35 / 153
35 二人の騎士その1
しおりを挟む「あのヒト、かっこよくない?」
「私は右の騎士さまかな。硬派な雰囲気に男の色気を感じる」
「相変わらずの渋好みよね。わたしはあっちの長髪の彼かな」
「女性騎士のお姉さま、凛々しくてステキ」
「ねぇねぇ、ヨーコちゃんはどれが好み?」
「私は……、あの紅い機体がいいかなぁ。でもあっちの黒銀のやつも捨てがたい」
女が集まれば姦しいとは言うけれども、それが女学生ともなれば尚更である。微妙に会話が噛み合っていないのはご愛敬。なにせ注目しているポイントが違うのだからしようがあるまい。
本日はラマンダさんが院長を務める寄宿舎学校の社会科見学に、私も同行している。参加はラマンダさんからの教育的指導。「たまにと若い子らとも接したほうがいいでしょう」とのこと。交友関係が大人ばかりに偏っているのを危惧されたようだ。
見学先は騎士団主催による公開演習が行われている会場。定期的に行われている一般向けのイベント。日頃はなかなか接する機会のない騎士や魔甲騎兵に触れられるとあって、来場者の姿は多い。
催事のために磨き込まれた機体がズラリと並ぶ。
身綺麗にした騎士たちが客たちの応対をしている。普段は見ることのできない操縦席とかを見せてもらえたり、相乗りして軽く動いてくれるコーナーなんかもあって、会場内はかなり賑わっていた。午後からは摸擬戦もあるそうなので、とっても楽しみ。
で、学校の女生徒らと一緒に来たまではよかったのだが、なにせ彼女たちはイケメン騎士の探索に忙しい。いい男ありと聞けば東へ西へと突撃するので、あっという間にはぐれてしまった。
どうしたものかとキョロキョロしていたら、声をかけられる。
「どうかしましたか、お嬢さん」
声の主は赤い髪が腰までのびた、凛々しい女性騎士であった。
レプラと名乗った騎士が流れるような動作にて片膝をつくと、視線の高さを私の目線に合わせる。切れ長な目がキツメな印象を与える女性だが、かなりの美人さん。
間近に見つめられると、同性ながらもドキドキしてしまう。
容姿もさることながら……、彼女は強い。
甲冑を着て腰に剣を差しているのにもかかわらず、一連の動きの最中に微かな物音すらも立てなかった。しなやかでいて強靭な四肢がなければ不可能なワザ。豹とかパンサーとかいうカッコイイ系の肉食獣を連想させる。同じ猫科だというのに、私の黒猫の着ぐるみ姿とは大違い。
つい心が卑屈になって、オドオドとした態度をとってしまう。
すると、何故だかレプラの頬がぽっと朱に染まる。
思わず小首を傾げると、ついと顔を逸らされた。
はて?
こんなやりとりをしていたら、一緒に来ていた女学生らが姿を現す。途中でハグレて迷子になった私を探しにきてくれたみたい。
彼女たちに合流して、バイバイと女騎士に別れを告げると、何故だかもの凄く残念そうな顔をされた。
うーん、わからん。もしかして迷子のお世話でもしたかったのかな。見た目に反して子供好きとか。
今度はハグレないようにと、左右の手をつながれて、方々を連れ歩かれる。
特殊機関に捕まった宇宙人の図のような格好にて会場内をぶらり。
それは、まあ、いいのだが、各々が別方向にイイ男を見つけては、欲望の赴くままに動くのは勘弁して欲しい。そのたびに肩や肩甲骨まわりの関節がヘンな音を立てるし、体のもろもろがちょっと痛い。
そんな風にきゃきゃうふふと騒いでいたら、一人の騎士がツカツカと近寄って来た。
黒の短髪の偉丈夫。自分に厳しく他人にも厳しい、かもしれない風の爽やかイケメン。鋭い眼光がこちらをしっかりと捉えている。
周りの迷惑も考えずに、ちょっとはしゃぎ過ぎたか。
てっきり注意でもされるのかと、みなで恐縮していたら、さにあらん。
「ついに見つけた、僕の女神。どうか僕の伴侶になって欲しい」
一行の前にて膝まづき、いきなり求婚を始める黒髪のイケメン騎士。
まさかのドキラブ展開! これには一同のみならず周囲が騒然となった。
0
お気に入りに追加
356
あなたにおすすめの小説
異世界の片隅で引き篭りたい少女。
月芝
ファンタジー
玄関開けたら一分で異世界!
