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異世界転移編

とりあえず待つ

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部屋に戻るとしばらくして、家の前に竜車が止まる。エリカが手配した様だった。

「修平、公国の軍部に向かうぞ……」

エリカの勢いに従い、俺達は竜車に乗り込む。
公国の軍部は以前俺たちがエリカの装備を返しに行った場所。今更何故軍部に……?

「修平……一つ頼みがある」
「なんだよ?」

「今回の件、あくまで魔族に攻撃されたと口裏を合わせてくれないか?」
「口裏を合わすも何も、現にそうじゃないか?」

エリカは少し黙り、
「とりあえずは魔族の目的が修平だと言わないでいて欲しい」
そう呟いた。

彼女の様子から、軍部に匿ってもらうつもりなのだろう。その際多分だけど、エリカが狙われているのと俺が狙われているのとでは対応が変わるのだろう。

「わかった。エリカの言う様にするよ。所で魔族とはなんなのだ?」

「簡単に言えば異種族だ。我々が精霊ドライア様の庇護下にあるとするならば、彼等は魔王イフルの下にいる別の種族」

「そうは言っても、帝国なんかは種族がバラバラに見えるのだけど?」

「魔族は見た目の特徴だけではない。心臓の代わりに魔石で動く。つまり生物とはまた違うものなのだ」

なるほど……そう言えば俺が疑われた時も似たような事を言っていたな。

「だけど、それぞれ干渉しないルールを建てているんだろ? なんで魔族は来たのだろう?」

「分からん……だが、魔王が修平に興味を持ったからなのは間違いないだろうな」

魔族と同じ髪の色。異世界から来たと言うだけで理由は充分なきがする。

「奴らについては軍部で閣下に聞くのがいいだろう……」

そうして、揺られる事3時間。
俺たちの乗った竜車は夕方には軍部についた。

「少佐! お久しぶりです!」
「今は少佐ではない。が……迷惑をかけた。すまない」

門の入り口にいた兵士にエリカはそういった。

「それで……今日は?」
「閣下に相談があってな……もちろん事前にアポは取っている」
「少佐……あ、いやエリカ様、戻られるんで?」

「残念だが、そういった話ではない」

そう言うとエリカは迷いなく、バーレンハイム准将の部屋に向かい、ノックした。

「失礼します」
「ホ、まさかこんなに早く私の部屋で話す事になろうとはな……」

「閣下……申し訳ございません。申し出を受け入れていただき感謝致します」

「それで? 魔族と一戦交えたそうじゃないか? 怪我がない様でなにより」
「はい……ですが、修平が居なければどうなっていたか……」

「なるほど……それで、相手の名はフェレスと言ったとか?」
「はい、連絡した通りです」

「修平殿、そのフェレスとやらに面識は?」

「ないですね……というかこの世界にエリカと会った人以外で面識がある人自体居ないですし……」

「ふむ……目的は赤翼か、異世界の男、はたまた管理者の孫か……よくもまぁ、原因になりそうな者が揃ったものだ」

准将は、左手で地図を広げるとエリカに言った。

「ここの西門の駐屯所を使う。わしと青鎌の小隊で駐屯させる。援軍も要請しておくがとりあえずはそこで構えよう」

「小隊? 援軍要請するのにまたなんで?」
「ああ、相手は魔族だからな、兵士に無駄死にはさせれん。それに小隊と言っても精鋭部隊だ」

なるほど……。

そして移動待ちの間、俺はエリカに聞いた。
「閣下もくるみたいだけど、強いのか?」
「修平には、閣下が弱くみえるのか?」

「そう言うわけじゃないけど……結構いい歳だから軍師的な感じかと思ってさ」

「そうだな、歳は70前、おまけに隻腕。地位も准将と聞けばそう思うのかもしれんな?」

「隻腕? 片方義手なのか?」
「ああ、利き腕を先の戦いで失ったらしい」

「マジかよ……」
「だが、閣下は強いぞ。准将なのも天下りで元は帝国の総帥だった人だ。まぁ、さらに言えば伝説レベルで英雄と言われていた人だな」

「そんなにかよ……」

「閣下は魔族とは因縁があってな、40年程前に魔族と大きな戦を交えているのだ」

「それで英雄?」
「正直閣下が居なければ帝国すら危なかったらしいからな、それもあってベルム大佐ははかなり憧れと共にライバル視している部分がある」

なるほどな……。
俺たちは軍部から移動し西門の駐屯所に着く。
門の周辺はどちらも広い平地が広がっている。

そうして、時間が経つにつれファルムスの精鋭達が門の前に集まってくる。

正直ここまで大事になるとは考えておらず、その物々しい雰囲気に俺はドキドキしていた。

だが、時間が経つにつれそれは次第に慣れ、俺はエリカのテキストを読んでいた。

「修平さんですか?」

そう、こえをかけてきたのはくすんだ鎧を纏う好青年だ。

「あ、はい……」
「良かった、私青鎌小隊の隊長をしているランツェルと言います」

屈託の無い笑顔を向け爽やかに言った。
どう考えてもベースが陰キャラの俺には眩しい。

「くっ、光属性か……」
「いえ、水属性です! なんですかその凄そうな属性!」

「いえ……」
「修平さんも水属性、なんですよね?」

「あ、今勉強中で……」
「このテキスト懐かしいなぁ」

ランツェルさんは精鋭部隊を纏める位だからやっぱりすごいのだろう、だがそれを全く鼻にかけない雰囲気に凄く好感が持てた。

こうして、駐屯所の人達と話しながらその日は何もなく終わった。

いつくるかわからない恐怖が少し和らいでいる気がした。
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