神造小娘ヨーコがゆく!

月芝

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08 マグロとサメとカニ

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 猛然と突っ込んでくる巨大サメ。対するはマグロな半魚女人。
 交差する際に、私は腕より出現させたヒレにて切りつける。これは出し入れ自由なヒレブレード。切れ味は猫爪に匹敵する。
 バックリと裂傷をつくったサメの体からドバっと溢れ出た血。これにより海水が濁って視界が悪くなる。
 マズイ! と思ったときにはすでに手遅れ。急旋回をしてきた奴に横っ腹から頭突きをくらって、ほんの数秒ながらも意識が飛ぶ。

 気がついたときには頭から海底へと向かって、ゆっくりと沈んでいるところであった。

 そこに巨大サメの牙が迫る。
 態勢を立て直している時間はない。咄嗟に右手を振り、奴に向かってウロコを数枚投げつける。
 薄いウロコはまるで小型の魚雷のように水中を疾走していき、目標の顔面に突き立つ。そのうちの一枚が瞳を直撃し切り裂く。痛さのあまりにサメの動きが鈍くなり突進が止まった。
 この隙に態勢を整えた私は、マグロ頭を奴に向けて必殺技を放つ。

「マグロ・ストリーム!」

 ぱかっと開かれた口から放たれる激流が、竜巻となり敵へと襲いかかる。
 攻撃がサメの体を包み込み、直撃を受けたその身が歪む。さらには竜巻の中に紛れ込ませていた銀のウロコたちによってズタズタに切り裂かれて、ついに四散したところで決着となる。
 田舎の小学校ぐらいはありそうな巨体を、あっさりと肉片にかえてしまった自分の技に、我ながら肌が粟立つのを抑えられない。
 あと、かなり気持ちが悪い。
 なにせ全力でゲーゲーと吐いているからな。
 この女体のどこから何が吐き出されているのかはわからないが、かなりシンドイ技なので連発はちょっと無理そう。
 差し当たって海の底にも巨大モンスターらの楽園が広がっているのを確認したので、一旦陸へと戻ることにする。

「うぅ、胸がムカムカして気持ちが悪い」

 で、陸にあがった途端に巨大カニどもに襲われた。
 マグロフォームが地上でもどれくらい戦えるのかやってみたが、動きがやはり海の中とは比べものにならないほどに悪い。水圧に耐えられるせいか体自体は頑強なのだが、カニどもに、よってたかって小突き回されている時点で話にならない。
 私はすぐさま黒猫フォームに変じて、調子に乗っていたカニどもを殲滅する。
 そしてモノは試しと奴らの肉を海中に撒いてみたら、あれほど蠢いていたモンスターどもが、軒並みさっと逃げ出した。

 恐るべしカニ肉……。

 ひょっとしたらこの島ではこいつらがある意味、最強なのかもしれない。なにせあまりのマズさに他者から襲われることがないんだから。
 これも一つの生存戦略? 自然って凄いな。



 
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