竹林にて清談に耽る~竹姫さまの異世界生存戦略~

月芝

文字の大きさ
上 下
159 / 190

159 破滅の光デカピタ

しおりを挟む

 ぴょこん、ぴたん、ぴったん〇……ではなくって、シュババババー!

 跳躍しては、ふり返るなり口から怪光線。
 宙にてくるりんぱとしては、口から怪光線。
 サッと横に避けては、すかさず口から怪光線。
 ひらりと華麗に身をひるがえしては、口から怪光線。
 右へと避けるとみせかけて、じつは左。フェイントを交えては口から怪光線。
 かとおもえば「デカピタ!」「デカピタ!」
 そうとしか聞こえない、奇妙な鳴き声を発す。

 ……といった具合に、アグレッシブに動き回っては、光線の激しい応酬を繰り広げる黒黄トノサマガエルたち。
 これにより触れたらダメよな怪光線がビュンビュン飛び回るので、付近に潜んでいた私たちはキャアキャア逃げ惑うばかり。
 光線は建物の壁や床を無視して、いきなりあらわれるから心臓に悪い!
 こんな死角の多い入り組んだ古代都市内では凶悪極まれり。
 地形を無視して、こちらへ一方的にダメージを与える破滅の光を前にして「ダメだこりゃ」

 私は「て、撤収! すぐに撤収よ!」との指示を出した。
 さりとてこいつらから完全に目を離したらヤバいので、上空に監視用の竹蜻蛉を数機、配備しておく。

  〇

 我ら調査隊は恥も外聞もなく拠点へ逃げ帰った。
 そしてひと息つく暇もなく、会議を開いた。
 地上にも竹通信をつなぎ状況を説明して、あちらにいるウンサイさんらや、第二拠点にいる研究所の面々とも情報を共有し、対応を協議する。
 一方で、リアルタイムで竹蜻蛉より送られてくる映像に、戦慄を禁じ得ない。

 撤退した私たちが拠点に戻るまでのわずかな間にも、黒黄トノサマガエル――以降、これをデカピタと呼称する――らのバトルロイヤルにも進捗があった。

 七体いた生き残り。
 殺し合ううちに、一体、また一体と倒され、喰われていき、ついに最後の一体となった。
 この時点でサイズが軽自動車から、キャンピングカーほどになっている。
 当然、口も大きくなり、吐かれる光線もふた回りぐらい厚みを増している。

 仲間はすべて倒し、喰い尽くした。
 おそらく……いや、こいつはきっと古代都市が滅んだ原因。
 あの破滅の光の前では、地下シェルターや防壁はなんら意味をなさないもの。
 そんなヤツが、いよいよこちらに牙をむくのか。
 モニター越しに、私たちがビクリと身構えた矢先のことである。

 デカピタはのそのそと、もとの貯水槽へと戻っていったもので「へ!?」

 ――あれ、こないの?

 もしかして距離をとったことで、こちらの存在をロストしたのか? もしくは竹人形なんて、はなから眼中になし? 竹なんぞ食べて喜ぶのはパンダぐらいなものだから、それもありうるのかしらん?

 などと、私たちが困惑していたら、またしても貯水槽の水面がプクプクプク……

 泡立ち、プップップップッとあらわれたのは金の玉々。
 またしてもジャンジャンバリバリ、大フィーバーにて。
 それらの玉から足の生えたオタマジャクシが孵化しては、やはり共食いを始めて、ある程度数が減ったらメタモルフォーゼ。
 挙句に、またしても破滅光線の撃ち合いを始めてしまった。

 私たちは、ぽかん。
 まるで以前の場面の録画をみているかのよう。
 異様な光景に、私たちはみな頭にハテナマークを浮かべるばかり。
 いったいデカピタは何がしたいのやら、まったくもって理解不能にてわけがわからん。

 だがしかし、最後の一体となったところで「ん?」と微妙にさっきとちがうことに気がついたのはウンサイさんであった。
 えっ、なんだか最初の時よりも、ちょっと大きくなっているですって。
 言われてみれば、そんな気が……
 念のために過去映像と見比べてみたら、げっ、ワイドミドル級がスーパーロング級になっているではないか!

 ひと回りというほどではない。
 けど、たしかに大きくなっている。
 でもって、最後の生き残りはまたぞろ貯水槽へと戻っていく。

 これらのヤツの行動から推察されるのは――

「まさか! デカピタは自分で分裂と再生をくり返すことで、成長しているの!?」

 己で己の血肉を喰らい成長する怪物。
 それがデカピタの正体……
 これだけでも驚愕の事実なのだけれども、さらに悪いことは重なるもので。
 用心のためにと泡沫都市内に飛ばしていた竹蜻蛉たちが、デカピタがいたのと同様の貯水槽を他にも二ヶ所発見したとの連絡が届いた。


しおりを挟む
感想 166

あなたにおすすめの小説

御者のお仕事。

月芝
ファンタジー
大陸中を巻き込んだ戦争がようやく終わった。 十三あった国のうち四つが地図より消えた。 大地のいたるところに戦争の傷跡が深く刻まれ、人心は荒廃し、文明もずいぶんと退化する。 狂った環境に乱れた生態系。戦時中にバラ撒かれた生体兵器「慮骸」の脅威がそこいらに充ち、 問題山積につき夢にまでみた平和とはほど遠いのが実情。 それでも人々はたくましく、復興へと向けて歩き出す。 これはそんな歪んだ世界で人流と物流の担い手として奮闘する御者の男の物語である。

柳鼓の塩小町 江戸深川のしょうけら退治

月芝
歴史・時代
花のお江戸は本所深川、その隅っこにある柳鼓長屋。 なんでも奥にある柳を蹴飛ばせばポンっと鳴くらしい。 そんな長屋の差配の孫娘お七。 なんの因果か、お七は産まれながらに怪異の類にめっぽう強かった。 徳を積んだお坊さまや、修験者らが加持祈祷をして追い払うようなモノどもを相手にし、 「えいや」と塩を投げるだけで悪霊退散。 ゆえについたあだ名が柳鼓の塩小町。 ひと癖もふた癖もある長屋の住人たちと塩小町が織りなす、ちょっと不思議で愉快なお江戸奇譚。

原産地が同じでも結果が違ったお話

よもぎ
ファンタジー
とある国の貴族が通うための学園で、女生徒一人と男子生徒十数人がとある罪により捕縛されることとなった。女生徒は何の罪かも分からず牢で悶々と過ごしていたが、そこにさる貴族家の夫人が訪ねてきて……。 視点が途中で切り替わります。基本的に一人称視点で話が進みます。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

冤罪で追放した男の末路

菜花
ファンタジー
ディアークは参っていた。仲間の一人がディアークを嫌ってるのか、回復魔法を絶対にかけないのだ。命にかかわる嫌がらせをする女はいらんと追放したが、その後冤罪だったと判明し……。カクヨムでも同じ話を投稿しています。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

離婚した彼女は死ぬことにした

まとば 蒼
恋愛
2日に1回更新(希望)です。 ----------------- 事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。 もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。 今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、 「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」 返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。 それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。 神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。 大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。 ----------------- とあるコンテストに応募するためにひっそり書いていた作品ですが、最近ダレてきたので公開してみることにしました。 まだまだ荒くて調整が必要な話ですが、どんなに些細な内容でも反応を頂けると大変励みになります。 書きながら色々修正していくので、読み返したら若干展開が変わってたりするかもしれません。 作風が好みじゃない場合は回れ右をして自衛をお願いいたします。

処理中です...