神造小娘ヨーコがゆく!

月芝

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37 二人の騎士その3

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 ハウンド師匠から預かったギルドの書類をイクロス王子のところへ届けに行ったら、執務室にて悪夢が待っていた。

「やはり僕とキミとは結ばれる運命なのだ」

 臆面もなくこんな恥ずかしい台詞を口にしたのは黒髪の男性騎士。
 見た目は偉丈夫で名前をジンという。だがしかし中身はガチの幼児性愛者。どれくらいガチかというと、私が結婚と引き換えに騎士を辞めてと言ったら、速攻で剣を捨てるぐらいにガチでヤバイ奴である。

「やはり私たちは永遠の姉妹となる運命であったのだな」

 臆面もなく世迷言を口にしたのは赤髪の女性騎士。
 やや目つきの鋭い美人さんで名前をレプラという。立ち姿も凛々しく、まるで舞台役者のような麗人。しかしその実態は「自分だけの妹が欲しい」という百合系シスコン。たぶこちらも私が妹になる条件として、騎士を辞めてと言ったら、迷わず剣を叩き折ると思われる。

 先日の騎士団主催による公開演習イベントにて遭遇してより、いったい何が気に入ったのか、二人して私を取り合うという謎の行動をとっている残念な生き物たち。
 更にガッカリなのは、そんな二人が部隊長という重役を担っており、王子の側近とも呼べるほどの優秀な騎士であったということ。
 ジンは黒銀をシンボルカラーにした機体を操ることから、通称・黒騎士と呼ばれている。
 レプラは赤をシンボルカラーにした機体を操ることから、通称・赤騎士と呼ばれている。
 彼らのせいで私の中での騎士像は、ガラガラと音を立てて崩れつつある。

「ふふん、同僚のよしみだ。結婚式には招待してやろう。ヨーコの可憐な花嫁姿を、せいぜい目に焼きつけるがいい」
「ふざけるな。私の大切な妹をキサマの嫁になんぞやるものか。もしもそんな最悪の事態になったら、私は式場に火を放ってヨーコを攫って逃げてやる」
「なんだと!」
「なんだ!」

 魔甲騎兵団にて双璧をなす二人が、喧々囂々としょうもないことでやりあっている。
 変態同士の醜い争い。これもいわゆる同族嫌悪というのだろうか?
 それにしてもあのヒトたちの妄想の中で、私はどんな目にあっているのだろう。想像するだに恐ろしい。あとこんなモテ期はいらない。
 執務室内にいる他の事務員の方々は、無視して黙々と自分の仕事と向き合っている。すっかり慣れているのか知らないけれども、見事なスルースキル、大人ってすごいな。

「王子ぃ……」

 こうなればもう上司にすがるしかあるまい。
 だというのに彼は冷たかった。

「みなまで言うな。あんなのでも腕は確かなんだ。私はなによりも能力を重視する」

 イクロス王子はそう言いって、ツイと醜い現実より目を逸らした。
 それにしてもスゴイ騎士団もあったものである。
 トップはシスコン気味の腹黒ドS王子、側近の騎士はダブル変態、この分ではまだまだ他にも問題児が控えていそうな気がする。
 うにゃーん。


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