神造小娘ヨーコがゆく!

月芝

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05 異世界サバイバル生活

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 巨大ムカデは手強かった。
 毒液を飛ばし、毒霧を吐き、たくさんある足を槍のように突き出してくる。かと思えば猛然と頭から突っ込んできて、こちらをひと飲みにしようとする。顎のチカラも相当に強いらしく、かじりついた大木を牙でバキバキにへし折っていた。
 こちらの打撃は長い体をぐにゃりとされて、威力を殺される。まるで柳にパンチをしているように、のらりくらりとかわされて有効打が決まらない。
 必殺の猫パンチ、猫キックが通用しない。
 焦るあまり口からなんか出るかもと「にゃあ」と鳴いてみたが、可愛い声が戦いの場に響いただけであった。
 ムカデに「ギギギ」と馬鹿にされる。
 むかっ腹が立ったので、思わずキッと猫目で睨む。そうしたら目からなんか出た。
 ビームっぽい何かがシュミーンと放射されて、ムカデの脳天に当たり、これを貫通する。
 額に風穴を開けられてドスンと倒れる長い体。
 それきり奴は動かなくなってしまった。
 ムカデの背後にあった大木どころか、その先にあった岩をも貫通する破壊光線。
 とりあえず「猫目ビーム」と命名しておくこととする。

 変身した姿で使える技は、これで四つになった。
 猫パンチは岩をも砕く必殺の拳。
 猫キックは海が割れるかもしれない破壊の蹴り。
 猫爪はジャッキンと伸びて、あらゆるモノを切り裂いてくれたら嬉しいな。
 そして猫目ビームは敵を問答無用で貫く一条の光。
 てっきり肉弾戦専用の体かと思っていたのに。
 ここにきて飛び道具の登場は地味に嬉しい。
 これでついに私も無敵ヒーローの仲間入り……、などという甘い夢からは、その日のうちに醒めたさ。

 私に現実の厳しさを教えてくれたのは、巨大な灰色の猿であった。
 猫目ビーム無双で調子にのっていたら、あっさりとかわされて懐に入られる。強烈な右フックを貰い、脳みそを揺られてグラついているところを蹴り上げられ、落ちてきたところを正拳突きにて殴り飛ばされる。
 私の体は森の木々をへし折りながら、海岸の砂浜にまで飛ばされたところでようやく止まった。
 全身を突き抜けた衝撃にて、ピクリとも反応してくれない黒猫の着ぐるみ。
 そこに天高くより、蹴りの体勢にて落ちてくる灰色猿。
 もはやこれまでかと覚悟を決める。
 だというのに奴の姿が不意に視界から消えた。
 どうしたのかと視線を彷徨わせていると、灰色の猿が旅客機ぐらいのジャンボなトンボにくわえられて、バキバキされながら遠ざかっていく姿が見えた。南無南無。

 どうやらこの島の上空もまた巨大モンスターたちの楽園であったらしい。
 これからはうっかり高くジャンプとかしないようにしないと。アレの二の舞になるから注意しなければ。あと調子に乗らないようにしようとも固く心に誓った。



 
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