31 / 32
異世界転移編
現実の変化
しおりを挟む
魔王人形……。
他のものは消えたのに、何故かこれだけは消えなかった。だが、そのおかげで夢ではなかったと思う事が出来た。
あの時魔王が言った"そのうち役に立つ"とはそういう事だったのか……。
部屋を見渡すと、転移したあの日のままの部屋。時間は経って居ない様子で戻って来れたのを実感する。
ふと、開いているパソコンを見るとエリカのメールが閉じていた。
そうか……あの日ゲートを閉じたのは俺だったのか……。
───それからしばらく考え、俺は夜、エリカにメールをしてみる事にした。
魔王やドライア様の言っていた子が正しければ、このメールは夜に過去のエリカに届く。
そう、あの日エリカの家に行った時の夜に。
それからメールの内容を考え、現実世界での生活を思い出す。久しぶりに食べる家の味に感動する。
また、何でもない日常に戻ったのだ。だけど、あの世界と繋ぐパソコンが希望をくれる。
23時30分……俺はあの日の時間を考え寝静まったタイミングでメールを送る。
すると、すぐさま返信が届いた。
"私は其方をよく知らない"
どこかでエリカを信じて居たのかも知れない。エリカならきっと、直ぐに理解してくれると思っていた。
だけど、エリカにとっては今までメールしていた事なんてどうでも良かったんだ。あの日、目の前でエリカを助けた俺こそが今のエリカにとっては大切なのだと気付いた。
「そうか……いきなりそんな事言っても信じては貰えないよな……」
「すまない……ただ、この世界にとって未来からの連絡なのだろう?」
「そう、信じて貰えると嬉しいんだけど?」
「その、未来の修平は何故連絡しようと思ったのだ? そのまま離れる事も出来ただろう?」
「俺が過ごした1カ月は何物にも変えられない、変えたく無い思い出なんだ……」
「そうか、ならば私は今の環境を受け入れたいと思う。そして、修平が居なくなる時まで答えを待ってはくれないだろうか?」
「環境を受け入れる? 何があっても受け入れるつもりなのか?」
「ああ、其方の言葉を1つだけ信じさせてもらう。これが私の精一杯の事だ」
「一つだけって……何?」
「其方は、何物にも変えられない思い出だと言った。それならば私もその何物にも変えられない思い出を今居る修平と作りたいと思う」
「なんか……エリカらしいな……」
「そしたらまた……その時が来たら連絡させてもらう」
エリカとのメールはそれ以降は続かなかった。
というより続けられなかった。
───次の日の朝。
俺は普段の生活に戻っていた。
何も無いエリカと出会う前の退屈な日常。ただ、変わったのは俺のベッドの脇には魔王の人形がある事位だった。
「いってきます」
そう言って学校に向かう。空は青くどこまでも続いている様な気がする。正直、このまま何処かに行ってサボりたいくらいの心地よい天気だ。
学校に着くと、見慣れた筈の教室が何処か違って見える。授業が始まると、先生は宿題を集め始めた。
そういえは、宿題。忘れていたな……。
忘れた事を先生に伝えると、
「木元、お前が宿題忘れるなんて珍しいな。何かあったのか?」
「ちょっと異世界に行ってたんですよ」
「ははは、そういう比喩染みたいいわけ先生は好きだぞ? まぁ、次からは気をつけてくれよ」
軽く頭を下げて、席に戻ると、
「木元くん、なんか雰囲気変わったね!」
と隣の席の女子が言った。
「そうかなぁ? まぁそういう日なのかもね」
「うん、やっぱり変わったよ!」
心なしか、気軽に話しかけてくるその子がアドリに雰囲気が似てると思った。
それだけじゃない、クラスの奴らがそれぞれ"クロニクル"の世界の住人とリンクするような気がして、その中でそれぞれの関係が繋がっているのだろうと思った。
もしかしたら、俺は興味を持たなかっただけだったのかも知れない。それをあの世界は教えてくれたのだと感じた。
───それから1カ月の月日が過ぎた。
以前より、俺はクラスに馴染んで来たと思う。そんな中スマホにメールが届いた。
エリカからだ。
"少し、話せるだろうか?"
