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251 星間戦争・前編
しおりを挟む開戦ののろしは一発の銃弾。
リスターナの城、最上階のバルコニーから、超長距離用ライフルにて空飛ぶ巨大円盤を狙い撃ったのはルーシー。
しかし銃弾は見えない障壁に阻まれる。
それを見たルーシーは「ちっ」と舌打ち。「やはりシールドバリアぐらいは備えてありますか。伊達に宇宙の海を渡ってきたわけではないようですね」
亜空間内に武器を放り投げたルーシーは、かわりにスマートフォンっぽい通信端末を取り出すと、関係各所に通達。
ただひと言「全軍出撃」と命じた。
宇宙戦艦「たまさぶろう」が先陣を切る。
大気圏上より急降下し、巨大円盤に対してリスターナの主都を背後に守るかのように水平位置に陣取る。
三つ首にて一つの巨大な砲門。主砲二門を音もなく照準を合わせるなり発射。
撃ち出された砲弾が敵を守るシールドに着弾。無数の閃光の大蛇がのたうちまわり、激しい放電現象が起きて、大気が震えた。
ようやくソレが収まったときには、シールドは大きくひび割れ、穴だらけに。だが、からくも健在。
円盤の表面がぼんやりと白く輝き出す。
エネルギーを充填して、シールドを張りなおそうとしている模様。
しかしそれを許すわけもなく、宇宙戦艦「たまさぶろう」より第二射として放たれたホーミングレーザー(極太)らが、シールドに開いた隙間から突入。
巨大円盤に次々と突き刺さっては、風穴を開けていく。
と、次の瞬間。残っていたシールドが完全に消失。
それを成したのは地上に出現した富士丸から放たれたロケットパンチ。
轟々と唸りを上げてぎゅるぎゅる回転しながら飛ぶのは左の拳。シールドに触れたとたんに盛大な火花を散らすも、拮抗していたのはほんのわずかな時間。
外圧に弱っていたシールド側がこらえきれずに、ミシミシ悲鳴をあげて、ついに砕け散った。
ガードががら空きとなったところに、今度は右の拳が迫る。
下方より円盤の腹へと突き刺さった拳は、容赦なく内部を蹂躙して、そのまま上方へと抜けていく。しかも飛んで行ったモノはきちんと帰ってくるので、突き抜けたロケットパンチが、ふたたび振り下ろされる格好となり、円盤のカラダには二本の立派なトンネルが、突貫工事で開通することになってしまった。
ほうぼうにて爆発を起こし、火を吹き、黒煙をあげる巨大円盤。
ぐらぐらと揺れながらも上昇を開始。
いったん距離をとり態勢を立て直す算段らしいが、そうはいかない。
ルーシーエアフォース主力機、空飛ぶえんぴつこと「ハイエンドペンLG」三百機がこれを追撃。ブンブンまとわりついては、外宇宙の航行にも耐えうる壁をガリガリねちっこく削る。
ほどよく装甲が薄くなったところで、今度は死の乙女セレニティ・ロードたちが大挙して飛来。ワラワラと円盤表面にとりつき、外装をべりべり引っぺがす。
外皮をはがされ、肉もかき分けられて、中身が見え隠れしているような状況になったところで、マッドなセミ人間グランディア・ロードたちが白衣の裾を翻しながら、編隊を組んで襲来。ペカーと怪光線を放ち、内部を変質魔法で腐食、破壊していく。
一見すると角砂糖にたかるアリの群れのごとく、無秩序な蹂躙劇にみえて、そのじつキチンと対象の構造を見極め、大切な箇所に致命的なダメージを与えていくエアフォースとセレニティとグランディアたち。
しばらくすると張り付いていた面々が一斉に離脱。
そのタイミングで上空より円盤に降り注いだのは、リスターナ領内北部地下にある秘密要塞から放たれた、大陸間弾道ミサイルっぽいやつの群れ。
新旧入れ替えのための在庫一掃セールにつき、大盤振る舞い。文字通りの雨あられ。
それらに混じっていたのはでっかい青竹。これは竹姫ことバンブー・ロードの竹林より遠投で放たれた竹槍。
他のミサイルのように派手な爆発炎上をしない代わりに、相手に突き刺ささるのと同時に、もの凄い勢いにて四方八方に枝葉や根を伸ばしては、円盤のハラワタを喰い破るようにして大繁殖を開始する。おかげで円盤のそこかしこから立派な青竹がひょっこり顔を出すことに。
これまでゆっくりと上昇を続けていた円盤の巨体が、ついにその身をぐらりと傾げ失速。
ふらふらと地表に向けて落下を開始した。
この様子を眺めていたのは、地上に展開されていた部隊の面々。
左翼を固めるのは、対近接戦闘では無類の強さを誇るアリ人間ことオービタル・ロードたち。赤と黒の女王らに率いられた武闘派集団が、いまかいまかと手ぐすねを引いて獲物が落ちてくるのを待っている。
右翼を担当するのは、ゴードン将軍率いる新生リスターナ軍の精鋭。二刀流の剣の達人であるエタンセルを中心にした魔族の移住組もこちらの傘下に組み込まれてある。
中央にて陣をはるのは、強力な銃火器類で武装したルーシーズで構成されたアーミー。
ここに白光の鎧を身にまとい、愛用の片鎌槍を手にした鬼メイドのアルバ。八本足の多脚砲台にのったしゃべる魔導書や神殺しの剣テュルファングの姿もあった。
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