神造小娘ヨーコがゆく!

月芝

文字の大きさ
上 下
149 / 153

149 忘れられし女神編 次元回廊

しおりを挟む
 
 そこはふしぎな空間だった。
 巨大な螺旋回廊がどこまでも続いている。そんな中をゆっくりと落ちていく。
 落ちると思えば落ちるし、止まろうと思えば止まれる。でもやっぱり進んでいる。浮かんでいるのに沈んでいる。意識と体感に奇妙なズレがあって、なんだか落ち着かない。
 壁面にはびっしりとテレビのモニターのような画面が無数に連なり、その一つ一つにて様々な光景が映し出されている。
 いろんな世界、いろんな時代、いろんな文明、いろんな姿の人々、一家団欒などの生活の一部分を切り取ったかのような場面もあれば、思わず目を背けたくなるような凄惨な戦争が繰り広げられている場面もあった。なかには何も映し出されていない画面もある。アレは滅んでしまった世界なのだろうか。

「すごい……、ここが次元の狭間なんだ」

 SFなんかではお馴染みの並行世界とかいう設定。選択のたびに絶えず世界は分裂を繰り返して無限に増えているとかいう話もあったけど。
 この膨大な数を突きつけられたら、あながち間違ってもいなかったみたいだね。
 小難しい理屈とかをすっとばして真理に辿りついちゃうんだから、ヒトの持つ想像力って、本当にたいしたもんだわ。
 と、感心ばかりもしていられない。
 先に来ているはずのアイツはどこ……っと、見つけた!

 自分より遥か下の方にて蠢いている怪物を発見。
 私は手足をすぼめて体を棒状にし、矢のごとくギューンと加速。ひと息に距離を縮める。充分に目視できるところまで近寄ったところで、猫目ビームを一発放つ。
 光線が走り、ヘドロのような体の一部を貫通し破壊するのに成功した。

「よし! 同じ次元に居合わせさえすれば、こっちの攻撃が通るぞ」

 目論み通りの展開にニヤリとする私。
 だけど余裕があったのもここまで、どうやらいまの一撃にて完全に敵認定されてしまったらしい。
 奴が猛然と反撃を開始する。
 ばさりと一枚布のように広がる怪物の体。
 表面より数多の触手が出現、こちらへと向かってきた。先端がヒトのような形状をしている。それはヒトそのもの、あるいはギガヘイルの怪人たち、なかには六柱の姿も混じっていた。それらが軍勢のごとく押し寄せてくる。
 片っ端から猫パンチで払いのけ、猫キックで吹っ飛ばし、猫爪で斬り伏せる。
 けれども潰れた端から再生しては、再び戦線に戻ってくる敵兵ども。
 ちまちま相手をしていたら埒があかない。変身してマグロフォームにて「銀鱗舞(ぎんりんぶ)」を放ち一掃、再生が完了するまえに敵本体に「マグロ・ストリーム」をお見舞いし、続いてフクロウフォームにて「フクロウ・フェザーレイン」「フクロウ・ダウンバースト」をも直撃させることに成功するが……。

「ちっ、たいして効いちゃいないか」

 雑兵や触手は無残に千切れ、多少は痛かったのか胸像の姿にて叫びの表情は見せてくれたものの、怪物本体はいまだ健在。
 再び体の形状がのそりと変化していく。

 現れたのは巨大モンスター。
 ただし、かつて見たことがないほど醜怪なもの。
 ベースの形状はドラゴン、だが下半身がクモ、胸の部分に女神の顔があり、背にはコウモリの翼、尻尾は蛇腹、そのくせ両腕だけが妙に艶めかしい女人のものが生えている。
 まるでドレイク博士の産み出した怪人、その失敗作のような歪な姿。ヒトの本能に訴えかける何かがあり、眺めているだけで嫌悪と憎悪が募る。心がザワつく、冷静でいられない。だというのに波立つ心の一方で、驚くほど醒めた目で現実を直視している自分がいる。
 ハウンド師匠との修行にて散々に「焦るな」「心を乱すな」と言われて続けてきた。
 その意味をここにきて真に悟る。

 どうしてこの形なんだろう?
 いまさら巨大モンスターの合成獣? 
 そんな疑問の答えに、ピコンと閃く私の優秀な灰色の脳細胞。

 巨大モンスター……。
 それは私たちの世界にとっては、恐怖の象徴みたいなモノ。
 そしてこの女神もどきには、実に多くのヒトたちの思念やら想念やらがドバドバ注ぎ込まれている。つまり彼女の中にて渦巻くもろもろが多数決をした結果、これが一番、強くて恐ろしい存在ということになったのであろうと推察される。
 だがそいつは悪手だ。
 なにせ私は対巨大モンスター戦のスペシャリスト。しかもキチンとした形をとってくれたおかげで、こちらの得意攻撃が存分にふるえるという嬉しいオマケつき。
 ご都合主義の神さま、バンザイ!
 いるのかどうかはわからないけれども、とりあえずお礼を云っておきます。「ありがとう」


しおりを挟む
感想 29

あなたにおすすめの小説

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

家庭菜園物語

コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。 その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。 異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

修学旅行に行くはずが異世界に着いた。〜三種のお買い物スキルで仲間と共に〜

長船凪
ファンタジー
修学旅行へ行く為に荷物を持って、バスの来る学校のグラウンドへ向かう途中、三人の高校生はコンビニに寄った。 コンビニから出た先は、見知らぬ場所、森の中だった。 ここから生き残る為、サバイバルと旅が始まる。 実際の所、そこは異世界だった。 勇者召喚の余波を受けて、異世界へ転移してしまった彼等は、お買い物スキルを得た。 奏が食品。コウタが金物。紗耶香が化粧品。という、三人種類の違うショップスキルを得た。 特殊なお買い物スキルを使い商品を仕入れ、料理を作り、現地の人達と交流し、商人や狩りなどをしながら、少しずつ、異世界に順応しつつ生きていく、三人の物語。 実は時間差クラス転移で、他のクラスメイトも勇者召喚により、異世界に転移していた。 主人公 高校2年     高遠 奏    呼び名 カナデっち。奏。 クラスメイトのギャル   水木 紗耶香  呼び名 サヤ。 紗耶香ちゃん。水木さん。  主人公の幼馴染      片桐 浩太   呼び名 コウタ コータ君 (なろうでも別名義で公開) タイトル微妙に変更しました。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

処理中です...