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144 有人潜水調査艇タケノツチノコ
しおりを挟むズルゥリ……シュルシュルリ……
ズルゥリ……シュルシュルリ……
左右に身をくねらせながら、地面を進むのは蛇体だ。
全長は30メートルほどにて、ちょっと胴回りがふくらしているツチノコ体形。
これはタケノミズチの後継機にて。
マダケ、モウソウチク、ハチク、キッコウチク、ゾウタケ、ホテイチク、メダケ、トウチク、クマザサ、ナリヒラダケ、ホウオウチク、リュウキュウチク、チゴササ、インヨウチクなどなど。
600種とも1200種とも云われている竹たち。
大小さまざまな大量の竹たちを編み込み、からませ、一本一本をまるで筋肉の繊維のように組み合わせることで自在に動けるようにした有人型の竹ヘビだ。
初代・竹の里の守護神であったタケノオオミズチ。
あれのスモールバージョン。
ミズチシリーズとしては、四番機になる。
ちなみにナンバリングは以下の通り。
一号機、にょろにょろ動く自律可動型の小型の竹ヘビ。
二号機、決戦兵器タケノオオミズチ。
三号機、対ハート用の切り札・大型決戦兵器タケノヤマタオロチ。
四号機、水陸両用・有人潜水調査艇タケノツチノコ。
そうなのだ!
これこそが湖底の城を探索するために用意したとっておき。
じつは広くなった領土の監視用にと、タケノミズチを複数体、放って領内を見回らせる計画が以前から進行していた。
だからそのうちの一体を回して改造、潜水艇へと仕上げたのである。
水に沈みにくい竹の特性については、バラスト機構を取り入れることで解決した。
バラストタンクの代わりに竹の稈内部に水を取り込むことで、浮上や沈降を調整する。この仕組みは潜水艦と同じだ。
水圧に関しては、私がムムムとリグニンパワーを大量に注入した、特製の竹を材料に建造することでノープロブレム。
あくまで設計上だが、いちおう深度七千メートルまで耐えられる……らしい。
機動性に関してはヘビの体にすることで、かなり向上している。
途中で壊れたらたいへんなので、しっかり頑強に作ったが、それゆえに陸上での動きこそはやや鈍重になってしまったけれども、水中ならばスイスイ、にょろにょろ動ける。
他には多関節のマシンアームを四本内蔵しているのも注目ポイント。
これは私こと竹姫さまの指や腕をモデルに制作されており、パイロットと同期することで、本当の自分の腕のように動かせる優れもの。ただし遠隔操作は不可。機体に搭乗した上での同期となる。
いざともなれば武器を持って戦うことも可能なので、もしも水中で敵と遭遇したり、不測の事態が発生しても十分に対処できるだろう。
大容量バッテリーと補助バッテリーを搭載しているので、連続稼働時間は24時間ほど。
ただしこれは深度や運転内容によって変動するので、急激な操作をすればその分だけ消耗が早くなる。
有線稼働にも対応しており、この場合であればずっと地下茎からリグニンパワーが供給され続けるので、時間制限はない。
搭乗員数は竹人形換算で六体まで。
なお普通の人間みたいに気圧のことなどは気にしなくていいので、減圧などの手間はなく、急速潜航・浮上が可能なのも特筆すべき点だろう。
急ごしらえのわりには、なかなかの自信作。
とはウンサイさん。
テストなしのぶっつけ本番。
いきなり処女航海というのが、少々不安だが、まぁ大丈夫だろう。
ちなみに今回、タケノツチノコに乗り込むのは……
パイロット兼チームリーダー、竹姫。
メカニック兼メンテナンス要員、竹工作兵×3。
戦闘担当、竹砲兵長イスケ。
通信担当兼タイムキーパー、竹女官ヒコノ。
ズルゥリ……シュルシュルリ……
ズルゥリ……シュルシュルリ……
ズルゥリ……シュルシュルリ……
川の流れをさかのぼり、ときに巨岩をまたぎ、渦を越え、滝をものぼり、やってきましたゴダイゴ。
さっそく目的地である北東にある一番大きな湖へと向かう。
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