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159 破滅の光デカピタ
しおりを挟むぴょこん、ぴたん、ぴったん〇……ではなくって、シュババババー!
跳躍しては、ふり返るなり口から怪光線。
宙にてくるりんぱとしては、口から怪光線。
サッと横に避けては、すかさず口から怪光線。
ひらりと華麗に身を翻しては、口から怪光線。
右へと避けるとみせかけて、じつは左。フェイントを交えては口から怪光線。
かとおもえば「デカピタ!」「デカピタ!」
そうとしか聞こえない、奇妙な鳴き声を発す。
……といった具合に、アグレッシブに動き回っては、光線の激しい応酬を繰り広げる黒黄トノサマガエルたち。
これにより触れたらダメよな怪光線がビュンビュン飛び回るので、付近に潜んでいた私たちはキャアキャア逃げ惑うばかり。
光線は建物の壁や床を無視して、いきなりあらわれるから心臓に悪い!
こんな死角の多い入り組んだ古代都市内では凶悪極まれり。
地形を無視して、こちらへ一方的にダメージを与える破滅の光を前にして「ダメだこりゃ」
私は「て、撤収! すぐに撤収よ!」との指示を出した。
さりとてこいつらから完全に目を離したらヤバいので、上空に監視用の竹蜻蛉を数機、配備しておく。
〇
我ら調査隊は恥も外聞もなく拠点へ逃げ帰った。
そしてひと息つく暇もなく、会議を開いた。
地上にも竹通信をつなぎ状況を説明して、あちらにいるウンサイさんらや、第二拠点にいる研究所の面々とも情報を共有し、対応を協議する。
一方で、リアルタイムで竹蜻蛉より送られてくる映像に、戦慄を禁じ得ない。
撤退した私たちが拠点に戻るまでのわずかな間にも、黒黄トノサマガエル――以降、これをデカピタと呼称する――らのバトルロイヤルにも進捗があった。
七体いた生き残り。
殺し合ううちに、一体、また一体と倒され、喰われていき、ついに最後の一体となった。
この時点でサイズが軽自動車から、キャンピングカーほどになっている。
当然、口も大きくなり、吐かれる光線もふた回りぐらい厚みを増している。
仲間はすべて倒し、喰い尽くした。
おそらく……いや、こいつはきっと古代都市が滅んだ原因。
あの破滅の光の前では、地下シェルターや防壁はなんら意味をなさないもの。
そんなヤツが、いよいよこちらに牙をむくのか。
モニター越しに、私たちがビクリと身構えた矢先のことである。
デカピタはのそのそと、もとの貯水槽へと戻っていったもので「へ!?」
――あれ、こないの?
もしかして距離をとったことで、こちらの存在をロストしたのか? もしくは竹人形なんて、はなから眼中になし? 竹なんぞ食べて喜ぶのはパンダぐらいなものだから、それもありうるのかしらん?
などと、私たちが困惑していたら、またしても貯水槽の水面がプクプクプク……
泡立ち、プップップップッとあらわれたのは金の玉々。
またしてもジャンジャンバリバリ、大フィーバーにて。
それらの玉から足の生えたオタマジャクシが孵化しては、やはり共食いを始めて、ある程度数が減ったらメタモルフォーゼ。
挙句に、またしても破滅光線の撃ち合いを始めてしまった。
私たちは、ぽかん。
まるで以前の場面の録画をみているかのよう。
異様な光景に、私たちはみな頭にハテナマークを浮かべるばかり。
いったいデカピタは何がしたいのやら、まったくもって理解不能にてわけがわからん。
だがしかし、最後の一体となったところで「ん?」と微妙にさっきとちがうことに気がついたのはウンサイさんであった。
えっ、なんだか最初の時よりも、ちょっと大きくなっているですって。
言われてみれば、そんな気が……
念のために過去映像と見比べてみたら、げっ、ワイドミドル級がスーパーロング級になっているではないか!
ひと回りというほどではない。
けど、たしかに大きくなっている。
でもって、最後の生き残りはまたぞろ貯水槽へと戻っていく。
これらのヤツの行動から推察されるのは――
「まさか! デカピタは自分で分裂と再生をくり返すことで、成長しているの!?」
己で己の血肉を喰らい成長する怪物。
それがデカピタの正体……
これだけでも驚愕の事実なのだけれども、さらに悪いことは重なるもので。
用心のためにと泡沫都市内に飛ばしていた竹蜻蛉たちが、デカピタがいたのと同様の貯水槽を他にも二ヶ所発見したとの連絡が届いた。
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