神造小娘ヨーコがゆく!

月芝

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81 ギルドの女ガンマン

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 ナイフ一本とて、使う者によっては必殺の武器となり得る。
 海底神殿にてイレーンと名乗ったラミアと対峙して、改めて魔導銃の怖さを思い知った私。ハウンド師匠に相談したら、何故だかサブマスターのミアさんが登場。
 ミアさんに連れられて行ったのは、ギルドの地下にある射撃場であった。

「まずは魔導銃に触れてみて、実際にどのような武器なのかを知りましょう。よく知ってさえいれば、正しく対処することも可能ですから」

 そう言ってミアさんに手渡されたのは一丁の魔導銃。ギルド職員に護身用にと支給されているのと同じ小型のもの。でも……。

「これって魔力ゼロ娘でも撃てるの?」

 魔導銃とは魔力を用いて弾丸を発射する武器。当然のごとく魔力を込めないと、うんともすんとも言わないハズなのだが。

「問題ありません。それは弾丸に魔力が内包されているタイプなので、誰にでも扱えるようになっています」

 ミアさんの話によると、ひと口に魔導銃といっても色んなタイプがあるそうな。
 弾そのものに細工が施されている簡易的なモノから、自身の魔力により弾丸の形成や威力を調節できる高度なモノまで、実に多種多様なんだとか。
 ちなみにイレーンが扱っていた黒い銃は、超一級品であったらしい。威力や連射速度、射撃精度に加えて、属性変化まで自在だなんて、ありえないとミアさんも驚いていた。銃そのものにも。それを扱うイレーンの腕前にも。
 あの蛇女、かなりおっかないヒトだったみたいだね。

 と、ひと通りの説明が終わったところで、ミアさんがお手本を披露。
 彼女は片手で銃を構えると引き金をひく。
 放たれた弾丸は、次々に標的へと吸い込まれいく。かなりの手並みだ。

「もしかして、ミアさんってば、射撃がお得意?」
「そうですね。これでもギルド主催の大会で優勝とかしたこともありますから。得意と言って差し支えないかと」

 てっきり事務畑なのかと思いきや、彼女にこんな特技があったとは驚きである。
 だからこそ師匠は彼女に任せたのか。

「とりあえずヨーコも撃ってみましょう。すべてはそれからです」

 ミアさんに促されて、両手にて銃を構える。
 武器を持つ手が微かに震える。散々に荒事をこなし、血に塗れてきたというのに、今さらどうして? もしかしたら元の世界で刷り込まれた、銃火器に対する認識が影響しているのかも。これは恐怖というよりも忌避感に近いのかな。
 心を落ち着けて深呼吸の後に引き金をひく。
 火を噴く銃口。
 指先の感触は思いのほかに軽かった。
 そして発射された弾丸は、的には当たらずに天井と床をキンコンと往復した。

 あれ?

「とりあえず、もう一度、撃ってみましょうか」

 気まづい沈黙の後に、ミアさんに促されてもう一度行う。
 今度は床と天井と床を反射して、キンコンカンという間抜けな音が射撃場に響き渡った。
 その後も、ひたすら引き金をひく。
 しかしムキになるほどに、ますます的は遠ざかり、弾丸は明後日の方向へと飛んでいく。
 無駄弾が百を超えたところで、さすがにリアさんが止めた。

「ここまで下手なのも珍しい……。いや、もしかしたらヨーコの身と、銃に使用されている魔導科技術が、何らかの反発でも起こしているのかもしれません」
「えーと、それってつまり、どういうこと?」
「ヨーコと魔導武器との相性は最悪だということです」

 人生、ときには諦めも肝心。ここはスパっと諦めましょう。ってリアさんに云われた。
 とりあえず魔導銃の見識を深めたということで、強引に銃講義の幕を下ろされた。
 うにゃーん。


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