竹林にて清談に耽る~竹姫さまの異世界生存戦略~

月芝

文字の大きさ
上 下
170 / 190

170 竹の里再建計画 ― 竹鉄道

しおりを挟む
 
 カイザラーン領内、某所にて――

「ほんじゃあ、いくよー。せーのっ! ふんっ」

 地面に手を当てリグニンパワーを注入すれば、地中からひょっこり顔を出したのはタケノコである。
 みるみるうちに背が伸びて大きくなり、皮がつるんと向けて、青々とした竹へと。
 高さが50メートル、直径10センチにて真っ直ぐ伸びたもの。強度は鋼並みだ。
 これを×2本。
 並行に生やしたところで「ていっ」
 私が手の平をかざせば、ぺこりとお辞儀をするようにして二本の竹は根元から直角に曲がって、あらかじめ等間隔に敷き詰めておいた枕木の上に寝そべった。
 ちなみにこの枕木も竹製である。

 ここで道具を手に待機していた竹工作兵らが、一斉にわっと群がり、トンカントンカン。枕木と青竹を固定していき、作り上げていくのは竹鉄道のレールである。
 とはいっても、まだ試作段階だけど。
 まずは通常のやりかたを踏襲して、竹でレールを設置する。
 距離は陸上のトラック一周分ぐらい。
 で、ウンサイさんら黒鍬衆の開発陣が制作中の竹機関車を走らせてみて、問題がなければ本格的な着工へと入る予定だ。

 竹の里の再建計画がスタートしたのに合わせて、竹鉄道計画も同時進行しているのは、いささか広大になり過ぎた領内を、よりスムーズに移動するための手段が必要であると考えたから。
 さすがに東京23区がすっぽりおさまりそうなほどもある広大な竹林ともなると、いかに私とてすべてには目が行き届かない。
 竹蜻蛉や竹忍者に竹忍犬らが優秀とてカバーしきれない。
 竹騎馬武者らの小隊による巡回とて似たようなもの。
 そこで一度に大量輸送が可能となる竹鉄道網を領内に整備することに決めた。

 レールの設置工事の方は私が担当する所存。
 だって、そのほうがてっとり早いので。
 でもって、どうしてレールに50メートルごとの区切りを設けたのかといえば、メンテナンスを考慮してのこと。
 どれだけリグニンパワーを注入して頑丈な竹のレールを造ったとて、竹鉄道を日々運行していけばどうしたって傷んでくる。紫外線はアレでけっこうあなどれん。

 耐久年数や交換の目安は今後の検証結果次第だろうけど、どのみち手入れは必要不可欠にて。
 その際に、もしも長~い一本の竹のレールだったら、ごっそり変えるハメになる。
 これはたいへんだ。でも、短いのならばそこだけちょちょいと交換すればいい。
 細かく分けたのを連結することで、カーブなどをスムーズに行えるようにするとの意図もある。
 まぁ、感覚的には鉄道玩具のプラ〇ールをやってるみたいで、作業自体はけっこう楽しい。
 高見の見物にて上げ膳据え膳も悪くはないけれど、みんなと和気あいあいと汗を流すのもいいものだ。
 というわけで「次、いくよー」
 サクサクと試運転用のレールを繋いでいく。

  〇

 ポッポー♪

 煙を吐きながらシュポシュポ走るのは竹機関車ゼロ号。
 テスト用に開発された機体にて、これをベースに必要なモノを足したり削ったりしつつ、最適解を目指す。
 との話なのだけれども……

「なぜにデゴイチ?」

 D51形蒸気機関車。
 国鉄の前身である鉄道省が設計、製造した、単式2気筒で過熱式のテンダー式蒸気機関車である。昭和初期に主に貨物輸送用として製造され、全国各地を走っていた。最盛期には1100両以上も走行していたという。
 現場の機関士からも操作性の良さから支持されており、『デコイチ』の愛称はのちに日本の蒸気機関車の代名詞となった。

 それを竹で再現されたオモチャの機関車っぽいのが、シュポシュポシュポポ♪
 またぞろ私の記憶のライブラリをのぞいてデザインしたのだろうけど。
 う~ん、神クオリティ。

 なお竹デゴイチには新開発されたリグニン機関が搭載されており、地下茎からレールへと流れているリグニンパワーを供給されて走るので、理論上はずっと走り続けられるんだとか。
 まぁ、それはともかくとして。

「どうして機関車からポッポと煙が出ているの?」

 リグニンパワーは環境にもお財布にもやさしい夢のクリーンエネルギーである。
 なので排煙なんぞは出さないはずなのだが……

 えっ、様式美。
 煙を吐かないデコイチなんてデコイチじゃないですって。
 ちなみにあれは、人体にも環境にも無害な煙だから問題ないばかりか、むしろ含まれる成分にて竹林が元気になると。

 はぁ……さいですか。
 まぁ、気持ちはわからなくもない、かな?


しおりを挟む
感想 166

あなたにおすすめの小説

御者のお仕事。

月芝
ファンタジー
大陸中を巻き込んだ戦争がようやく終わった。 十三あった国のうち四つが地図より消えた。 大地のいたるところに戦争の傷跡が深く刻まれ、人心は荒廃し、文明もずいぶんと退化する。 狂った環境に乱れた生態系。戦時中にバラ撒かれた生体兵器「慮骸」の脅威がそこいらに充ち、 問題山積につき夢にまでみた平和とはほど遠いのが実情。 それでも人々はたくましく、復興へと向けて歩き出す。 これはそんな歪んだ世界で人流と物流の担い手として奮闘する御者の男の物語である。

柳鼓の塩小町 江戸深川のしょうけら退治

月芝
歴史・時代
花のお江戸は本所深川、その隅っこにある柳鼓長屋。 なんでも奥にある柳を蹴飛ばせばポンっと鳴くらしい。 そんな長屋の差配の孫娘お七。 なんの因果か、お七は産まれながらに怪異の類にめっぽう強かった。 徳を積んだお坊さまや、修験者らが加持祈祷をして追い払うようなモノどもを相手にし、 「えいや」と塩を投げるだけで悪霊退散。 ゆえについたあだ名が柳鼓の塩小町。 ひと癖もふた癖もある長屋の住人たちと塩小町が織りなす、ちょっと不思議で愉快なお江戸奇譚。

原産地が同じでも結果が違ったお話

よもぎ
ファンタジー
とある国の貴族が通うための学園で、女生徒一人と男子生徒十数人がとある罪により捕縛されることとなった。女生徒は何の罪かも分からず牢で悶々と過ごしていたが、そこにさる貴族家の夫人が訪ねてきて……。 視点が途中で切り替わります。基本的に一人称視点で話が進みます。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

冤罪で追放した男の末路

菜花
ファンタジー
ディアークは参っていた。仲間の一人がディアークを嫌ってるのか、回復魔法を絶対にかけないのだ。命にかかわる嫌がらせをする女はいらんと追放したが、その後冤罪だったと判明し……。カクヨムでも同じ話を投稿しています。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

離婚した彼女は死ぬことにした

まとば 蒼
恋愛
2日に1回更新(希望)です。 ----------------- 事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。 もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。 今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、 「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」 返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。 それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。 神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。 大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。 ----------------- とあるコンテストに応募するためにひっそり書いていた作品ですが、最近ダレてきたので公開してみることにしました。 まだまだ荒くて調整が必要な話ですが、どんなに些細な内容でも反応を頂けると大変励みになります。 書きながら色々修正していくので、読み返したら若干展開が変わってたりするかもしれません。 作風が好みじゃない場合は回れ右をして自衛をお願いいたします。

処理中です...