよ」
「浅井さんも大丈夫なんだって?」
「うん、傷も殆ど残らないみたい」
「まぁ、でも事件だったよな……」
楽しむ様な事はない。でも、そのおかげで2人と思い出というか、絆の様なものが出来た気もする。
「ところでさ、純は優の事どう思ってるの?」
千佳はいつもどおり、予想しなかった事を口にする。
「どうって……悪くは無いけど」
「じゃあ、きになる所もあるんだ?」
「どうして長坂くんの前でいうの……」
以前みたいな、誘惑してくる様な雰囲気はない。どちらかと言うとガチな反応に俺も戸惑ってしまう。
「だって、手繋いで仲良さそうだったじゃん? 可能性あるのかなーって」
「でも、長坂くんは……」
清水さんはそこまで言うと黙ってしまう。
「優はどうなの?」
「どうって……かわいいとは思うけど」
「かわいいよねー、一緒に遊びに行ったりしても楽しいかもよ?」
別に、今の清水さんは嫌いじゃない。どちらかと言うと、性格なんかも分かってきた事もあってか自然に一緒にいられるタイプだと思う。
それと、抜群のルックス。
正直、拒否する様な理由はない。
だけど……俺の中ではどこかもやもやする部分があって素直に付き合うとかは考えられななかった。
そんな中、千佳がトイレに行くと清水さんは言った。浅井さんと行った時はどこか恐怖を覚えたのだけど、今回は違った。
「ねぇ、長坂くんはなんで一緒に来てくれたの?」
「そりゃ、千佳が言うから……」
「私の事は?」
「まぁ。最初は苦手だったけど、今はそんな事ないぜ?」
清水さんは少し寂しそうに笑うと、落ち着いた声で言う。
「私と、キスできる?」
「はぁ? いや、キスって……」
「できる?」
正直、動揺した。
色々な事が頭を回り、答えをだす。
「贅沢……すね」
「なにそれ?」
「まぁ、清水さんかわいいし? でもなんか……」
「うーん、じゃあ千佳は?」
「なんで千佳がでてくるんだよ!」
俺は慌てて叫んだ。正直なんで叫んだのかもよくわからないけど、清水さんは言った。
「そう言う事だと思うよ……」
清水さんの言いたい事は分かった。多分俺はそういう事なんだ。
間違った事を叱ってくれて。
困った時はそばに居た。
一緒に悩んで、本気で考えてくれて。
手を差し伸べて助けてくれる。
そういう事と言った、清水さんの言葉がこれほどまでにしっくり来るのはそうなのだろう。
俺は、千佳が……。
「なーにはなしてんの?」
「いや、なんか普通に仲良くなったなって……」
「うんうん」
「じゃあ、2人にはあたしの恋も応援してもらおっかな?」
そうだ、俺は何を考えて。
千佳には好きな人が居る。初めから知っていたはずなのに、お人好しなだけだと知って居たのに。
「えっ? 千佳は好きな人いるの?」
「うん、優とお互い恋を応援するって約束してたんだけど、2人がいい感じなんだもん」
清水さんは驚いた様に俺を見る。
それをみて、俺はコクリと頷いた。
「清水さんといい感じかは置いといて、千佳を応援するよ! どうすればいい?」
俺は、そう言って気持ちの蓋を閉じた。
「な、なんなんだ。そいつの仲間か?」
「うーん、強いて言うなら弱い者の味方?」
何もできなかった俺の胸が痛む。彼女はハッタリじゃなく、本当に打開出来る力がある。
情け無い……。
今思い返せば、いつも千佳に助けられている。
「来ないの? 早くしないと警察来ちゃうと思うんだけど?」
彼女は2人を煽る。
「女だから油断していた所を、偶然上手くいったからっていい気になるなよ?」
1人の男が千佳に殴りかかろうとする。
千佳は、腰を捻りまた外側に逃げる。その瞬間に顎を鋭く掌で打った。
脳を揺らされた男は、膝を落とすとそのまま顎を掴み倒し、股間に一撃を入れると男は動かなくなった。
正直恐怖すら覚える鮮やかな技。
その瞬間、もう1人の男が蹴りを繰り出す。慌てて声を出そうとするも、声がでない。
だが、彼女は蹴りに合わせる様に膝に掌手を突き立て膝を折る。そしてすぐに起き上がり溝落ちを蹴り上げ、男は倒れた。
一瞬にして3人……それも千佳より遥かに身体の大きな男ばかりを倒す。
「千佳……」
「あー、無事……ではないか……」
「いや、助かったよ」
そう言うと、千佳はボロボロになっている俺に肩を貸す。
「何? 純にカッコいい所でも見せようと思ったの?」
「いや、切り抜けるにはこうするしか無いかなって……」
立ち上がり、足を引き摺る俺の元に清水さんが警察を連れて走ってくるのが見えた。
「千佳、長坂くん、大丈夫?」
「あたしは大丈夫だけど、優は立つのがやっとって感じかな?」
そう言うと、警察官が駆け寄る。
「彼女から襲われたと聞いていたが、どうゆう状況なんだ……」
「それは……」
千佳がそう言いかけると、俺は咄嗟に言った。
「俺がやりました……」
「優……」
千佳は驚いた様な顔をする。俺は晴れた顔で千佳に笑顔でかえす。正直これくらいしか出来ない。殴られている俺なら多少は見逃してくれるだろうと楽観的に考えた。
後で文句を言われてもいい。ただ、ここまで千佳に背負ってもらうわけにはいかない。
「やりましたって、君も大分やられているじゃ無いか……」
「まぁ……そうっすね」
警察は困った様にそう言うと、とりあえず彼らと俺たちは警察署に向かう事になった。
向かう途中、千佳は俺に言った。
「なんで、あんな事言ったのよ?」
「あー、俺がしたって事?」
「別に、あたしが好きでやってるんだし……」
フェードアウトする様に千佳の声が小さくなる。
「俺が何も出来なかったから」
「助けてたじゃん?」
「俺的には何もしてない。出来てない……千佳に頼りっぱなしだよ……」
痛む足をさすり、自転車に乗る。
「そんな理由で?」
「結構大きな理由なんですけど?」
そう言うと、清水さんも口を挟む。
「本当は千佳が倒したって聞いてびっくりしたよ」
「まぁ、あたしは小さい頃から護身術……の空手みたいなのをやってたからね……」
「空手って、フルコンでもあんな技無いだろ?」
「だからみたいなのって言ってるじゃん」
千佳の言っている空手は、多分俺が聞いたこともない様なもっと武術的な物なのだと思った。
「でも……優。ありがとね」
「なんだよ急に……」
「あんまり一般人に、技を使うのは良くないから……優が言ってくれた時──」
そうだろうと思った。
世間的にどうなのかはわからないけど、格闘技を習っている人が普段、それを使うのは問題があると聞いたことがある。
だから……俺はそれでいいと思う。
ほんの少しでも、千佳に返せたら。あまり良くは思ってはくれないのだろうけど。
警察署では、色々と聞かれた。
「なるほど……真犯人を吐かせる為にねぇ……もうちょっと警察を信用してほしい所だけど、理由は分かった」
「それじゃ……」
「まぁ、攻撃の正当性はあるだろうけど、相手次第かなぁ……」
帰ったはずのカズアキも実は千佳に抑えられていて、捕まっていた。彼に関しては大した怪我はしてなかったのだが、通り魔の犯人として多分捕まると警察は言った。
のこりの3人は色々と重症だった事もあり、相手次第では裁判になるかもしれないのだそうだ。
だが、奴らは何故か千佳にやられたとは言わず、俺の言った事を認める形になった。
正直面倒くさい事になってしまった訳なのだけど、比較的マシな内容で落ち着いた様に思えた。
だが、俺は打撲が酷かったせいか次の日高熱が出て、学校とバイトを休んだ。
──それから2日後。
学校では、顔が腫れている事は、階段から落ちた事にする事にした。心配はされたもののそれ以上深くは聞かれなかった。
