神造小娘ヨーコがゆく!

月芝

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04 消えた相棒

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 あちらこちらを彷徨いながらも、なんとか寝床に使えそうな岩穴を発見。
 内部が淡く光る苔のおかげで明るい。人間準拠のサイズにて巨大モンスターらは入ってこれない。しかも奥にはきれいな泉が湧いており、飲み水まで確保できるという幸運に恵まれた。
 思わず天を仰ぎ、私は神さまに感謝の投げキッス。
 もっともすぐに「チッ」と舌打ちして、悪態に変ったがな。

 なにせ変身を解いて、泉に顔を突っ込んで水をガブ飲みしている時に気がついてしまったから。
 自分の体がえらく縮んでいるということに!
 水面に映っていたのは十七才の乙女ではなくて、十才ぐらいの無地の白いワンピース姿の女の子であった。
 腰までのびた黒い髪、黒目は元から、白い肌はきめが細かくピチピチで水滴をよく弾き、体は華奢で歳相応……、の少女。

 あ・く・ま・で普通の少女だ。

 間違っても目の醒めるような『美』少女とかの類ではない。
 キレイではなくて可愛い寄りの女の子。それも年齢ゆえの可愛さ。あと数年もすれば地味顔に育ち、残酷な現実を突きつけられて夢見る心を失い、化粧だオシャレだと足かいた挙句に、限界を悟って周囲に埋没していくことであろう。
 子どもの神さまのど阿呆、なぜに『美』の一文字分の手間を惜しむ。三十六時間も改造手術に手間をかけたのならば、ちょっとぐらいサービスしてくれてもいいだろうに。きょうび十五分もあれば二重になれるんだぞ。
 おかげさまで体も随分と貧相になったものである。
 ちんちくりんだ。
 胸もペタペタ。二時間サスペンスのラストシーンでお馴染みの、郷愁を誘う断崖に匹敵する絶壁具合。
 チクショー! 返せよ! 私のあのたわわに実った双丘を!

 ……すまん、嘘だ。

 どさくさ紛れに見栄を張った。元からそんなモノはない。ちょっと太った男子に負けるほどの慎ましやかな相棒だったさ。だがそれすらもが今は消えてしまってペッタンコ。
 いなくなって初めてわかる友達の大切さ。
 異世界初日の夜、私は打ちひしがれ腕枕を涙で濡らした。ぐすん。



 翌日から始まった、私こと神造人間改め神造小娘ヨーコの異世界サバイバル生活。
 寝る、喰う、戦うがエンドレスに続く不毛な日々。
 狩っても狩っても減りやしない。どこからともなく沸いてくる。
 毎日、何十と遭遇するモンスターたちとの死闘。おかげで自分の能力については、いやでも把握出来たさ。
 見た目はイマイチなのに黒猫の着ぐるみは優秀だった。
 それにしてもここは巨人の島か? というぐらいに全てが大きい。闊歩しているモンスターどもは大きく、どれも凶悪だ。自生している植物も大きく、木の一本にしたって千年どころか万年級がごろごろ。
 やたらと生命力がみなぎる土地のせいか森の恵みは多く、食べる物には不自由しない。というよりもモンスターどもは、木の実や果実なんて見向きもしない。
 アイツらが求めているのは他者の命のみ。
 血肉、血肉、血肉、たまに骨付き血肉、といった具合の呆れた偏食ぶり。
 そのせいでしょっちゅう狙われることになるのだが、おかげで果物類はわりと楽に手に入るので助かっている。
 あとモンスターらが食えることがわかってからは、私の食生活はかなりマシになった。
 巨大クモはカニっぽい身が足にぎっしり詰まっている。巨大ダンゴムシは固い殻をむいたらプリプリのエビみたいな身であった。巨大クマは肉が固く筋張っておりあまり美味くない。巨大カニは見た目に反して、くそマズかった。ひと口ふくんだ途端に口内に広がる強烈なヘドロ風味。さすがにアレは食えない。

 そしていま私の目の前には、新たなモンスターが立ち塞がっている。

「やれやれ、アンタは食えるのかい?」

 そうつぶやくと相手が「キシャー」と盛大に吼えた。



 
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