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076 八つ首、猛攻
しおりを挟むタケノヤマタオロチ。
八つの首による猛攻!
第一の首は動く砲台にて、バンバンぶっ放す。
第二の首は剣刃をたくさん生やしており、敵を切り刻む。
第三の首は鉄をも焼き斬る青白い炎を轟々と吐く。
第四の首は無類の頑強さを誇り、それ自体が盾となる。
第五の首はそのものが巨大な槍となり、敵を貫き、串刺しにする。
第六の首は超強酸性の竹酢液を噴射し、対象を溶かす。
第七の首は蜘蛛の糸のごとく大量の竹ヘビを吐き出しては、獲物を絡め捕り、締めあげ、縊り殺す。
そして第八の首は……
第二の首による剣撃をかわし、第五の首による刺突をも避けたものの、そこでハートはやや態勢を崩す。
そのタイミングでぐわぁんと当たったのが、第四の首による体当たり。
シールドバッシュ!
重たい一撃にて、受け止めようとしたハートはこらえきれずに片膝をつき、ガクッと頭が下がった。
でも、そのおかげで命拾いをする。
直後のこと。
ついさっきまでハートの頭があったところへ、ガブっと噛みついたのは第八の首にて。
他の七つに比べれば、一見すると特色のない地味な蛇首である。
しかし、その噛むチカラ――咬合力が凄まじい。
そのチカラは約7000kgにも相当する。
ちなみに……
人間の成人男性の平均が70kg。
最大級の爬虫類であるイリエワニが3185kg。
恐竜のティラノサウルスが推定3630kg。
第八の首の咬合力がいかに凄絶であるかがわかるだろう。
ただ獲物に噛みつき、噛み砕き、噛み千切ることにのみ特化した首。
ほんのわずかに牙がかすっただけで、ハートの左肩口から背へとかけて、一部の毛皮と肉が抉れて、血がにじんだ。
「――っ!」
傷を負ったハートが這いつくばるような格好にて、ドンッと地面を蹴る。
これにより後方へ大きく下がって、八つ首より距離をとった。
王者が膝を屈したばかりか、傷を負い、みずから後退する。
かつてない出来事にハートの目つきがさらに厳しくなった。
一方でコクピット内でその様子を見ている私たちの表情も険しい。
以前は総がかりでも傷ひとつ、まともにつけられなかった相手だ。
でも今回は私たちの攻撃がちゃんと通じている。
開戦してからこっち、こちらのペースで推移しており、押せ押せムードにて攻勢も強めている。
事実、ハートは防戦一方だ。
だが出来ることならば、先ほどの第八の首の噛みつき攻撃を決めたかったというのが、私の本音である。
なにせハートは洞察力に優れている。
知能も高い。荒神みたいな見た目に反して、とてもクレバーで、したたかだ。
そんな相手に手の内を晒すのはあまり好ましくない。
だから初手でケリがつくのならば、それにこしたことはない。
が、結果は手傷こそは負わせたものの、まだまだ元気にて。
後退こそはしたが、それだって闇雲に下がったわけじゃない。
絶妙な距離だ。
八つ首からのどの攻撃にも対応できる間合いを、考えた上での行動だ。
かとおもえば、唐突に横へと走り出す。
ぐるりと半円を描く軌道にて、どうやらこちらの背後をとるつもりのようだ。
タケノヤマタオロチは八つの首の動きはどれも俊敏だが、反面、それらを支える胴体部分はどっしりしており動きはけっして速くない。
それを早くも見切ったがゆえの、この駆け足である。
だがしかし――
「それはいささか私たちを……、ウンサイさんら黒鍬衆のみんなをナメ過ぎじゃないかな? タマキ、お願い!」
機体制御を担っている三人竹官女らに声をかけるなり、タケノヤマタオロチの体のそこかしこが回転を始めた。
八つの首が一斉にうしろを向いたところで、首の付け根がガコンと動き、180度回頭。
続いて太長い胴体部分でもガッコンと音がして、これまた回転する。
その動きはさながらルービックキューブをガチャガチャ回すような仕草にて。
これにより瞬時に機体の向きが変わり、背後から襲いかかろうと目論んでいたハートはギョッと大きく目を剥き、たたらを踏んだ。
そこへ八つの首が襲いかかる!
怒涛の連撃、破壊の嵐がパンダクマを呑み込んだ。
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