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131 忘れられし女神編 ルギウス 後編
しおりを挟む一つの世界の存亡を賭けた神々の争い。
終止符を打ったのは私と女神シイハ。協力して、どうにか最後の神を倒すことに成功する。
戦い当初、敵は五柱、対するこちらは異世界渡りの勇者と女神が一柱。
いかに多くの種族を味方につけようとも、勝ち目は薄いと私は考えていた。
だが勝敗の天秤が突如として、一気にこちらに傾く。
竜機人コロナの出現である。
なんの前触れもなく、ふらりと金のドラゴンの背に乗って現れた女。シイハより事情を聞いた彼女は手にした双剣でもって、瞬く間に神の二柱を葬るという離れ業を見せた。そして「すみません。そろそろ帰らないとマスターがスネますので」と、何処へともなく去ってしまう。
造作もなく神殺しをしてのけた女。それを従える更なる存在がいることに、私とシイハは開いた口が塞がらなかった。
いきなりに二柱を失い、あまりのことに動揺する敵陣営。その隙をついて私とシイハも一柱ずつ撃破することに成功する。それを経て私の身は半神となる。これは勇者と神のチカラを半々に宿した存在。
これをもって最後の戦いをなんとか制したのだが、それが悲劇の始まりだった。
『神殺しの大罪人どもめ。我らの無念、その身をもって受けるがいい』
呪詛の言葉を吐き、消滅する最後の一柱。
奴が残したのは忘却の呪い。
世界から忘れ去られる。それは神の身を蝕む死の病にも等しいモノだと、じきに思い知る。
ついさっきまで喜びを分かち合い、勝利の盃を掲げていた同志が小首を傾げる。
「ところで見かけない顔だな。あんたら誰だ?」
戦勝の祝杯に酔っているのかと思った。
だが違った。
苦楽を共にした仲間たちのみなが、私たちの記憶を失っていたのである。誰一人とて、こちらを覚えていない。なかには不審な目を向けてくる者までいる。
直後にシイハが倒れた。
信仰などの想いが神を形造る。それが失われたということは、体を維持できないということ。
忘れられし女神に待つのは消滅あるのみ。名前を呼ぶことすら許されないと知り、愕然となる。
世界のために、みんなのためにと頑張った挙句が、この結末か。
これでは先の私と同じではないか。
また私はすべてを失うのか。
そんなこと、そんなこと、断じて認められるものか!
昏々と眠る彼女の体を水晶柱に封じ込め、時の流れを抑えて、延命処置を施す。
私の場合は半神であったがゆえに、呪いの効力も半減されたようだ。だがそれでもチカラの減退はゆるやかに進行している。すべてが尽きる、その前に、何としてでも彼女を救う方法を見つけ出さなければならない。
「待っていてくれ、※※※。必ずキミを救ってみせる」
この時より、私の長い苦悩の旅が始まった。
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