竹林にて清談に耽る~竹姫さまの異世界生存戦略~

月芝

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130 第一回仮面コンペ

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 ダンダダン!
  ダンダダン!

 力強く、勇ましい足踏みにて地響きがする。

 カン! カン! カカン! カン! カカン!

 大地の揺れに被せるようにして、一定のリズムにて打ち鳴らされるのは、竹と竹をぶつける音だ。
 特設会場に集まった竹人形たち――総勢、五千体以上が、一斉に自身の二の腕同士をぶつけては興奮し、やんやと囃し立てている。

 月下の竹林にリズミカルな奏が鳴り響く。
 竹で組んだ会場のステージの上では、四人組のガールズバンドが演奏の真っ最中。

 ブゥオォォォォォォ~~~~ン♪
 キンコン、キンコン、カンコンカン♪
 ちりとてちんちん、ちんとんしゃん♪
 ピ~ヒャラ、ピ~ヒャラ、ヒャラララ~♪

 私こと竹姫が尺八を吹き、三人竹官女のタマキが篠笛を、ヒコノが竹琴ちっきん、オヨウがお琴を担当しての四重奏カルテット
 ちなみに竹琴とは竹で作った木琴みたいな打楽器のことである。

 以前に披露した時とは比べものにならないほどの演奏の達者ぶり。
 暇にあかせて……げふんげふん、失礼。
 この日のためにと密かに練習を重ねてきた成果だ。
 加えて楽器のグレードも格段にあがっている。
 こちらはウンサイさんが忙しい合間にがんばってくれたおかげ。あとジュドーくんが外部から楽器作りに適した良質な素材を、いろいろ仕入れてくれたことも忘れてはいけない。

 楽曲はイベントを盛り上げるために、とにかく派手で華やか、軽快かつ勢いがあるものを、バンド仲間たちと協議して選んだ。
 全十曲のうち七曲がアニソンベースのものになったのはさておき。

 大いに盛り上がったコンサート
 アンコールを受けてプラス2曲を演奏したところで、みんなに惜しまれつつも、おしまい。
 だがしかし、このコンサートは前座にすぎない。
 オープニングアクトだ。
 存分に場が温まったところで、いよいよ本日のメインイベントの始まりである。

 いったん舞台袖に引っ込んだ私が再び舞台上に登場。
 尺八を竹マイクに持ち替えては「第一回仮面コンペを開催します」と高らかに宣言するなり、観客たちがドッと湧いた。
 それを「どうどう」となだめつつ、「まずは本日のコンペのために、わざわざこんな竹林の奥深くまで足を運んでくださった、ゲスト審査員たちをご紹介しま~す」

 ゲスト審査員は三人。
 ひとり目はヒドロキシ・メチル・フルフラール。
 我らカイザラーンとは戦略的互恵関係にあるキノコの国の魅惑の女王さま。
 竹通信にてダベっている時に、うっかりコンペの話をしたら「まぁ、楽しそう。ぜひとも参加したいわ」と言って本当に押しかけて来た。
 まぁ、来てしまったものはしょうがない。
 貴人が審査員席に座ることで、イベントの格があがり、華も添えられるから良しとしよう。

 ふたり目はジュドーくん。
 ケモミミと尻尾を持つテリオン族の青年。
 なかなか端整な顔立ちをしたイケメンな獣人で、イヌ系というよりかはオオカミさんっぽいワイルドな雰囲気にて、藍色の髪と同じ色をした尻尾がフサフサしている。
 元探索者で、現在はうちのフロント企業であるバムブック商会の会長だ。唯一の外部協力員でもある。
 そんなジュドーくんだが、しきりに隣を気にしては恐縮していた。
 どうやらフルフラールにビビっているらしい。
 まぁ、それも無理からぬこと。なにせ彼女はハイボ・ロード種であるシャンピニオン・ロードの長。
 ようやく私たちに慣れてきたところなのに、いきなり第二の超優良種と間近に接することになったのだから。
 私としてはちょっとしたサプライズのつもりだったんだけどねえ。

「先に言っておいてください。心臓が止まるかとおもいましたよ!」

 ジュドーくんから涙目でにらまれて、私は「ごめん」

 三人目もまたテリオン族だが、こちらは幼女。
 ジュドーくんの妹であるルティちゃん、八歳。
 お兄さんはオオカミ系だけど、彼女はちょっとシバイヌっぽくて、めちゃくちゃかわいい。
 竹通信を通じて何度かお話はしていたけれども、こうして実際に顔を合わせるのも、うちにお招きするのも初めてにて。幼女はずっと興奮しては尻尾をぶんぶん振りまくっている。その仕草がまた愛らしすぎる。
 やはりこの一瞬を永久保存できるカメラの開発は急務であると、私はあらためておもった。
 そんなルティちゃんは、竹人形たちやフルフラールに物怖じすることなくキャッキャとイベントを楽しんでいる。う~ん、将来は大物になるかもしれない。

 当初、コンペの審査は私を含めたネームドメンバーでやろうかと考えていた。
 だが、フルフラールの押しかけ参加が決定した時点で、考えをあらためた。

「どうせなら、第三者の意見も参考にすべきかも」と。

 なにせ私たちにとって、お面は対外的な装備なわけで。
 私たちが気に入るのは当然として、相手の目にどう映るか、が大事である。
 独りよがりではいけない。
 そこで外部の意見も積極的に取り入れようとおもいたつ。
 密かに私が期待しているのはルティちゃんだ。
 ジュドーくんはマジメな青年ゆえに、うちとの関係もあってか、いらぬ忖度をしそう。
 フルフラールは……ぶっちゃけ、ひやかし程度であてにしていない。それに華麗な見た目に反して、その実態は干物女だし。
 その点、子どもの頭は柔軟にて、大人みたいに余計なことを考えない。感じたままを率直に口にする。
 忌憚のない意見こそが金言にて。

 三人のあとは、サクタやマサゴなどのネームド審査員らの紹介にうつるが、こちらはお馴染みの顔ぶれなので、ササッと流す。

「それではさっそくいってみよう。まずはエントリーナンバー1番、キリア工房の作品から」

 私が手をあげ合図をすれば、ゴロゴロゴロ……
 舞台袖より竹女官のタマキが台座付のカートを押してあらわれ、舞台中央へと。
 台座には紫の布が被せられている。
 所定の位置に着いたところで、ライトアップ。
 みなの注目が集まる中、タマキが布をめくるなり、「「「「おぉーっ」」」」
 会場中でどよめきが起きた。


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