251 / 298
251 星間戦争・前編
しおりを挟む開戦ののろしは一発の銃弾。
リスターナの城、最上階のバルコニーから、超長距離用ライフルにて空飛ぶ巨大円盤を狙い撃ったのはルーシー。
しかし銃弾は見えない障壁に阻まれる。
それを見たルーシーは「ちっ」と舌打ち。「やはりシールドバリアぐらいは備えてありますか。伊達に宇宙の海を渡ってきたわけではないようですね」
亜空間内に武器を放り投げたルーシーは、かわりにスマートフォンっぽい通信端末を取り出すと、関係各所に通達。
ただひと言「全軍出撃」と命じた。
宇宙戦艦「たまさぶろう」が先陣を切る。
大気圏上より急降下し、巨大円盤に対してリスターナの主都を背後に守るかのように水平位置に陣取る。
三つ首にて一つの巨大な砲門。主砲二門を音もなく照準を合わせるなり発射。
撃ち出された砲弾が敵を守るシールドに着弾。無数の閃光の大蛇がのたうちまわり、激しい放電現象が起きて、大気が震えた。
ようやくソレが収まったときには、シールドは大きくひび割れ、穴だらけに。だが、からくも健在。
円盤の表面がぼんやりと白く輝き出す。
エネルギーを充填して、シールドを張りなおそうとしている模様。
しかしそれを許すわけもなく、宇宙戦艦「たまさぶろう」より第二射として放たれたホーミングレーザー(極太)らが、シールドに開いた隙間から突入。
巨大円盤に次々と突き刺さっては、風穴を開けていく。
と、次の瞬間。残っていたシールドが完全に消失。
それを成したのは地上に出現した富士丸から放たれたロケットパンチ。
轟々と唸りを上げてぎゅるぎゅる回転しながら飛ぶのは左の拳。シールドに触れたとたんに盛大な火花を散らすも、拮抗していたのはほんのわずかな時間。
外圧に弱っていたシールド側がこらえきれずに、ミシミシ悲鳴をあげて、ついに砕け散った。
ガードががら空きとなったところに、今度は右の拳が迫る。
下方より円盤の腹へと突き刺さった拳は、容赦なく内部を蹂躙して、そのまま上方へと抜けていく。しかも飛んで行ったモノはきちんと帰ってくるので、突き抜けたロケットパンチが、ふたたび振り下ろされる格好となり、円盤のカラダには二本の立派なトンネルが、突貫工事で開通することになってしまった。
ほうぼうにて爆発を起こし、火を吹き、黒煙をあげる巨大円盤。
ぐらぐらと揺れながらも上昇を開始。
いったん距離をとり態勢を立て直す算段らしいが、そうはいかない。
ルーシーエアフォース主力機、空飛ぶえんぴつこと「ハイエンドペンLG」三百機がこれを追撃。ブンブンまとわりついては、外宇宙の航行にも耐えうる壁をガリガリねちっこく削る。
ほどよく装甲が薄くなったところで、今度は死の乙女セレニティ・ロードたちが大挙して飛来。ワラワラと円盤表面にとりつき、外装をべりべり引っぺがす。
外皮をはがされ、肉もかき分けられて、中身が見え隠れしているような状況になったところで、マッドなセミ人間グランディア・ロードたちが白衣の裾を翻しながら、編隊を組んで襲来。ペカーと怪光線を放ち、内部を変質魔法で腐食、破壊していく。
一見すると角砂糖にたかるアリの群れのごとく、無秩序な蹂躙劇にみえて、そのじつキチンと対象の構造を見極め、大切な箇所に致命的なダメージを与えていくエアフォースとセレニティとグランディアたち。
しばらくすると張り付いていた面々が一斉に離脱。
そのタイミングで上空より円盤に降り注いだのは、リスターナ領内北部地下にある秘密要塞から放たれた、大陸間弾道ミサイルっぽいやつの群れ。
新旧入れ替えのための在庫一掃セールにつき、大盤振る舞い。文字通りの雨あられ。
それらに混じっていたのはでっかい青竹。これは竹姫ことバンブー・ロードの竹林より遠投で放たれた竹槍。
他のミサイルのように派手な爆発炎上をしない代わりに、相手に突き刺ささるのと同時に、もの凄い勢いにて四方八方に枝葉や根を伸ばしては、円盤のハラワタを喰い破るようにして大繁殖を開始する。おかげで円盤のそこかしこから立派な青竹がひょっこり顔を出すことに。
これまでゆっくりと上昇を続けていた円盤の巨体が、ついにその身をぐらりと傾げ失速。
ふらふらと地表に向けて落下を開始した。
この様子を眺めていたのは、地上に展開されていた部隊の面々。
左翼を固めるのは、対近接戦闘では無類の強さを誇るアリ人間ことオービタル・ロードたち。赤と黒の女王らに率いられた武闘派集団が、いまかいまかと手ぐすねを引いて獲物が落ちてくるのを待っている。
右翼を担当するのは、ゴードン将軍率いる新生リスターナ軍の精鋭。二刀流の剣の達人であるエタンセルを中心にした魔族の移住組もこちらの傘下に組み込まれてある。
中央にて陣をはるのは、強力な銃火器類で武装したルーシーズで構成されたアーミー。
ここに白光の鎧を身にまとい、愛用の片鎌槍を手にした鬼メイドのアルバ。八本足の多脚砲台にのったしゃべる魔導書や神殺しの剣テュルファングの姿もあった。
1
お気に入りに追加
637
あなたにおすすめの小説

