異世界メールフレンド〜女騎士とメールしていたら帰れなくなりました〜

竹野こきのこ

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異世界転移編

現実の変化

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魔王人形……。

他のものは消えたのに、何故かこれだけは消えなかった。だが、そのおかげで夢ではなかったと思う事が出来た。

あの時魔王が言った"そのうち役に立つ"とはそういう事だったのか……。

部屋を見渡すと、転移したあの日のままの部屋。時間は経って居ない様子で戻って来れたのを実感する。

ふと、開いているパソコンを見るとエリカのメールが閉じていた。

そうか……あの日ゲートを閉じたのは俺だったのか……。

───それからしばらく考え、俺は夜、エリカにメールをしてみる事にした。

魔王やドライア様の言っていた子が正しければ、このメールは夜に過去のエリカに届く。

そう、あの日エリカの家に行った時の夜に。

それからメールの内容を考え、現実世界での生活を思い出す。久しぶりに食べる家の味に感動する。

また、何でもない日常に戻ったのだ。だけど、あの世界と繋ぐパソコンが希望をくれる。

23時30分……俺はあの日の時間を考え寝静まったタイミングでメールを送る。

すると、すぐさま返信が届いた。

"私は其方をよく知らない"

どこかでエリカを信じて居たのかも知れない。エリカならきっと、直ぐに理解してくれると思っていた。

だけど、エリカにとっては今までメールしていた事なんてどうでも良かったんだ。あの日、目の前でエリカを助けた俺こそが今のエリカにとっては大切なのだと気付いた。

「そうか……いきなりそんな事言っても信じては貰えないよな……」

「すまない……ただ、この世界にとって未来からの連絡なのだろう?」
「そう、信じて貰えると嬉しいんだけど?」

「その、未来の修平は何故連絡しようと思ったのだ? そのまま離れる事も出来ただろう?」
「俺が過ごした1カ月は何物にも変えられない、変えたく無い思い出なんだ……」

「そうか、ならば私は今の環境を受け入れたいと思う。そして、修平が居なくなる時まで答えを待ってはくれないだろうか?」

「環境を受け入れる? 何があっても受け入れるつもりなのか?」
「ああ、其方の言葉を1つだけ信じさせてもらう。これが私の精一杯の事だ」

「一つだけって……何?」
「其方は、何物にも変えられない思い出だと言った。それならば私もその何物にも変えられない思い出を今居る修平と作りたいと思う」

「なんか……エリカらしいな……」
「そしたらまた……その時が来たら連絡させてもらう」

エリカとのメールはそれ以降は続かなかった。
というより続けられなかった。


───次の日の朝。
俺は普段の生活に戻っていた。
何も無いエリカと出会う前の退屈な日常。ただ、変わったのは俺のベッドの脇には魔王の人形がある事位だった。

「いってきます」

そう言って学校に向かう。空は青くどこまでも続いている様な気がする。正直、このまま何処かに行ってサボりたいくらいの心地よい天気だ。

学校に着くと、見慣れた筈の教室が何処か違って見える。授業が始まると、先生は宿題を集め始めた。

そういえは、宿題。忘れていたな……。

忘れた事を先生に伝えると、
「木元、お前が宿題忘れるなんて珍しいな。何かあったのか?」

「ちょっと異世界に行ってたんですよ」
「ははは、そういう比喩染みたいいわけ先生は好きだぞ? まぁ、次からは気をつけてくれよ」

軽く頭を下げて、席に戻ると、
「木元くん、なんか雰囲気変わったね!」
と隣の席の女子が言った。

「そうかなぁ? まぁそういう日なのかもね」
「うん、やっぱり変わったよ!」

心なしか、気軽に話しかけてくるその子がアドリに雰囲気が似てると思った。

それだけじゃない、クラスの奴らがそれぞれ"クロニクル"の世界の住人とリンクするような気がして、その中でそれぞれの関係が繋がっているのだろうと思った。

もしかしたら、俺は興味を持たなかっただけだったのかも知れない。それをあの世界は教えてくれたのだと感じた。


───それから1カ月の月日が過ぎた。
以前より、俺はクラスに馴染んで来たと思う。そんな中スマホにメールが届いた。

エリカからだ。

"少し、話せるだろうか?"

俺は、そのメールに心を躍らせていると、クラスの奴が声をかけてくる。

「修平、なんかいいことでもあったのか?」

「まあな?」

「なんだよ、彼女か?」
「うーん、そのうちなればいいなと思ってるよ?」

「マジかよ、今度写メ見してくれよな!」
「まぁ、撮れたらな!」

そう言って、俺は急いで帰る支度をした。
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