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10 辺境に生きる。
しおりを挟むふんぬと鼻息も荒く家の前に広がる土地を睥睨する。
もともとは畑だったらしいのだが住民が消えたことによって荒地と化した。人の手が離れてからかなりの時間が立っているようだが、それでもゼロからいじイジるよりかは遥かに楽であろう。だからちょっとイジってみようかと思ったのだが……。
「とりあえずこの雑草どもをなんとかしないとな」
試しに手近な一本を引き抜いてみようとしたが、もの凄く抵抗された。
靴ひもぐらいの見た目に反して、おそろしく逞しい。さすがは人類の最前線に陣取る植物、どうやら外縁部とはいえここも立派な神域の一部ということなのだろう。雑草一本ですらが根性が違う。異世界育ちのひ弱な乙女を「やーい、このモヤシっ子」と嘲笑う。
そんな風に雑草どもと格闘していたらシルバーたちが寄ってきた。
「なにを遊んでおるんだ?」とふざけたことを言うので事情を説明したら、「それならば我らにまかせておけ」とのお言葉。
それで甘えてみることにしたのだが……。
フェンリルが口から蒼い炎を轟々と吐くと、雑草が消滅し一帯が焦土と化した。
ファイアーバードが大空から滑空して地表を舐めるように低空飛行、すると地面下がプスプスと不穏な音を立て、乾いた土色が真っ黒な土へと変色する。
サイカは私のポケット中でゴロゴロしている。
広い農業予定地を、わずか数分で滅却処理し終えたシルバーとレッド。
シルバーが凄いのはわかっていたが、レッドもかなり凄い。しかもこれでまだまだ幼体、不死鳥にまで育ったらちょっと想像がつかないな。
やはり私はすでに分不相応な攻撃手段を手にしているのでは? という認めたくない事実が脳裏をチラリとよぎるも、頭を振ってなかったことにした。
気にしない気にしない。
胸ポケットの中のシロが「ちー」と鳴いたので、私は思考を中断し彼らの声をかける。
「おつかれー、それぐらいでいいぞー」
二匹にはお手伝いの褒美に皮つき高級チクワを与えて、私とシロも相伴に与かりながら仲良く家へと戻る。
するとシルバーがこんなことを言い出した。
「とりあえず草は焼いておいたが、畑はちょっと難しいかもしれんぞ」
「どうして? あとは土を耕してシロが集めてくれた種を撒いたらイケそうなんだけど……」
「大地に元気がない。かなり雑草どもに吸い尽くされていたみたいで土に栄養が足らぬ。アレでは作物は育たぬやもしれん」
どうやら辺境では雑草も必死らしくて、食える時には食いだめをしておくようで、結果として土がカラカラ。上の草を焼いて地中の根を完全に消滅させたところで、肝心の大地が栄養失調状態。しばらく放置すれば回復するというのだが、そうするとまた雑草も頑張るという悪循環が延々と続くようだ。
「栄養ねえ……、普通は肥料でも撒くんだけど、とりあえず後でコイツでも撒いてみるか」
かじりかけのチクワを眺めて、ふとそんな気になった。
これだけ美味いし、なんか水分補給もできるし、滋養強壮もありそうなので、畑に撒いたらイケるんじゃない? という安易な思いつきであったのだが、これがのちに結構な騒動のもととなるとは、この時の私と三匹が知る由もなかった。
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