異世界メールフレンド〜女騎士とメールしていたら帰れなくなりました〜

竹野こきのこ

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異世界転移編

大佐と大差ない

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「総員傾注!」

会議室は俺がイメージしていた物とは違い、まるで首脳会談でも行うかの様な部屋に座る。

勝手のわからない俺は、エリカを見ながら真似をしてやり過ごそうと考えた。

「アルタルム帝国ベルム大佐、ファルムス公国バーレンハイム准将前へ」

議長らしき男が声をかける。
確かエリカはファルムス公国少佐。帝国の傘下だと記憶している。

という事はこの大佐が事実上トップという事になるのか? だが、准将は役職上大佐の上だがどちらに発言力が有るのかは分からない。

「修平殿、大掛かりな事となって申し訳ない」

そう切り出したのは、帝国側ベルム大佐だった。
40歳手前くらいだろうか? まさに油が乗ったといえる大柄の険しい顔をした軍人の男がいる。

「いえ、この会議は一体どの様な件でしょうか?」

敬意は払ってくれてはいる様子に、俺は出来る限り丁寧に返す。

「昨日のオークとの戦闘の際、修平殿がオークキングを一撃で仕留めたという噂が軍の中で広まっている様なのだが事実であるか?」

「一応……嘘ではないですね」

おれがそう言うと会議室がすこしざわつくのが分かる。

「そうか……では、修平殿が魔族でないという証明はできるか?」

「大佐、それは不当な質問です」
エリカが慌てる様に返す。

「ヴァレンシュタイン少佐、少し落ち着きたまえ」
「ですが、閣下……」
バーレンハイム准将はエリカに首を振る。

「えっと、よくわからないのですが……魔族の定義とはなんでしょうか? それがわかれば証明ができると思いますけど……」

「なるほど……魔族というのは黒い髪に赤い目が特徴であると同時に無機質なコアを持ち人間ではありえない硬さと魔力を持っている。というのが我々の認識である」

ちょっとこれは疑われても仕方ないのか?
エリカの公国の人間は基本的に青みがかった髪に白い肌。帝国は赤い色素が強い様にみえる。

黒髪黒目の黄色人種の俺は異様に見えてもおかしくは無いな……。

「3つ相違点があります。まず自分には魔力はありません。次に目は茶色、これは見たらわかりますよね? また、無機質なコアというのは無いのですが、検査する何かがあれば証明できます」

「ふむ……」
ベルム大佐は、少し考える素振りをみせる。
俺が出来ることはこれくらいしか無いから納得してもらいたい物なのだが……。

「質問を変えよう。其方は我々の敵となる可能性はあるか?」

「敵対するつもりは無い。だが、帝国に忠誠を誓うか?という話で有ればNOです。自分は異世界から来た身なので帰る事を優先したい」

俺がそう言うと再度会議室はざわつく。

「ですが……その事でエリカに危害が加えられるので有れば出来る限りの協力はする」

「なるほど、ヴァレンシュタイン少佐の友人と言うのは本当らしいな」

とりあえずは大丈夫か?
俺はエリカに目線を送ると何やら俯き、不穏な空気を放っている。

「では2人とも私の部隊に来てもらえないか? もちろん帰る方法を探しながらで構わない」

俺は、一見いい条件にも感じた。
だがエリカを見る限りそうではないのだろう。

「えっと……とりあえずエリカに従います」

そう返すと、エリカは息を飲み言った。

「私は閣下に忠誠を誓っています。帝国の指示は閣下を通して頂ければ従います」

敵対する気はないが、あくまで現状維持。
エリカと准将にはまだ俺には分からない関係があるのだろうと思う。エリカの返答には何も不自然な事は無い様に感じた。

「帝国には従えないと?」
何故そうなる。これが権力差なのか?

「ちょっと待ってくれ、従えないとは言っていない。エリカが言う様に准将を通すのではだめなのかよ?」

俺が感情的になるのを抑えるかの様に、エリカはおれの袖を摘んだ。

「修平、だめだ……ベルム大佐は修平を使い手柄を立てる事にしか意識が向いてない」
エリカは俺に囁いた。

「ベルム大佐殿、本人の意思を尊重しないのは少し横暴ではございませんか?」

バーレンハイム准将が口を開いた。

「バーレンハイム、貴様……」
「ベルム大佐殿、本人等に理由を尋ねてみたいのですがいかがでしょう?」

そう言うと、エリカは俺に囁く。
「修平、閣下がベルムに勝てるか?と聞いている」
「勝てるって……あの大佐にか?」

いつそんな話を? そうか、通信魔法……。

「エリカはどう思う?」
「閣下には何か考えが有るのだろう。正直この状況を変えるには戦うしか無いと判断されている。それに、奴の元に移籍したら色々条件をつけられ帰るどころでは無くなってしまうぞ」

なるほど、裏が有るという訳か。

「わかった……でもどうするんだ?」
「私に任せておけ!」

そう言うとエリカは
「私の上に立つのがご希望で有れば実力を示してくれないか?」
「なり上がりの小娘が……いいだろう」

「大佐もご納得頂けるので有れば演習場に移りましょうか」

准将はそう言って場を纏める形を見せ、俺たちは場所を移動する事となった。

「なぁ、エリカ。ベルム大佐は強いのか?」
「話でしか聞いた事はないが、一撃必殺の風魔法の技をもっているという噂だ。風では相性が悪い、一対一では私は勝てないだろうな……」

「じゃあなんで受けたんだよ?」
「修平の硬さならどうにか出来るかも知れない……と思う」
「と思うって、分からないのかよ」

「そこは性質というか、物理的な話なのだが、私は女だ」
「そりゃ見りゃわかるよ」

「ベルム大佐は男」
「それも見ればわかるって……」

「修平は知らないのかも知れないが、魔法と言うのは、基本的には総量はほぼ一定でな、使う内容が分かればある程度威力は予想ができるんだ」
「それは初耳なんだけど……」

総量がほぼ一定? 明らかに炎の矢を使いまくるエリカの技は技術的な物なのか?

「メールで話した魔力の確認方法があっただろう?」
「目を瞑り魔力を感じるってやつか?」
「そう、大きいほうが使いやすいが威力は無く、小さいほうが使いづらく威力が有る」

なるほど……。確かに言っていた様な。
「女性は基本的に同時作業が得意な脳を持っている。その為鍛錬していくと中威力の魔法を同時に使う形が適している、逆に男性は集中力や空間認識に長けているから攻撃から守る様な盾や高威力魔法が適しているんだ」

それならば前線にエリカの様な騎士がほとんど居ないのは何故なのだろう? 逆にベルムは高威力特化型の風タイプを極めているというわけか。

「大体のイメージは出来たか? 熱や痺れと言った付加ダメージの無い風タイプは空気を利用した物理ダメージや物理的な盾になるから修平と相性はかなりいいと思う」

「そういう事か!」
「ただ、威力によっては風穴が開く可能性もあるのだがな」

最後の言葉はかなり気になるが、エリカ的には勝算が有る事が分かっただけでも大分違う。

ただ、イメージはわかるが……演習場についたベルムは金色の胸部を中心に守る鎧でまるでアメフトの選手の様だ。その威圧感はオークの比では無いほどの迫力を放っていた。
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