神造小娘ヨーコがゆく!

月芝

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46 湖の都ピタカ編 魔導列車の車窓から

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 街道にも施されているモンスター除けの特殊石材が、ふんだんに盛り込まれた陸橋。自動迎撃システムも随所に設置されており、専門の守備隊が定期的に警邏を行っている。
 そんなところに通された線路上を直走るのは十一両編成の魔導列車。
 王都とハムート第二の都ピタカを結ぶ路線だ。
 こちらの世界にも列車はある。仕組みも動力が違うだけで大体同じ。ただし元の世界ほど網羅はされていない。なにせ大きなモンスターどもが闊歩しているので、必要最低限の範囲を管理維持するのが精一杯なのが現状。ハムートでも王都から三本ほど国内の主要都市に繋がっているのみである。
 この乗り物、前々から気にはなっていたのだが、チケット代もそこそこするし、フクロウフォームで飛んだ方が速いので乗る機会がなかった。
 それがこの度、タダで乗れることに!
 ギルドのサブマスターのお供だけどね。

 ギルドのサブマスターであるミアさんは、ぶ厚い黒縁眼鏡とお団子頭の見た目が地味な女史。
 実は私が初めてハムートへと来た際に、面倒をみてくれたあの衛兵のおっさんの奥さま。
 地味女と草臥れ男の冴えない夫婦。
 かと思いきや、どっこいそうでもないお二人。
 職場では女っ気を一切排除しているミアさんだが、自宅では伊達眼鏡を外し、髪を解き、明るい色の服を着て、化粧をして素敵な美人妻へと変身するのだ。
 そしておっさんも無精ひげを剃って、ちゃんとした格好をするとあら不思議、渋い中年へと変貌を遂げてしまう。
 だったら普段からそうしていればいいのにとは思うのだが、ミアさんによれば自分が女を見せるのはあのヒトの前でだけ、そして夫であるおっさんが素敵なのを知るのも自分だけでいいそうな。
 この思考からもわかるように、ミアさんはおっさんにぞっこんラブ。
 そのくせ、わざと旦那にヨレヨレのシャツを着せて、微妙にだらしない格好をさせていたのである。外で他の女から色目を使われたり、モテたら嫌だからという自己中な理由にて。
 どうだい? なかなかに重たい女であろう。
 それをさらりと受けとめる、おっさんが男前過ぎる。
 しかしうっかり褒めようものならば、途端に奥さんに勘ぐられて、ギロリと睨まれるので口にはしないけどね。彼女の嫉妬レーダーの範囲はおそろしく広いのだ。

 仕事は出来るけど重たい愛の女と少女の二人旅。
 大きな湖の畔にあるというピタカは、風光明媚にして漁業が盛んらしく、お魚も美味しいとの話。なのに愛夫と片時も離れがたい彼女のせいで日帰り出張というのが、いささか残念。
 ちなみに私がお供に選ばれたのは、ミアさんからのご指名。サブマスターという立場上、彼女が私の情報を共有するようになったのは、つい最近のこと。
 アイテム収納機能付きのウエストポーチが荷物持ちに最適。戦えるのでボディガードにも最適。そしていざともなればフクロウフォームにて夫のところに直帰出来る。という極めて利己的な理由であった。

 魔導列車は先頭が機関車で前の五両が客車、後ろの五両が貨物車両の編成となっている。
 客席は小奇麗に着飾った家族連れや、商人風の男性や役人っぽいヒトらで八割がた埋まっていた。
 ミアさんは移動中にもお仕事をするみたいで、書類とにらめっこ。
 私は幼い見た目を最大限に活かし、「ちょっと探検に行ってきます」と席を立つ。

 規則が緩いのか先頭車両では運転席に招かれ、迫力ある車窓シーンにはしゃぐ。
 客車にて老夫婦に声をかけられお菓子をもらう。モグモグしながら歩いていると、自分より小さな女の子を見かけたので分けてあげたら懐かれたので、しばらくお喋りに興じる。
 あっちに単身赴任をしているお父さんのところに、お母さんと一緒に遊びに行くんだってさ。
 よかったねと別れて、そろそろ戻ろうかと思ったら、なんか怪しい奴を発見!


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