神造小娘ヨーコがゆく！

74 ラングドア国編 海賊団、壊滅！

　
　樽型機雷の集中爆撃。
　衝撃により舞い上がった塵芥が視界を塞ぐ。
　じきに潮流によって暗闇が払われていく。
　薄闇の中に悠然と立つ女。
　その姿を見た瞬間、ハリセンボン怪人は動いていた。
　両方の手の平から特大のトゲを取り出し、これを射出。理性ゆえの行動ではない。本能が「こいつはヤバい」と反応したがゆえの、自己防衛からの動き。
　水の中を走るように向かった二本のトゲは、狙いあやまたず女の身へと突き立つ。
　それでも女は倒れない。放ったトゲは掴み取られていた。
　怪人が驚愕するも、次の瞬間には苦悶の表情となる。トゲが自分の両の太腿から生えていたからである。投げ返されたのだと気づいたときには、すでに眼前へとマグロ頭の女が迫っていた。

　海中を銀閃が疾走する。

　咄嗟に海賊団のボスは身をよじってかわそうとするも、時すでに遅し。
　衝撃が体を駆け抜ける。左肩から右腰にかけて両断された上半身が、血煙をあげながら、ゆっくりとずり落ちていく。

「がぁ！　すみませ……ん。イレーンさ……まぁ……」

　ボトリと半身が海底へと落ちる。
　同時にピカッと光り、ハリセンボン怪人は爆発して果てた。

　不意に背後からの衝撃にて吹っ飛ばされる私。
　ふっ、決まった！　とか調子に乗ってドヤ顔にてポーズを決めていたら、ドンときた。間抜けにも背中を蹴っ飛ばされたような格好にて、盛大にヘッドスライディング。
　銀のウロコに覆われたマグロフォームはよく滑り、海底から出っ張った岩に顔面をぶつけることで、ようやく止まった。

　あイタたたた……、魚面の先っぽ打った。
　それにしてもビックリしたな。怪人って泡になって消えるばかりじゃなかったんだ。あんな風に爆発する奴もいるんだな。今度から注意しよう。
　と、闘いはまだ終わっちゃいなかった。
　海面を見上げると、視線の先に大型の船を発見。樽型機雷を降らしてくれた奴だ。たぶんアレがハリセンボンの野郎が乗っていた海賊船なのだろう。

　そちらにむけて大口を開けて「マグロ・ストリーム」を放つ。
　激しい水流が渦となって船底に激突。そのまま貫通し船体を抉り突き抜ける。巨大な船体は中央部分より前後にビキビキと割れて大破。

　……なんとなく勢いでやっちゃったけど、人質とか乗ってなかったよね？

　不安を覚えた私はしばらくその場にて待機。それっぽい人が沈んでこないか見守るも、落ちてきたのは見るからに賊という格好の人ばかりだったので、ほっとする。
　とりあえず問題なさそうなので、近くに沈んできた大きなツボを一つだけ拾って、人魚の島へと戻ることにした。

　世話になっている商船のところまで戻ると、さっそく船員らとツボの中身を確認。
　わお！　金貨がザックザク。

「これで頑張ったみんなにお酒でも奢ってあげて」

　私は気前よく船長さんに丸投げしておいた。
　ああ、これってネコババじゃないよ。
　海での拾得物は拾ったヒトに権利があるのです。
　自分で沈めておいてなんだけど、今回は相手が海賊だし、ギリギリセーフということで。