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

退役騎士の居候生活
夏菜しの
恋愛
戦の功績で騎士爵を賜ったオレーシャは辺境を警備する職に就いていた。
東方で三年、南方で二年。新たに赴任した南方で不覚を取り、怪我をしたオレーシャは騎士団を退役することに決めた。
彼女は騎士団を退役し暮らしていた兵舎を出ることになる。
新たな家を探してみるが幼い頃から兵士として暮らしてきた彼女にはそう言った常識が無く、家を見つけることなく退去期間を向かえてしまう。
事情を知った団長フェリックスは彼女を仮の宿として自らの家に招いた。
何も知らないオレーシャはそこで過ごすうちに、色々な事を知っていく。
※オレーシャとフェリックスのお話です。


城で侍女をしているマリアンネと申します。お給金の良いお仕事ありませんか?
甘寧
ファンタジー
「武闘家貴族」「脳筋貴族」と呼ばれていた元子爵令嬢のマリアンネ。
友人に騙され多額の借金を作った脳筋父のせいで、屋敷、領土を差し押さえられ事実上の没落となり、その借金を返済する為、城で侍女の仕事をしつつ得意な武力を活かし副業で「便利屋」を掛け持ちしながら借金返済の為、奮闘する毎日。
マリアンネに執着するオネエ王子やマリアンネを取り巻く人達と様々な試練を越えていく。借金返済の為に……
そんなある日、便利屋の上司ゴリさんからの指令で幽霊屋敷を調査する事になり……
武闘家令嬢と呼ばれいたマリアンネの、借金返済までを綴った物語

おめでとうございます!スペシャルギフトが当選しました!
obbligato
ファンタジー
ごくごく普通の少年陸人(リクト)は、床下で発見した謎の巻物によってまんまと異世界に飛ばされる(笑)
次々と現れる狡猾で横暴で冷酷無慈悲な敵を半強制的に仲間に加え、彼らとの生ぬる~い友情を支えに様々な困難を乗り越え奮闘する(※時には卑劣な手や姑息な手も使いながら)冒険カオスファンタジー。
⚠主人公がチートで無双してハーレム作るなどといった王道展開は一切ございませんので、期待しないでください。
⚠これは破格ファンタジーです。シリアスで手に汗握るような本格的なファンタジーではありませんので、閲覧は自己責任でお願いします。

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。
アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。
両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。
両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。
テッドには、妹が3人いる。
両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。
このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。
そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。
その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。
両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。
両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…
両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが…
母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。
今日も依頼をこなして、家に帰るんだ!
この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。
お楽しみくださいね!
HOTランキング20位になりました。
皆さん、有り難う御座います。

凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる