163 / 190
163 リアル逃走中・デスゲーム版
しおりを挟むペカー、シュビビビビビ~!
ペカー、シュビビビビビ~!
ペカー、シュビビビビビ~!
四方八方から飛び交う幾筋もの光線たち。
壁や建物などの障害物を無視して、いきなり飛んでくる。
舞台上のスターを照らすスポットライトのごとき華やかさ。
だけど、うっかり照射されたが最期、たちまち跡形もなく消失してしまう破滅の光。
いまのところこれを防ぐ手立てはない。
こちらとしては、円陣を組んでは全方位に目を光らせつつ、上空から竹蜻蛉による監視も並用することで、迫る危険を察知しては跳んだり、転んたり、伏せたりして、どうにかこうにか。
えっ、いったい何がどうして、そんな状況に陥っているのかですって?
……じつは、ただいま撤退戦の真っ最中につき。
いろいろあって、私たちは拠点を一時的に放棄せざるをえなくなったのである。
詳細について語るには、少し時間を遡る必要がある。
あれが起きたのは、ちょうど一時間ほど前のことであった。
〇
はぐれカエルにより、竹隧道が破壊されちゃった!
いきなり拠点の近くにあらわれたとおもったら、怪光線でズバズバっとね。
よもや! デカピタがこれほど隠密能力に長けているとはおもわなかった。単独行動なのと、入り組んだ迷路のような地形に助けられたとしても、こちらの警戒網を抜けられるとは……
ちくしょう、まんまとしてやられた。
けっこう派手にやられてしまい、復旧するのにはしばらくかかるとの報告を竹工作兵らから受けたところで、ふたたびサイレン音が鳴り響く。
「ちょっとまたなの? 今度はいったい何……っ!?」
竹蜻蛉から送られてくる中継映像に、私はあんぐり。一同も騒然となる。
カエルたちだ。
北、東、西の三方向より、こちらの拠点を目指し、ぴょこんぺたん、ぴょこんぺたん。
ゾロゾロと向かってくるではないか!
これまでは自分の巣がある貯水槽を中心に活動していたというのに、ここへきて一斉に進軍を開始するだなんて。
「でも、どうして急に……あっ! まさかあのハグレを私たちが殺したからなの?」
仲間内で散々殺し合いをしては、貪り喰らうのはぜんぜんかまわない。
けれども他者に殺らせるのは、どうにもガマンならないということか。
あくまで思いつきだ。真実かどうかはわからないし、のんびり検証している余裕もない。
ただし、これだけは断言できる。
それはデカピタたちに、私たちがバッチリ敵認定されたということ。
「このままではカエルどもに包囲される。怪光線は透過能力を持つから、籠城は無意味。退路もすぐには修復できない。
……しょうがない。現時点で本拠点をいったん放棄する。総員、すみやかに準備を整えて、ここから出るよ」
幸いなことに地上からの応援が来る手筈になっている。竹隧道の復旧作業はそちらに任せようとおもう。
だからその間、私たちは泡沫都市内を動き回っては囮となり、デカピタたちを引きつけ連中の注意を拠点からそらすのだ。
というわけで、すたこら逃げろ~。
〇
かくして始まったリアル逃走中・デスゲーム版は、難易度MAX!
どこから敵が襲ってくるのかハラハラドキドキ、一発アウトのスリル、ギリギリの攻防が息つく間もなく続く。
つねに地形に気を配りつつ、囲まれないように移動しては、突出しているカエルを発見し次第、各個撃破していく。
一対多数に持ち込めば、倒すこと自体はさほど難しくない。
竹人形の数体が正面で注意を引きつけているうちに、左右と後方からいっきに接敵しては、まず最初に頭の上からか、顎の下から刃を突き入れて口を塞ぐ。
で、カエルがモゴモゴしているうちに、ハチの巣にする。もしくはメッタ刺しにする。
どうしてそこまでするのかといえば、そこまでしないと完全に活動を停止しないからだ。
デカピタのカエルフォームは、数多くの同胞を喰らって成っているだけあって、かなりしぶとい。
ところがこれが複数との対戦になると、とたんに難易度が爆上がりする。
怪光線が乱舞するせいだ。イケイケゴーゴーなディスコのミラーボールなみに乱反射!
こうなるとちょと手がつけられない。
さらには攻撃のバリエーションもなにげに増えている。
最初の頃はペカーと怪光線で照らすだけだったのに、途中から灯台のライトみたいに旋回させたり、こまめに点けたり消したりなどのフェイントをかましてくるようになった。
加えて本体の動きも良くなっている。
こちらの戦法が通じにくくなっている。
まさかとはおもうが、デカピタ同士で情報を共有しているのか?
だとしたら、それは一にして全、全にして一である竹生命体と同じということになるんだけれども……
「ん? ちょっと待てよ。だとしたら、デカピタどもにも私みたいなのがいるのでは?」
カイザラーンにとっての竹姫さまみたいに、カエルたちにも全体を統括している特殊な個体がいるのか。
可能性は高い。
でも、どこにいるんだろう。
このことを思いついた時、たまたま私の視界の片隅に映ったのは、中央にそびえる巨大な城の姿であった。
う~ん、やっぱりあそこなのかしらん。
33
お気に入りに追加
41
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
御者のお仕事。
月芝
ファンタジー
大陸中を巻き込んだ戦争がようやく終わった。
十三あった国のうち四つが地図より消えた。
大地のいたるところに戦争の傷跡が深く刻まれ、人心は荒廃し、文明もずいぶんと退化する。
狂った環境に乱れた生態系。戦時中にバラ撒かれた生体兵器「慮骸」の脅威がそこいらに充ち、
問題山積につき夢にまでみた平和とはほど遠いのが実情。
それでも人々はたくましく、復興へと向けて歩き出す。
これはそんな歪んだ世界で人流と物流の担い手として奮闘する御者の男の物語である。
柳鼓の塩小町 江戸深川のしょうけら退治
月芝
歴史・時代
花のお江戸は本所深川、その隅っこにある柳鼓長屋。
なんでも奥にある柳を蹴飛ばせばポンっと鳴くらしい。
そんな長屋の差配の孫娘お七。
なんの因果か、お七は産まれながらに怪異の類にめっぽう強かった。
徳を積んだお坊さまや、修験者らが加持祈祷をして追い払うようなモノどもを相手にし、
「えいや」と塩を投げるだけで悪霊退散。
ゆえについたあだ名が柳鼓の塩小町。
ひと癖もふた癖もある長屋の住人たちと塩小町が織りなす、ちょっと不思議で愉快なお江戸奇譚。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
原産地が同じでも結果が違ったお話
よもぎ
ファンタジー
とある国の貴族が通うための学園で、女生徒一人と男子生徒十数人がとある罪により捕縛されることとなった。女生徒は何の罪かも分からず牢で悶々と過ごしていたが、そこにさる貴族家の夫人が訪ねてきて……。
視点が途中で切り替わります。基本的に一人称視点で話が進みます。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
冤罪で追放した男の末路
菜花
ファンタジー
ディアークは参っていた。仲間の一人がディアークを嫌ってるのか、回復魔法を絶対にかけないのだ。命にかかわる嫌がらせをする女はいらんと追放したが、その後冤罪だったと判明し……。カクヨムでも同じ話を投稿しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
離婚した彼女は死ぬことにした
まとば 蒼
恋愛
2日に1回更新(希望)です。
-----------------
事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。
もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。
今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、
「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」
返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。
それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。
神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。
大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。
-----------------
とあるコンテストに応募するためにひっそり書いていた作品ですが、最近ダレてきたので公開してみることにしました。
まだまだ荒くて調整が必要な話ですが、どんなに些細な内容でも反応を頂けると大変励みになります。
書きながら色々修正していくので、読み返したら若干展開が変わってたりするかもしれません。
作風が好みじゃない場合は回れ右をして自衛をお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる