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021 集落奪還作戦・終結
しおりを挟む巨人の手のような形状をした異形・虚骸ヒトデ。
三本指の連続攻撃に気をとられていると、やつの巨体が不意にぐりんと回ってこちらへと背を向けた。
奇妙な動き。
意表をつかれた俺は一瞬対処に惑う。
すると横合いから飛んできたのは小指に相当する部位。
親指ともども足がわりに使っていたそれによる横薙ぎの一閃。まるで回し蹴りのような攻撃。
とっさに飛ぶことも、しゃがむことも出来なかった。
俺は短双剣の刃を盾としこいつを受けるしかない。
直後に強い衝撃。
ぎちりみしりと節々が厭な軋みをあげる。
天、地、瓦礫、岩肌、無惨な死体、血の染み、バタつく手足は自分のものか……。
視界が目まぐるしく入れ替わる。
ヒトデに吹き飛ばされた俺の体。あまりにも直線的にはじかれたせいで受け身なんてとてもとれない。そのままぶつかるかのようにして墜落し、なおも転がり滑り続ける。
地面には人体により描かれた線がくっきりと浮かびあがる。
それがようやく途切れたのは、防壁の残骸に俺の丸めた背中がドンとぶち当たってから。
ともすれば遠のく意識。
そいつを無理矢理引きとめ手繰り寄せ、俺は気力を振り絞って立ち上がる。
くそっ、たったの一撃でボロ雑巾のようにされた。
だがただではやられはしない。
「グガガガガガギィイィィィィィ」
歯ぎしりにも似た不快な奇声を発しているのはヒトデ。小指の先を失くしたせいで体勢を維持できずにごろんと横倒しになって身悶えている。
先ほどの攻防のおり、俺はヤツの攻撃を黒羽の刃にて受けた。うまい具合に第一関節付近に刃が通ったおかげで、ヤツ自身の力を利用して小指の先をつめることに成功する。しかし起死回生にはほど遠い。
部位を欠損し怒り狂ったヒトデ。残った四指にて蜘蛛のように這っては、こちらへと猛然と突進してくる。正面からこちらを押しつぶす算段のよう。
俺の背後には大きな防壁の瓦礫。近くに身を隠せる場所はなく、左右のどちらに向かってもすぐに追いつかれる。とても逃げ切れない。万事休すか。
こうなればかなわぬまでもせめて一太刀。
俺が短双剣をかまえようとしたところで、待望の合図がきた!
一時戦線を離脱し後方にさがっていた緑のスーラ。
いまではその身が鮮やかな青色へと変わっており、軟体は大口径の砲台の形状をとっている。スーラ弾なる技の強化版。
砲口の照準は攻撃対象である虚骸ヒトデへとピタリ合わさっている。
位置的には射線上に重なる俺も危うい。
それでもかまわず俺は指示を出す。
「かまわん、メロウ、やれっ!」
瞬間、砲台がズドンと咆哮をあげた。
たっぷりと体内にて空気を練り込み圧縮し、これを起爆剤として高速で発射されたのは青い弾頭。スーラの身を一部分割して産み出された特殊弾頭にはたっぷりと属性が込められている。
ヒトデの属性は赤。赤は青に弱い。
対虚骸戦においてもっとも有効となる攻撃。
完全に俺へと意識を向けていたところに、背後から直撃を受けてヒトデの巨体が爆散。
その寸前、俺は瓦礫に短双剣のひと振りを突き立てるなり、これを足場として上へと大きく跳躍する。
まんまと上空に逃れて巻き添えを回避した俺は、手の中にあるもうひと振りの黒羽を構えてそのまま降下。
眼下には左半身を吹き飛ばされたヒトデ。
なおも活動を継続しているが、手のひらのような胴体にある大口、その奥に潜んでいた急所がむき出しとなっている。
だらりと垂れている口蓋垂(こうがいすい)の先端に鈍く光るのは赤の慮晶石。これこそが異形の怪物の動力源。
「これでっ!」
俺は体ごとぶつかるようにしてそいつを斬り落とした。
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