そして、浅井さんが復活して明日から登校するのだと聞いた。
その日の放課後。
俺たちはまたカフェに集まる。
なんとなく普段の生活が少し物足りない様に感じたのは、あれだけの事があったからなのだろう。
俺はあの日の事を早く2人と話したくて、多分2人もそう思っているのだろうと思った。
「なんか変な感じだよねー!」
集まってすぐに千佳はそう言った。ついこないだまで仲が良かった訳じゃない。強いて言うなら悪かったと言えるだろう。
「でも、2人のおかげで解決出来たよ」
「浅井さんも大丈夫なんだって?」
「うん、傷も殆ど残らないみたい」
「まぁ、でも事件だったよな……」
楽しむ様な事はない。でも、そのおかげで2人と思い出というか、絆の様なものが出来た気もする。
「ところでさ、純は優の事どう思ってるの?」
千佳はいつもどおり、予想しなかった事を口にする。
「どうって……悪くは無いけど」
「じゃあ、きになる所もあるんだ?」
「どうして長坂くんの前でいうの……」
以前みたいな、誘惑してくる様な雰囲気はない。どちらかと言うとガチな反応に俺も戸惑ってしまう。
「だって、手繋いで仲良さそうだったじゃん? 可能性あるのかなーって」
「でも、長坂くんは……」
清水さんはそこまで言うと黙ってしまう。
「優はどうなの?」
「どうって……かわいいとは思うけど」
「かわいいよねー、一緒に遊びに行ったりしても楽しいかもよ?」
別に、今の清水さんは嫌いじゃない。どちらかと言うと、性格なんかも分かってきた事もあってか自然に一緒にいられるタイプだと思う。
それと、抜群のルックス。
正直、拒否する様な理由はない。
だけど……俺の中ではどこかもやもやする部分があって素直に付き合うとかは考えられななかった。
そんな中、千佳がトイレに行くと清水さんは言った。浅井さんと行った時はどこか恐怖を覚えたのだけど、今回は違った。
「ねぇ、長坂くんはなんで一緒に来てくれたの?」
「そりゃ、千佳が言うから……」
「私の事は?」
「まぁ。最初は苦手だったけど、今はそんな事ないぜ?」
清水さんは少し寂しそうに笑うと、落ち着いた声で言う。
「私と、キスできる?」
「はぁ? いや、キスって……」
「できる?」
正直、動揺した。
色々な事が頭を回り、答えをだす。
「贅沢……すね」
「なにそれ?」
「まぁ、清水さんかわいいし? でもなんか……」
「うーん、じゃあ千佳は?」
「なんで千佳がでてくるんだよ!」
俺は慌てて叫んだ。正直なんで叫んだのかもよくわからないけど、清水さんは言った。
「そう言う事だと思うよ……」
清水さんの言いたい事は分かった。多分俺はそういう事なんだ。
間違った事を叱ってくれて。
困った時はそばに居た。
一緒に悩んで、本気で考えてくれて。
手を差し伸べて助けてくれる。
そういう事と言った、清水さんの言葉がこれほどまでにしっくり来るのはそうなのだろう。
俺は、千佳が……。
「なーにはなしてんの?」
「いや、なんか普通に仲良くなったなって……」
「うんうん」
「じゃあ、2人にはあたしの恋も応援してもらおっかな?」
そうだ、俺は何を考えて。
千佳には好きな人が居る。初めから知っていたはずなのに、お人好しなだけだと知って居たのに。
「えっ? 千佳は好きな人いるの?」
「うん、優とお互い恋を応援するって約束してたんだけど、2人がいい感じなんだもん」
清水さんは驚いた様に俺を見る。
それをみて、俺はコクリと頷いた。
「清水さんといい感じかは置いといて、千佳を応援するよ! どうすればいい?」
俺は、そう言って気持ちの蓋を閉じた。
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