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149 イカVSツチノコ 後編
しおりを挟む猛然と迫るダイオウイカもどき。
私たちは後退しつつ特殊竹魚雷を射出、起爆させてはヤツの進路上に機雷をばら撒き、対防御用弾幕を展開する。
が、次の瞬間には機雷が破壊されてしまった!
やったのはダイオウイカもどきだ。
ダダダダダッ!
墨の玉をマシンガンのように放っては、邪魔な障害物を次々に撃破していく。
一掃される機雷群、瞬く間に弾幕が破られた。
「なっ!? 煙幕に、トリモチに、弾丸まで! イカ墨が万能すぎる!」
驚愕しているうちにも、両雄の距離はみるみる縮まっていく。
ここまで近づいては、もはや竹魚雷は使えない。
タケノツチノコは武器を手にしたマシンアームにて、接敵に備える。
四本あるマシンアームの武装は、シールド、銛、水中銃……それからクロー?
シールドが耐衝撃防御のための装備なのは、まぁまぁ。打撃にも使えるし。
銛も素潜り漁であることを考えれば無難かと。
水中銃は射程や威力は陸上よりも劣るものの、飛び道具が使える利点は大きい。
クローは鋭いカギ爪のことだ。四本爪、手甲と一体型にて攻防に役立つ武器だそうだけど、なぜにこのチョイス!?
たぶん、タケノツチノコの制作陣が積載量の関係で、あれこれ検討した結果なんだろうけど、正直なところ小首をかしげざるをえない。
けど、ゆっくり考えている暇なんてあるわけもなくて――
「来るよ! イスケ、アーム操作をお願い。みんなは衝撃に備えて!」
その言葉が終わるやいなや、ガツンときた。
けど、蛇体を捻り、ギリギリ、正面衝突はかわす。
ガリガリガリガリ……
接触し、互いを削りながらすれ違うタケノツチノコとダイオウイカもどき。
このまま通り過ぎて、いったん間合いをとるのかとおもいきや、そうはならない。
タケノツチノコの尻尾に絡みついたのは、イカ足の数本。
それにより両雄が結ばれた格好となり。
びぃいぃぃぃぃん!
繋がり一本の紐のようになる。
刹那、行き場を失った運動エネルギーが両雄の体を引き千切らんと暴れ、接点にももの凄い負荷がかかったもので――ギチリギチリ――タケノツチノコの船艇が軋んでは、厭な音を立てた。
このままではマズイと判断した私は、操縦桿を左に倒す。
すると向こうも苦しかったのか、あちらは右へと舵を切る。
結果、両雄共に半円を描き、まるで陰陽図のような軌道を描くことになった。
これにより互いの尻を追いかけながら、同じところをグルグル回る回る回る。
さながら互いを尾を喰い合って輪っかになったウロボロスのヘビのよう。
生じる遠心力により、船艇内にいる私たちは押し潰され「ふんぎぃいぃぃぃ」
でも苦しいのは相手も同じ。
よってしばし意地の張り合い、我慢比べの様相を呈す。
先に音をあげたのはダイオウイカもどきであった。
動き回るのを止め、その代わりとばかりにグニャリと軟体を曲げては、こちらに掴みかかってくる。
八本ある足を絡ませ、四本ある触腕にてこちらを締めあげようとする。
させじとイスケがマシンアームを操作しては、のびてくる触腕を防ごうとする。
くんずほぐれつ。
組み合う両雄。
さなか、私は舷窓越しに見える景色に「ひよえぇぇぇ」
八本足の付け根にあるイカの口が、すぐそばにある。
ノコギリのようなギザギザの歯がぎっちりで、閉じたり開けたりしてはガチガチと歯を打ち鳴らしている姿が、完全にモンスター・パニック!
この時点で形勢は五分と五分。
……と言いたいところだけど、実際のところは六対四で私たちが劣勢だ。
なぜなら絶えず機体を締めあげられており、ちくちくとダメージが蓄積しているから。浸水もしているらしく、さっきからずっと緊急事態を告げるアラームがやかましい。
頼みのマシンアームも触腕を抑えるので、文字通り手一杯にて。
だがこの危機的状況を打破したのは、意外にもクローであった。
組み敷かれた状況下、長柄の得物はおもうように動かせない。
クローもまたマシンアームの方を掴まれており、ままならなかったのは同じだけれども、もみ合う最中のこと、ウィン、ウィンと四本の爪が独立した動きをみせては角度を調整、狙いを定めたところで、バシュッ!
四本爪が次々に発射される。
至近距離にて狙いあやまたず。
一本はダイオウイカもどきの三つ目のうちのひとつに深々と。
一本は額に突き立ち、一本は口腔内へと吸い込まれ、一本は触腕へと刺さる。
でも、それで終わりではなかった。
直後に、バチバチっとプラズマ現象が発生したかとおもったら、ボカン!
爪が爆ぜた。
クロー……想像以上に凶悪な武器であったようだ。
でもおかげで助かった。
苦しみのあまりたまらず離れたダイオウイカもどきは、逃げようとするもそれを許す私たちではない。
その背へと向けて、銛を投げつけ、水中銃をぶっ放し、竹魚雷をしこたま打ち込みゲームセット。
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