神造小娘ヨーコがゆく!

月芝

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133 忘れられし女神編 修行総決算

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 かつて崩落に巻き込まれて落ちた挙句に、何日も彷徨い、なんとか生還を果たした地底の大迷宮。
 黒猫の着ぐるみ姿にて向かうは、巨大アリどもの地下帝国。
 陸での修行の仕上げとして私が選んだのが、そこであった。
 逃げ場のない洞窟内部、闇の中をひたすら進む。
 絶え間なく押し寄せるアリども、その中を平然と歩く。すれ違いの刹那、猫爪で素早く急所をひと突きにて仕留める。無駄なく無理なく淡々と。
 やがて辿り着いた広大な最深部。
 その中央にて鎮座するは、通常の数倍はあろうかという巨大な錆び色をした女王アリ。
 これを守護するかのように控える、くすんだ銀色のアリども。おそらくは女王の親衛隊なのだろう。発する気配が雑兵どもとはまるで違う。
 そして空間すべてを埋め尽くすほどの黒アリたち。
 とんでもない数の中へ「にゃあー」と気合を入れて、突っ込んでいく黒猫の着ぐるみ。猫爪の一閃にて百体ほどの巨大アリたちが両断される。これはあり得ないほどまでに、にょきんと伸ばした一本爪による攻撃、その名も「猫爪・斬」
 切れ味はかくのごとし。

 数日ぶりに地上へと戻ると太陽の光がやたらと猫目に染みる。
 結局、女王アリは見逃した。
 さすがに自分が強くなるためとはいえ、種の根絶はやり過ぎだろう。
 まあ、あいつらの繁殖力は凄まじいから、しばらくしたらまたワサワサ復活していることであろう。

 かつては苦戦した灰色猿や赤いカマキリをも片手で制し、そろそろ総仕上げに取りかかることにする。
 最後の相手はずっと前から決めていた。
 狙うは巨大な青いスライム。この島の最強の一角に君臨する奴を倒し、これをもって修行の決算とする所存。

 森の奥で対峙する黒猫の着ぐるみと青いスライム。
 直接攻撃は厳禁、アッと言う間に取り込まれて消化されちゃう。かといって猫目ビームはもっと駄目。内部にて乱反射して無差別砲台と化すので。
 ふぅ、と息吹を吐き心を鎮める。
 半身を引き、やや腰を落とし、右の拳を握りしめ、手の甲が下になるように引き、正拳突きの構えをとる。

「にゃん!」気合もろとも、脇の辺りにまで引いた拳を、腰の回転に合わせて突き出す。途中で手の甲が上になるように内側へと捻り、螺旋が産み出す破壊力を加え、猫パンチを繰り出す。

 ドンッ! という音がして、拳が何かを突き抜けた。

 発生した拳圧が青いスライムにめり込み、押し広げるようにして奥へ奥へと進み、貫通して大きな穴を開ける。それだけでは留まらずに、ついには引き千切るかのようにして青い体を二つに割いてしまう。更には森に突如として長い一本道を出現させるに至る。

「おお、なんて威力だ! よし、この技は『猫パンチ・インパクト』と名付けよう」

 あとはコレを任意に使いこなせるようにならなければ……。
 なんぞと考えていたら、モゾモゾと千切れたはずの青いスライムが動きだして、にゅるんと合体して復活!?
 途端に鮮やかな青い色が、急激に毒々しい血のような赤い色へとなっていく。
 これは間違いなく怒っているね。たとえ言葉は交わせずとも、それぐらいは見ていればわかる。
 ゾゾゾと黒猫の尻尾が逆立つ。
 あー、これはダメなやつだ。
 私は回れ右をして、一目散に逃げ出した。
 うにゃーん。


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