見知らぬオッサンに雑に扱われただけでも腹立たしいのに
初っ端から詰んでいる状況下に放り出されて、
さすがにこれは無理じゃないかな? という出オチ感漂う能力で過ごす新生活。
生態系の最下層から成り上がらずに、こっそりと世界の片隅で心穏やかに過ごしたい。
世界が私を見捨てるのならば、私も世界を見捨ててやろうと森の奥に引き篭った少女。
なのに世界が私を放っておいてくれない。
自分にかまうな、近寄るな、勝手に幻想を押しつけるな。
それから私を聖女と呼ぶんじゃねぇ!
己の平穏のために、ふざけた能力でわりと真面目に頑張る少女の物語。
※本作主人公は極端に他者との関わりを避けます。あとトキメキLOVEもハーレムもありません。
ですので濃厚なヒューマンドラマとか、心の葛藤とか、胸の成長なんかは期待しないで下さい。
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
地獄の手違いで殺されてしまったが、閻魔大王が愛猫と一緒にネット環境付きで異世界転生させてくれました。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作、面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
高橋翔は地獄の官吏のミスで寿命でもないのに殺されてしまった。だが流石に地獄の十王達だった。配下の失敗にいち早く気付き、本来なら地獄の泰広王(不動明王)だけが初七日に審理する場に、十王全員が勢揃いして善後策を協議する事になった。だが、流石の十王達でも、配下の失敗に気がつくのに六日掛かっていた、高橋翔の身体は既に焼かれて灰となっていた。高橋翔は閻魔大王たちを相手に交渉した。現世で残されていた寿命を異世界で全うさせてくれる事。どのような異世界であろうと、異世界間ネットスーパーを利用して元の生活水準を保証してくれる事。死ぬまでに得ていた貯金と家屋敷、死亡保険金を保証して異世界で使えるようにする事。更には異世界に行く前に地獄で鍛錬させてもらう事まで要求し、権利を勝ち取った。そのお陰で異世界では楽々に生きる事ができた。
柳鼓の塩小町 江戸深川のしょうけら退治
月芝
歴史・時代
花のお江戸は本所深川、その隅っこにある柳鼓長屋。
なんでも奥にある柳を蹴飛ばせばポンっと鳴くらしい。
そんな長屋の差配の孫娘お七。
なんの因果か、お七は産まれながらに怪異の類にめっぽう強かった。
徳を積んだお坊さまや、修験者らが加持祈祷をして追い払うようなモノどもを相手にし、
「えいや」と塩を投げるだけで悪霊退散。
ゆえについたあだ名が柳鼓の塩小町。
ひと癖もふた癖もある長屋の住人たちと塩小町が織りなす、ちょっと不思議で愉快なお江戸奇譚。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
御者のお仕事。
月芝
ファンタジー
大陸中を巻き込んだ戦争がようやく終わった。
十三あった国のうち四つが地図より消えた。
大地のいたるところに戦争の傷跡が深く刻まれ、人心は荒廃し、文明もずいぶんと退化する。
狂った環境に乱れた生態系。戦時中にバラ撒かれた生体兵器「慮骸」の脅威がそこいらに充ち、
問題山積につき夢にまでみた平和とはほど遠いのが実情。
それでも人々はたくましく、復興へと向けて歩き出す。
これはそんな歪んだ世界で人流と物流の担い手として奮闘する御者の男の物語である。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる