神造小娘ヨーコがゆく!

月芝

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132 忘れられし女神編 モンスターアイランド再び

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 編隊を組んで襲ってくるドラゴンどもと一戦交え、住人らから手荒い歓迎を受けつつ、ようやく帰ってきました巨大モンスターらの楽園。
 あいもかわらずデカい怪鳥やら怪虫がゴロゴロしている。
 この島の領域が「獄界」と呼ばれていることを知ったのは、ギルドの見習い職員になってしばらく経ってからのこと。
 資料室にあった本に書いてあった。なんでも危ないのがウロウロしているので、何人も近づけない未踏破の地域として、地図上でも空白地帯となっているんだそうな。
 子どもの神さまも、とんでもないところに放り込んでくれたものである。
 もしも第二、第三形態が解禁されなかったら、一生ここで暮らすはめになっていたよ。

 久しぶりに戻った岩穴は、とくに何も変わっていなかった。
 とりあえず隅っこに山積みとなっている魔石を、邪魔なのでウエストポーチに収容する。適当に掃除したり、片づけているうちに早や陽が暮れて、帰郷? 一日目は終了した。

 私がこの始まりの地へと戻ってきたのは、修行を一からやり直すため。
 悩んだらとりあえず原点回帰。
 と某有名な作家さんがインタビュー記事で語っていたのを読んだことがある。デビュー作を読み直したり、好きな作品に触れて、再びあの頃の情熱を取り戻しスランプを脱出するとかしないとか。
 異世界へとやって来た頃は生きるだけで精一杯、がむしゃらに変身能力頼みで戦っていた。でも今の私は違う。ハウンド師匠より多くを学び、修練を重ね、様々な強敵との闘いを経て、見かけはともかく中身はグングン成長したはず。
 これをもって超野生の王国のテッペンを獲る。そして更なる高みへと至り、師匠の仇を討ち、ルギウスをぶっ飛ばし、ギガヘイルの野望も止めるのだ。
 期限は三ヶ月。



 風に揺れる柳の葉のごとく、ゆらりゆらりと空を漂い、迫りくるドラゴンどもの猛攻を最小限の動きにてかわし続けるフクロウフォーム。
 生ける伝説の武人であるハウンドさんをして「自分よりも能力は上」と云わしめた私のちんちくりんなこの体。
 子どもの神さまに魂レベルから改造を施されたコレは、基本的に成長はしない。
 いくら鍛えようとも、筋肉モリモリにはならない。ようはコレはコレでひとつの完成形。そのことは師匠との修行を通じて早々に発覚した。
 だから私に課せられたのは、いかにして自分の体を完璧に使いこなせるようになるのかということ。
 初期の私は、いきなり世界最強の神剣を渡された村娘状態。素人に名刀を与えたところで使いこなせるわけがない。むちゃくちゃに振り回していたのが、かつてこの島で暮らしていた頃の私。
 指導を受けて、それなりに振れるようになったのが今の自分。村娘が女騎士ぐらいにはなったか。それでもまだ六割程度だとはハウンドさんの言葉。
 これを十割もしくはそれ以上とすべく、私は限られた時間の中で必死に模索している。

 ドラゴンどもと戯れているのも、修行の一環である。
 戦いに派手さはいらない。余計なモノを極力省いていったら、自然とこのような動きとなっていた。防御の体勢はとらない。それは活動停止にも等しいことだから。
 イクロス王子が常日頃から「敵の攻撃なんぞ当たらなければいいだけのこと」と言っていた意味をようやく理解する。
 いちいち身構えて防ぐより、避ける方がずっとラク。すかさず攻勢に転じられて隙も少なくてお得。
 猛然と迫ってきたドラゴンをひらりとかわし、すれ違いざまに後頭部にスコンとチョップで叩く。たまにラリアットを決める。たったこれだけの動作で、意識を失いきりもみ落下していく大空の覇者たち。
 あえて殺さずに制圧を試みる。
 空での修行の総決算として臨んだドラゴン退治は、私の完勝でもって終了した。

 マグロフォームにて海中を進むと、目当ての集団を発見する。
 ソードフィッシュと私が勝手に命名したモンスター。
 その姿は完全に両手剣である。大きさは魔甲騎兵のやつぐらいもある。切っ先から突っ込むかのようにして、触れるモノみな切り裂きながら水中をもの凄い勢い泳ぐ。しかも群れで。
 これに襲われたら、さしもの巨大サメも一方的にズタズタにされて、ミンチにされてしまう。
 私は先回りをして群れの前に立ちはだかる。
 正面より殺到する剣の群れ。
 これを微動だにせずに、受け流す。
 全身を覆う銀のウロコ、その一枚一枚を操作して角度や傾斜を瞬時に産み出し、突き立たんとする鋭い切っ先を逸らし、刃を逸らす。こうやって斬撃そのものを完全に殺す。
 ハウンドさんが得意とする『気糸』にヒントを得て編み出した技。「銀鱗舞(ぎんりんぶ)」と命名したこの技は、師匠のように広範囲をカバーできない代わりに、大半の接近攻撃に対処可能。そしてこの技の真骨頂はココからである。
 私を中心にして渦を巻くソードフィッシュたち。いつもと勝手が違うながらも、なおも執拗にこちらを攻め滅ぼさんと群がる。
 その渦が瞬次に切り裂かれて、刀身が粉々となり、群れが全滅した。
 為したのはマグロフォームより発射された無数の銀のウロコたち。全方位に向かって放たれたソレがモンスターどもを屍に変えたのだ。
 マグロの女体を覆う銀のウロコは、放った端からまるで銃の次弾のように自動で装填され、尽きることがない。ゆえにこの技を用いれば機銃掃射のような攻撃が可能。
 可能性を模索し続けた結果、得られたマグロフォームの新しいチカラ。
 これをもって海での修行を終えた私は帰島する。


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