神造小娘ヨーコがゆく!

月芝

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 配達帰りに草原の上空を通りかかったら、モンスターの群れに囲まれて、身動きの取れない一団を発見。
 牛ぐらいの大きさのヒルに足がついた六足歩行のモンスター。
 アレは喰えなくはないが、口に入れる際には自分の中の大切な何かを犠牲にする覚悟がいる奴だ。味はないが食感はコリコリしている珍味系。
 立派な魔導エンジン搭載の大きな自動車を守るように、布陣している護衛の騎士たち。
 揃いの鎧姿からして、車の中にいるヒトはきっと貴人なのだろう。みんな強そうだし大丈夫だとは思うけど、あのモンスターってば早く倒さないと、仲間が集まってきちゃうんだよね。初めは十匹ぐらいで余裕をかましていたら、気がついたら百匹になってたりするから鬱陶しい。
 ほら、言わんこっちゃない。こうしている間にもドンドン増えてる……。
 もう、しようがないなあ。

「フクロウ・フェザーレイン!」

 叫んだ技名とともに敵勢へと降り注ぐ羽たち。一枚一枚が鋭いナイフのようで、敵を容赦なく貫き、切り裂き、細切れにする。
 第三フォームにて背中に装着されているマントを振ると、繰り出される必殺技。
 これをまともに受けて、みるみる数を減らしていくモンスターたち。
 ものの一分たらずで殲滅してしまった。
 ふむ、我ながら対モンスター戦だけは無双だな。対人戦はまだまだだけど。
 高度を下げて旋回しつつ残敵の有無を確認していたら、車の中からなんだかやたらとキラキラした生き物が現れた。

 さらさらの長い金の髪をした白いドレス姿の美少女さん。
 頭にちょこんと生えているケモ耳が抜群に似合っている。
 お付きの人らしい女性の制止を振り切って車外へと飛び出した彼女。こちらを見上げてしきりに手を振り、声をかけてくる。

「ありがとうございます。ところで貴方さまのお名前を教えてもらえませんでしょうか。ぜひお礼を」

 などと言い出したから、私は「気にすんな」と言って名乗ることなく、さっさと飛び去った。
 いや、なんとなく面倒ごとになりそうな予感がしたからさ。
 貴族の令嬢を助ける。なんだか気に入られる。つきまとわれる。そしてトラブルに巻き込まれる。という一連の流れがありありと脳裏に浮かんだね。
 妙なフラグは早々に叩き折っておくに限る。
 だというのに、世の中には善意が仇となることもあるということを私は知った。



 数日後にハウンド師匠に呼び出されて執務室に行くと、一枚の手配書をみせられる。
 そこには私のフクロウフォームの姿絵とともに、情報求むの文字が。しかもけっこうな額の懸賞金がかけられてある。 
 コツコツと勉強を続けたおかげで、こちらの文字もずいぶんと読めるようになった。それは嬉しいのだが、依頼主の欄にあるアミット・ハムートって誰?
 へー、この城塞都市国家のお姫さま。それでこのまえ助けたケモ耳美少女が、そのヒトだったと。
 うにゃーん。

「当面、フクロウ宅急便の活動は自粛だな」
「……ですよねぇ」


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