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115 永遠の国編 異質と異形
しおりを挟むどういう意図か、ドレイクは嬉々として施設内を案内し、秘事であるはずの怪人についてのことも詳細に説明する。難しい点などは、あえて子どもにもわかるように、簡単な言葉や表現を用いて、それこそ噛んで含めるかのように教えてくれる。
ひと通りまわり終えた後は、お茶に誘われる。
案内されたのは立派なソファーやテーブルが並ぶ応接室。準備は、いつの間にか姿を消していたアナがしてくれていた。
ドレイクと私は向かい合わせにソファーへと腰を下ろす。給仕はアナが担当する。
熱々の湯気を立てるカップ。警戒してなかなか口をつけようとしない私に、ガイコツの顎がカタカタ揺れて愉快そうに声をあげる。
「心配しなくても何もヘンなモノは入ってないよ。それよりも、こちらは手の内をすべて晒したんだから、こんどはキミの番だよ。さぁ、教えてくれたまえ。ヨーコくんは誰の手によって、生まれ変わったんだい?」
ドレイクがここまでしたのは、すべてこの質問のため。
彼はそれほどの価値が、私の体にあると判断したのだ。
どうしたものかとしばし思案した後に、私は我が身に起こったありのままを彼に伝えることにした。誤魔化したところで騙されてくれるような相手ではない。一切の誇張も偽りもなしだ。子どもの神さまや異世界転移についても教えてやる。信じないのならば、それでもかまわない。
なのにドレイクは、訳知り顔にて「さもありなん」とつぶやいた。
あんまりにも当然のごとく受け入れるので、こっちのほうが戸惑ったほど。
「神の存在ならば重々承知している。異世界渡りについても知己があってな。もっとも、それらがなくとも私は信じただろうがね。なにせキミの珍妙な変身体は、明らかにこの世界の造型とは異なる。その異質さだけでも、信じるに足ると私は判断するよ」
頭でっかちの黒猫の着ぐるみ姿に関しては、これまでも散々な酷評を受けてきた。
よもや数多の異形な怪人どもを産み出し続ける、ガイコツ博士からまで「ヘン」と言われようとは……。
ある意味、世界レベルでの奇妙な存在というお墨付きをもらったみたいで、私の心はたいそう傷ついた。
と、そんなことより、他にも異世界から来たヒトがいるの?
「ああ、神世の時代に、勇者として女神に招かれた男がな」
そう言って立ち上がったドレイクが、つかつかと壁際へと移動する。
あまりにも自然な動きにて、なんら疑うことなくそれを眺めていた私の体が、不意に空中に投げ出される。
パカンと床が割れたのだと気づいたときには、すでに遅し。
「ごめんね、ヨーコちゃん。先生のご命令だから」
アナの申し訳なさそうな声を土産に、私は奈落へと落ちていく。
暗闇と浮遊感。
だが慌てない。さすがに何度も落下の経験をしていると、心に余裕がある。
落ちながら考えるのは、今後の展開について。
フクロウフォームになって上に向かうことは簡単だが、それは控える。わざわざ落とし穴なんていう、古典的な罠にハメたところから察するに、ドレイクは私の身柄を欲している。
たぶん純粋に研究対象として興味があるんだ。神が作ったという、この体に。
だから逃がさないために、こんな回りくどい手段をとったのであろう。となれば、奴は必ず私のもとに姿を現す。
下手に暴れて逃げられたら面倒だな。
いいだろう、そこで決着をつけてやる。
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