神造小娘ヨーコがゆく!

月芝

文字の大きさ
上 下
72 / 153

72 ラングドア国編 海賊団の襲撃

しおりを挟む
 
 商船に揺られながら、海鳥を眺めていると思い出す。
 巨大モンスターアイランドから脱出して、新天地を見つけたときのことを。
 あの日の感動が蘇り、胸がジーンと熱くなる。
 うんうんと、感慨深げにマグロ頭を揺らしていたら、こっちに近寄って来る小型船が十ほど姿を見せた。メインマストの天辺にある見張り台から「海賊がでたぞー!」という声が降ってくる。
 連中は足の速い小型の船でこちらに乗りつけて、悪さをするつもりのようだ。
 付近に母船らしき大型船の姿はどこにも見られない。つまりこいつらは雑魚ということになる。まともに相手をするだけ時間の無駄。ドボンと海中に潜って連中の船底にヒレブレードで大穴をあけてやった。
 ブクブクと沈んでいく船上にて右往左往する海賊たち。彼らの姿はじきに船もろとも大海原に消えた。
 行きの襲撃はこれ一回きり、波も穏やかにて快適な船旅であった。

 人魚島というだけあって、島に近づくほどに人魚がうようよ泳いでいる。
 男女ともに美形が多い。下半身の尾ひれをおおうウロコの模様も色鮮やかで綺麗だ。でも何よりも私を驚かせたのが、女性たちの胸元……。
 ひと言でいえば小さい。ちょっと発育のいい小学生に負けるぐらいしかない。
 人魚といえば貝殻ビキニが似合う、バインバインなのを想像していたのだが、実物は恐ろしくスレンダーにて、無駄のないスポーツタイプの体をしている。
 港にて船の出入りをチェックしている人魚の女性警備員に、思い切って訊ねてみたところ、「胸? あんなのただの脂肪の塊じゃないか。泳ぐのに邪魔なだけだ」と言われた。
 夢と希望の塊のような存在のくせして、人魚たちはとっても現実的であった。

 商船は一晩を島で過ごし、積荷の上げ下ろしに勤しむ。
 その間、私はのんびりとリゾート気分でも味わおうかと思っていたのに……。
 宵闇に紛れて海賊どもが出やがった。それも行きの航路のような半端な数ではなくて大軍勢を率いて。船だけで五百は下るまい。乗組員らをざっと見積もっても千どころの話じゃない。軽く三千を超えているんじゃなかろうか。それらが島をぐるりと、取り囲むように迫ってきている。

「話が違うじゃない!」

 やり場のない怒りをとりあえず潮騒にぶつけておく。
 人魚島の防衛力がどれくらいあるのかわからないけれども、これはマズい。全方位から来られたら防ぎようがないぞ。
 逡巡している間にも、人魚の守備隊の一団が沖合の海賊船へと向かっていく。
 それを見た私は守りが手薄な方へと向かい、海へと飛び込んだ。

 沖の海賊船、それも大型なものには必ずといっていいほど海中にも警護の者の姿があった。
 海賊といっても色んな種族が混在しているので、なかには水棲種族もいる。それらが船底を守っている。

「マグロ・ストリーム!」

 問答無用で敵兵ごと薙ぎ倒し、船を豪快に沈めていく
 しかしこの技は胸焼けが酷く、連射にむかない。
 すぐに接近戦へと切り替える。
 殺到する雑兵どもをヒレブレードにてバッタバッタと薙ぎ倒し、海水を血で染めながら戦う。隙をみて船底に取りついては、大穴を空けるを繰り返す。
 ようやく自分の周囲から敵影が消えるまで一時間ほど。
 だが奮闘も虚しく、敵の一部は違う方角から上陸を果たしたらしい。
 人魚島の街から火の手が上がっているのが見えた。


しおりを挟む
感想 29

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

家庭菜園物語

コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。 その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。 異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

修学旅行に行くはずが異世界に着いた。〜三種のお買い物スキルで仲間と共に〜

長船凪
ファンタジー
修学旅行へ行く為に荷物を持って、バスの来る学校のグラウンドへ向かう途中、三人の高校生はコンビニに寄った。 コンビニから出た先は、見知らぬ場所、森の中だった。 ここから生き残る為、サバイバルと旅が始まる。 実際の所、そこは異世界だった。 勇者召喚の余波を受けて、異世界へ転移してしまった彼等は、お買い物スキルを得た。 奏が食品。コウタが金物。紗耶香が化粧品。という、三人種類の違うショップスキルを得た。 特殊なお買い物スキルを使い商品を仕入れ、料理を作り、現地の人達と交流し、商人や狩りなどをしながら、少しずつ、異世界に順応しつつ生きていく、三人の物語。 実は時間差クラス転移で、他のクラスメイトも勇者召喚により、異世界に転移していた。 主人公 高校2年     高遠 奏    呼び名 カナデっち。奏。 クラスメイトのギャル   水木 紗耶香  呼び名 サヤ。 紗耶香ちゃん。水木さん。  主人公の幼馴染      片桐 浩太   呼び名 コウタ コータ君 (なろうでも別名義で公開) タイトル微妙に変更しました。

処理中です...