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046 守護人機VS巨大おたまじゃくし、XX承認す
しおりを挟む守護人機が落ちていた腕を拾って、ガチャンとくっつけた。
それと時を同じくして、のたうち回っていた巨大おたまじゃくしが、むくりと起き上がる。舌は新しいのが生えており、千切れた先っちょの方は、まだあっちでビクンビクンしていた。かなり気持ち悪い。
第三ラウンドは静かな立ち上がり。
両者にらみあったまま動かず。
かとおもったら、守護人機の姿が不意に消えた。
どこに行ったのかとおもえば、上空である。
よもやの大ジャンプ、鈍重そうな見た目に反して跳躍力は相当だ。
で、そのままニードロップの構えにて急降下。
しかし巨大おたまじゃくしは、サササと地面を這いこれをかわす。奴には無数の目がある。そのため出し抜くのは容易ではない。
ギロチンの刃のごとく落ちてきた守護人機の膝が、地面に激突する。
ドーンという震動にて、境内に敷かれている砂利らが一斉にぴょんと跳ねた。
直後に衝撃が波となって周囲へと拡散される。
舞い上がった砂塵が散り、視界が晴れると大きなクレーターが出現していた。
なんというインパクト! もしも攻撃が当たっていたら、ノックアウトどころか体が爆散していたのではなかろうか。
そんな凄い攻撃を回避した巨大おたまじゃくし、スルスルと滑るように移動する。
すかさず片膝をついている守護人機の背後を取った。
で、大きく口を開けたもので、またぞろ長い舌で攻めるのかとおもいきや、さにあらず。
カアァアァァァァァーッ、ペッ!
痰を吐きやがった!
それも特大の!!
ただでさえ口臭がキツイのに、それがギュッと濃縮されたようなシロモノ。
ばっちい! 不快である。下品にて、見ていてあまり愉快なことではない。
僕は「うへぇ」と顔をしかめずにはいられない。
べちゃり。
痰が付着したのは守護人機の左肩のうしろあたり。
くすんだ黄緑色をした痰は、ドロリとした粘性を持ち、ねっとり肌にまとわりつく。
途端に、シュウ、シュウ、シュウ……
触れた箇所から白煙があがって、じゅわじゅわ溶け始めた。
恐るべき溶解力にて、瞬く間に外部装甲に穴が開き、メカメカした内部骨格があらわとなったとおもったら――ボトリ、腐り落ちたのは守護人機の左腕であった。
そう、巨大おたまじゃくしの痰には、モノを腐らせドロドロに溶かす性質が備わっていたのである。いや、もしもその気になったら、ヨダレや唾でも同じことができるのかも……
僕は心底ゾッとした。
だって、以前にペロンと顔を舐められたことがあったから。
運よく助かったから良かったものの、一歩間違えたら生きながらに溶かされちゃうところであった。あ、危ねえ。
こうして第三ラウンドは巨大おたまじゃくしが取った。
なおも溶解痰の浸蝕は続いており、守護人機は一転して窮地へと立たされることとなった。
◇
左腕を失った守護人機。
殴られたところがすでに回復している巨大おたまじゃくし。
互いの状況から、形勢は一目瞭然であった。
さしもの守護人機もこれまでか?
といったところで、おそらくは最終になるであろう第四ラウンドがスタートする。
巨大おたまじゃくしは、用心して距離をとっている。
対して守護人機は右の拳を突き出し、ロケットパンチをふたたび放った。
けど、これは悪手だ。前の時とは状況が違う。
いかに強力とて、真っ直ぐにしか飛べないモノを、おめおめと喰らうような巨大おたまじゃくしではなかった。
ぬるりと横移動にて余裕でかわす。
ロケットパンチは空振りにて、進路上にあった鐘楼に吊られている梵鐘をかすめて、くわ~ん。
気の抜けた音を鳴らしてから、夜明け前の瑠璃色の空の彼方へと消えてしまった。
頼みの豪腕を失くした守護人機。
こうなれば動く案山子のようなモノ。
巨大おたまじゃくしが喜々として襲いかかる。
もはやこれまでか……
僕とタケさんがガッカリしていると、突如として老住職の口がガーピーがなり出す。
「¥$&$$¥?凹凸△◎$♪○¥&※利乙――××の使用を承認す、××の使用を承認す」
××……チョメチョメ?
いったい何のことだろう。
僕が不審がっていると、守護人機の身に異変が起きた。
いきなりぐりんと回ったのは首、頭部が反転し後頭部が正面へと向く。
そこにあったのは丸い……穴。
まるで古井戸のように、ぽっかりあいているのだけれども、その奥底がビカッと光ったとおもったら、次の瞬間のこと。
穴から閃光が溢れ、苛烈な奔流となって噴き出した。
たちまち視界が明転し、白に染まる。
あまりの眩しさに、僕は顔を手で庇い目を閉じる。
直後に聞こえてきたのは、巨大おたまじゃくしの絶叫であった。
◇
恐る恐る瞼を開ければ、そこには驚愕の光景が待っていた。
地面には赤い線が溝のように刻まれており、溝の表面が煌々と光っているのは、グツグツ煮立っているから! あまりの高温にて、土や石などが溶けてマグマのようになっている。
かたわらにて巨大おたまじゃくしが、倒れていた。
見れば右の前と後ろ足および、その根元や脇から腹部のあたりがごっそり削れていた。
死骸が焼ける時の厭な臭い。
あの熱線にやられたのだろう。
とっさに回避行動をとったものの、間に合わなかったようだ。
でも、そんなことは些末なことに過ぎない。
赤い線は彼方にまでのびていた。
寺の境内を飛び出し、山門の瓦礫を焼き払い、麓の村をも縦断しただけではあきたらず、向こうの山の斜面をもざっくり抉っている。
高出力ビーム兵器で、巨大おたまじゃくしのみならず、村までぶった斬られた!
焼かれた場所がぷすぷす燻っており、余波で周囲に火が燃え広がりつつもある。
これは凄まじい。じきに本格的な山火事になるだろう。
あまりの惨状に、僕とタケさんは言葉も出ない。
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