神造小娘ヨーコがゆく！

95 ヒト喰いの地編 黒いゴーレムその1

　
「鉱山の様子がおかしい？」

　師であり冒険者ギルドのマスターでもあるハウンドさんに呼び出されたら、お城の工房責任者のおやっさんの姿があった。機械が好き過ぎてめったに工房から表に出てこないのに珍しい。槍でも降らなければいいんだけど……。

　おやっさんの話では、なんでも近頃、資材の搬入が滞っているんだとか。
　それで業者をせっついたら怪しげな話が出てくる。
　各地の鉱山や資材所などが黒いゴーレムの襲撃にあって、資材を奪われるという事件が多発しているんだと。その影響が市場にも出ている。軍需用品が遅れるぐらいだから、民間レベルだともっと深刻らしい。
　で、これまでにもギルドや軍部の方から調査員が派遣されていたのだが、どうにも結果は芳しくないとのこと。
　相手は神出鬼没につき、出現してから駆けつけても間に合わない。かといって張り込むにも場所が多く拡散しすぎて、とてもではないが全部は無理。挙句にたまたま遭遇したらしたで、まるで敵わなくて蹴散らされてしまったという。

　まぁ、その話は脇へと置いておいて、せっかちなおやっさんは事件のせいでグズついている流通に業を煮やして、自分から資材を引き取りに行きたいと考えた。
　しかし一人だと大変だし、なにより運送に手間と時間がかかる。
　そこで目をつけたのが私というわけ。なにせ大容量のアイテム収納機能つきのウエストポーチを持っているからね。しかも警備員代わりにもなるので一石二鳥。
　ぜひとも私を借り受けたいと、ギルドに直談判にきたそうな。
　私の身分は表向きはギルドの見習い職員だから筋違いの気もするが、おやっさんにはバイクを始めとして色々と作ってもらったりしているので、とってもお世話になっている。だから引き受けることにした。

　街道を爆走する魔導二輪車。
　オフロードタイプのバイクに跨る黒猫の着ぐるみ、後ろにはおやっさんがしがみついている。
　このヒトってば色々と作るくせに、操縦にはまるで興味なし。魔甲騎兵にもバイクにも搭乗しない。だからこうして二人乗りをしているわけさ。

「最初に話を聞いたときには、二輪なんて不安定なもんが真っ直ぐに走るのかと思っていたが、なかなか快適なもんだな」

　後部座席で感心するおやっさん。どうやらバイクの良さを理解してくれたようでなにより。こっちの世界って三輪バギーみたいなのはあったのに、二輪はなかったんだよね。理由は先に彼が述べた不安定さ。
　都内ならばともかく、外だと街道以外はわりとデコボコな地面が多いから、それも無理のないことなんだけど。それでも変身とくればバイクは外せない。そしてバイクといえば二輪なのだ。三輪や四輪だとなんだかしっくりこない。
　だから作ってもらったのだが、思いのほかに出来がいいのに驚いた。魔甲騎兵の技術の応用らしいのだが、バネが効いており衝撃を吸収してくれるから、あまり跳ねることなく安定した走りを実現している。動力部や燃料も流用したとのこと。余っていた資材で組んだと言うが大したモノである。さすがはおやっさんだ。

　適度に休憩を挟みつつ、二日ほどかけて目的地となる鉱山へと到着する。
　そうしたら、いきなり外れクジを引いた。
　噂の奴が暴れている！
　そういえば忘れていたよ。私は商店街のクジにて三十連続でポケットティッシュを引き当てた伝説の女。そのクジ運の悪さには定評があったということを。