俺は、そのメールに心を躍らせていると、クラスの奴が声をかけてくる。
「修平、なんかいいことでもあったのか?」
「まあな?」
「なんだよ、彼女か?」
「うーん、そのうちなればいいなと思ってるよ?」
「マジかよ、今度写メ見してくれよな!」
「まぁ、撮れたらな!」
そう言って、俺は急いで帰る支度をした。
他のものは消えたのに、何故かこれだけは消えなかった。だが、そのおかげで夢ではなかったと思う事が出来た。
あの時魔王が言った"そのうち役に立つ"とはそういう事だったのか……。
部屋を見渡すと、転移したあの日のままの部屋。時間は経って居ない様子で戻って来れたのを実感する。
ふと、開いているパソコンを見るとエリカのメールが閉じていた。
そうか……あの日ゲートを閉じたのは俺だったのか……。
───それからしばらく考え、俺は夜、エリカにメールをしてみる事にした。
魔王やドライア様の言っていた子が正しければ、このメールは夜に過去のエリカに届く。
そう、あの日エリカの家に行った時の夜に。
それからメールの内容を考え、現実世界での生活を思い出す。久しぶりに食べる家の味に感動する。
また、何でもない日常に戻ったのだ。だけど、あの世界と繋ぐパソコンが希望をくれる。
23時30分……俺はあの日の時間を考え寝静まったタイミングでメールを送る。
すると、すぐさま返信が届いた。
"私は其方をよく知らない"
どこかでエリカを信じて居たのかも知れない。エリカならきっと、直ぐに理解してくれると思っていた。
だけど、エリカにとっては今までメールしていた事なんてどうでも良かったんだ。あの日、目の前でエリカを助けた俺こそが今のエリカにとっては大切なのだと気付いた。
「そうか……いきなりそんな事言っても信じては貰えないよな……」
「すまない……ただ、この世界にとって未来からの連絡なのだろう?」
「そう、信じて貰えると嬉しいんだけど?」
「その、未来の修平は何故連絡しようと思ったのだ? そのまま離れる事も出来ただろう?」
「俺が過ごした1カ月は何物にも変えられない、変えたく無い思い出なんだ……」
「そうか、ならば私は今の環境を受け入れたいと思う。そして、修平が居なくなる時まで答えを待ってはくれないだろうか?」
「環境を受け入れる? 何があっても受け入れるつもりなのか?」
「ああ、其方の言葉を1つだけ信じさせてもらう。これが私の精一杯の事だ」
「一つだけって……何?」
「其方は、何物にも変えられない思い出だと言った。それならば私もその何物にも変えられない思い出を今居る修平と作りたいと思う」
「なんか……エリカらしいな……」
「そしたらまた……その時が来たら連絡させてもらう」
エリカとのメールはそれ以降は続かなかった。
というより続けられなかった。
───次の日の朝。
俺は普段の生活に戻っていた。
何も無いエリカと出会う前の退屈な日常。ただ、変わったのは俺のベッドの脇には魔王の人形がある事位だった。
「いってきます」
そう言って学校に向かう。空は青くどこまでも続いている様な気がする。正直、このまま何処かに行ってサボりたいくらいの心地よい天気だ。
学校に着くと、見慣れた筈の教室が何処か違って見える。授業が始まると、先生は宿題を集め始めた。
そういえは、宿題。忘れていたな……。
忘れた事を先生に伝えると、
「木元、お前が宿題忘れるなんて珍しいな。何かあったのか?」
「ちょっと異世界に行ってたんですよ」
「ははは、そういう比喩染みたいいわけ先生は好きだぞ? まぁ、次からは気をつけてくれよ」
軽く頭を下げて、席に戻ると、
「木元くん、なんか雰囲気変わったね!」
と隣の席の女子が言った。
「そうかなぁ? まぁそういう日なのかもね」
「うん、やっぱり変わったよ!」
心なしか、気軽に話しかけてくるその子がアドリに雰囲気が似てると思った。
それだけじゃない、クラスの奴らがそれぞれ"クロニクル"の世界の住人とリンクするような気がして、その中でそれぞれの関係が繋がっているのだろうと思った。
もしかしたら、俺は興味を持たなかっただけだったのかも知れない。それをあの世界は教えてくれたのだと感じた。
───それから1カ月の月日が過ぎた。
以前より、俺はクラスに馴染んで来たと思う。そんな中スマホにメールが届いた。
エリカからだ。
"少し、話せるだろうか?"
