神造小娘ヨーコがゆく!

月芝

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02 異世界に落ちてきた少女

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「行ってらっしゃい」

 子どもの神さまから送り出された場所は、異世界の遥か空の上。
 眼下に雲海が広がる。
 いやー、絶景かな、絶景かな。
 と、それだけですむわけもなく……。
 当然のごとく私の体は落ちていく。
 高い所から低い所へと物が落ちるのは、どこの世界でも共通らしい。
 ボフンと厚い雲を突き抜けた先には大きな島があった。
 あまりにも現実味がない状況に、しばし思考が固まる。
 でも猛烈な勢いにて地上が迫って来るほどに、命の危機を感じた私は無意識のうちに叫んでいた。

「変身っ!」

 足下より影が勢いよく吹き出し、全身を包み込んで膜を張り黒い球体となる。
 内部では無数の黒い糸がシュルシュルとのびて複雑に折り重なり、編み込まれて、融合し、肉体を覆っていく。
 ほんの瞬きひとつほどの時間。
 パチンと球体が弾けて、中から変身を遂げた私の新生ボディが姿を現す。
 これでとりあえず命の危機は脱した。
 と信じたいっ!
 それからいくら変身したからって、素人小娘がいきなり特撮ヒーローみたいに、格好良く着地なんて決められるわけもなく……。

 そのままの勢いにて落下を続けて、ついには地上にいた超巨大なクモみたいな奴を巻き込んで、無様に地表へと激突。
 衝撃により大きなクレーターを産み出すこととなる。



「ケホケホ。うぅ、酷い目にあった」

 地面にあけた大穴の底から、よちよちと這い上がり周囲を見渡すと、惨状が広がっていた。たぶん真上から見たら、森にデッカイ十円ハゲが出来ているに違いあるまい。
 子どもの神さまの野郎、異世界転移も初めてだって言ってたから何がしら失敗したな。
 たぶん座標合わせの際に、高度を計算に入れるのを忘れたんだろう。
 それにしてもさっきの馬鹿デカいクモはなんだ? うちの高校の体育館よりも大きかったぞ。クッション代わりになってくれたから助かったが、可哀想に爆散しちまったよ。
 こっちの世界は「みんな大好きファンタジー要素満載だよ」とか聞かされていたから、モンスターぐらいはいると思っていたけれど。

 ……ものすごく嫌な予感がする。

 体についた土埃でも払おうとして、ようやく気がつく。
 己が身に起こっている異常事態に!
 艶のない黒い短毛が腕にびっしりと生えている。手が大きいのに指が極端に短い、手の平には触り心地がよさそうなピンクの肉球がある。あとお尻から長い尻尾も生えているぞ。
 あわてて全身をぺたぺたと触ってみる。
 貧相な体のわりに、頭部がやたらと大きい。
 とりあえず自分の姿を確認しようと周囲を探すと、地面に爆散した巨大グモの生首がごろんと転がっていた。都合のいいことに六つもある瞳が鏡面みたいにツルツルしている。
 これならイケるかと覗いてみる。
 映った自分の姿を見て、私は叫ばずにはいられない。

「なんじゃ、こりゃあーっ!!」

 瞳の中には寂れた地方の遊園とかデパートの屋上の遊戯場にいる、少し草臥れた感じのする頭でっかちな着ぐるみ姿の黒猫が映っていた。
 うにゃーん!?



 
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