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068 捕捉
しおりを挟む竹要塞の周囲に張り巡らされた掘は二重構造になっている。
一見すると浅そうにみえて、踏み込んだらたちまち下層の奈落に落ちていく。
底には竹槍ばびっしり、岩肌にはたっぷり竹油がぶちまけられており、底には竹油を仕込んだ樽がいくつも埋められてある。
火をつければたちまちドカン!
掘全体が大爆発を起こし、灼熱地獄と化す。
けっして意図したわけではないのだろう。
だが、結果として竹侍将軍とスエッコはいっしょに掘へと落ちた。
期せずしてタイマンの形となる。
この状況にあわてたのがサクタの麾下の者たちだ。
すぐに自分たちの大将に続こうとするも、それは私が止めた。
「ここはサクタに華を持たせてあげましょう。大丈夫よ、あの子は強いから」
暗い地の底での戦い。
なまじ数が揃っていると、かえって動きづらくなる。
味方が足を引っ張ることになりかねない。
だからここはサクタを信じて、託す。
一方で、そうしている間にも戦局は流動していく。
パンダクマの次兄カンスケの方に動きが……
発見したのは竹忍犬のうちの一頭であった。
竹要塞の周辺全域に索敵をかけていたのだが、ついに雲隠れしていたヤツの姿を捉えることに成功する。
なんと! カンスケは落ち葉やドロを身にまとうことで、カモフラージュしては、こちらを後背から狙うべく大きく迂回していたのである。
おそらくは竹忍者らの格好をマネしたのだ。
以前に対峙したときに、流用することを思いついたのであろうが、やはり小賢しい……
私のもとへ届いた報告のなかには、他にも気になることがあった。
それはカンスケが手にしている武器について。
長さは三メートルほど。見た目は大きなサビたクギのようにて、何気に厭な気配を漂わせているとのこと。
いくら知恵が回るとて、パンダクマらに武器を造るような技術はない。
話を聞いて、私がぱっと思いついたのは鹵獲品だ。
パンダクマらを討伐しようとして返り討ちに合った連中が持ち込んだモノ。
その大きさや形状からして、大型の強弩の矢なのかもしれない。
けど……
「あのカンスケが崩壊寸前の巣穴から逃げる際に、わざわざ持ち出した? ……どうにも気になるね。どれ、念のために自分の目でもたしかめておくかな」
発見の報を受けて、上空からは竹蜻蛉たちが、地からは竹忍者と竹忍犬たちがヤツを追跡している。
そのうちの一体と私は同期する。
目を借りてカンスケの様子を確認するなり、私はゾッ!
理由はわからない。
でも、カンスケが抱えている品をひと目するなり、身の内を大量の毛虫が這いまわるようなゾワゾワ感に襲われた。身の毛がよだつというのは、こういうことか。
「なによ、アレ……気持ち悪い」
てっきりアンスロポス族の軍勢からの戦利品かと考えていたが……たぶん、ちがう。
彼らの使用していたマギアや、禍石を用いて造ったという武具や装備類ともまるで別物だ。
この世界に転生して以降、感じたことのない強い嫌悪……あるいは忌避感か。
「……いや、ちがう。そうじゃない。私はこれを知っている。あの時、あの場所で感じたのに近しい感覚……古代遺跡で感じたのと同じだ」
現在は第二拠点としてフル活動している逆さピラミッドの古代遺跡。
だが、私はどうにもその場所が気に入らなくて、普段は離れたところにある屋敷で過ごしている。用事がなければ、まず出向くことはない。
「……ということはカンスケが持っているアレは、どこぞの遺跡から拾ってきた遺物ということになるのかしらん? なんにせよ、きっとロクなもんじゃない」
どうにも得体が知れない。用心するに越したことはない。
私はすぐに「カンスケの動向および、彼が持つ品に注意すること」と全軍に通達した。
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