俺は、そのメールに心を躍らせていると、クラスの奴が声をかけてくる。
「修平、なんかいいことでもあったのか?」
「まあな?」
「なんだよ、彼女か?」
「うーん、そのうちなればいいなと思ってるよ?」
「マジかよ、今度写メ見してくれよな!」
「まぁ、撮れたらな!」
そう言って、俺は急いで帰る支度をした。
0
お気に入りに追加
58
あなたにおすすめの小説

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~
一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。
しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。
流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。
その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。
右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。
この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。
数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。
元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。
根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね?
そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。
色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。
……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-
ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。
自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。
いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して!
この世界は無い物ばかり。
現代知識を使い生産チートを目指します。
※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。
不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?
カタナヅキ
ファンタジー
現実世界で普通の高校生として過ごしていた「白崎レナ」は謎の空間の亀裂に飲み込まれ、狭間の世界と呼ばれる空間に移動していた。彼はそこで世界の「管理者」と名乗る女性と出会い、彼女と何時でも交信できる能力を授かり、異世界に転生される。
次に彼が意識を取り戻した時には見知らぬ女性と男性が激しく口論しており、会話の内容から自分達から誕生した赤子は呪われた子供であり、王位を継ぐ権利はないと男性が怒鳴り散らしている事を知る。そして子供というのが自分自身である事にレナは気付き、彼は母親と供に追い出された。
時は流れ、成長したレナは自分がこの世界では不遇職として扱われている「支援魔術師」と「錬金術師」の職業を習得している事が判明し、更に彼は一般的には扱われていないスキルばかり習得してしまう。多くの人間から見下され、実の姉弟からも馬鹿にされてしまうが、彼は決して挫けずに自分の能力を信じて生き抜く――
――後にレナは自分の得た職業とスキルの真の力を「世界の管理者」を名乗る女性のアイリスに伝えられ、自分を見下していた人間から逆に見上げられる立場になる事を彼は知らない。
※タイトルを変更しました。(旧題:不遇職に役立たずスキルと馬鹿にされましたが、実際はそれほど悪くはありません)。書籍化に伴い、一部の話を取り下げました。また、近い内に大幅な取り下げが行われます。
※11月22日に第一巻が発売されます!!また、書籍版では主人公の名前が「レナ」→「レイト」に変更しています。
老女召喚〜聖女はまさかの80歳?!〜城を追い出されちゃったけど、何か若返ってるし、元気に異世界で生き抜きます!〜
二階堂吉乃
ファンタジー
瘴気に脅かされる王国があった。それを祓うことが出来るのは異世界人の乙女だけ。王国の幹部は伝説の『聖女召喚』の儀を行う。だが現れたのは1人の老婆だった。「召喚は失敗だ!」聖女を娶るつもりだった王子は激怒した。そこら辺の平民だと思われた老女は金貨1枚を与えられると、城から追い出されてしまう。実はこの老婆こそが召喚された女性だった。
白石きよ子・80歳。寝ていた布団の中から異世界に連れてこられてしまった。始めは「ドッキリじゃないかしら」と疑っていた。頼れる知り合いも家族もいない。持病の関節痛と高血圧の薬もない。しかし生来の逞しさで異世界で生き抜いていく。
後日、召喚が成功していたと分かる。王や重臣たちは慌てて老女の行方を探し始めるが、一向に見つからない。それもそのはず、きよ子はどんどん若返っていた。行方不明の老聖女を探す副団長は、黒髪黒目の不思議な美女と出会うが…。
人の名前が何故か映画スターの名になっちゃう天然系若返り聖女の冒険。全14話+間話8話。

俺は悪役王子様!
水魔沙希
ファンタジー
妹ちゃんがやっていた乙女ゲームに転生した俺氏。しかも、チートな悪役王子様。
でも、ゲーム通りに動く必要もないよな?
せっかく、魔法がある世界だから、楽しく過ごそうぜ!
42話完結です。最終回、何とか書きました。
花京院陽菜のアカウントから、よく使うこちらに移しました。随時、花京院陽菜のアカウントで書いていた作品は削除させて頂きます。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる