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033 古代遺跡
しおりを挟むそれを発見したのは竹女武者マサゴであった。
狩りの途中、岩場に追いつめたデカいトカゲの姿が急に消えたもので「?」
いなくなった地点を調べてみたら、地面に不自然な割れ目があって、どうやらそこに逃げ込んだらしい。
だから付近を調べてみたら、明らかに何者かの手が入ったような形跡のある岩がゴロゴロしていた。
報告を受けて興味を覚えた私は、さっそくマサゴに案内を頼む。
なにせここにきて、ようやく現地人の存在を示すかもしれない手がかりがあらわれたのだ。もしも古代遺跡の類ならば、いまもどこかで文明が残っており、生活をしている者たちがいる可能性がぐっと高まる。
パンダクマたちへのリベンジも大事だが、それだけにかまけてはいられない。
より高見へと至るためにも、私は自分自身についてより詳しく知る必要がある。
情報がいる。知るべきこと、知りたいことが山のようにある。
そのためには外部との接触は不可欠にて。
以前は問答無用で襲っては脳みそをチュウチュウしてやろうとか、乱暴なことを言っていたが、竹林の庵にて静かに暮らすうちに私は考えをあらためた。
いきなりケンカ腰はダメだ。まずはフレンドリーに声をかけてみよう。
話がわかる相手ならば交易を持ちかけてもいい。
品物ならばたんとある。
竹で作った各種工芸品の他に、竹炭、竹酢液、竹粉、竹茶、竹紙などなど。
地中からかき集めた鉱石類や宝石の原石っぽいのもある。獲物から採取したゴツイ角や牙に骨も一部保管してある。なんなら自慢の青竹を提供してやってもいい。
もっとも話がちっとも通じない蛮族だったら、問答無用で殲滅し、まとめて養分にしてやるけれども。
私は念のために竹侍大将のサクタと竹忍者コウリンを連れて現地へと足を運んだ。
なお竹女官タマキは留守を任せてある。
「ほぅ、これはこれは……」
でっかいサイコロみたい。
マサゴが言っていた通りにて、苔むした四角いキューブ状の岩は明らかにヒトの手によって削られたとおもわれる。
ひとつやふたつならば、たまたまそうなったとも考えられるが、ほぼ同じサイズのモノがゴロゴロしているとあっては、さすがにちがうだろう。
試しに付近の地面をほじくりかえしてみれば、同じモノが埋まっていた。
そこで私は「ムムム」と念を込めて、地下茎を周辺にのばしがてら意識を集中し、地中の様子を探る。
すると脳裏に浮かんできたのは、四角錐状の巨石建造物を引っくり返したようなイメージ。
「まるで逆さピラミッドじゃない。こりゃあ古代遺跡で確定だね。にしてもけっこう大きい……」
ざっと調べたかぎりでは、底辺が100メートルほどで、高さは80メートルぐらい。
ピラミッドとすればかなり小ぶりの部類に入るが、それでも20階建てのビルに相当するので立派な高層建築である。
ちなみに元の世界で一番大きいとされていたギザのピラミッドの底辺は231メートル、高さ146メートルに達するというから驚きだよね。
よくもまぁ、重機も運送用トラックもない時代に、砂地のど真ん中にあれだけの規模のモノを、人力だけでこさえたものだとホトホト感心する。
閑話休題。
う~ん、入り口が見当たらない。
どうやら長い歳月を経るうちに埋もれてしまったようだ。
遺跡を傷つけるのはいささか気が引けるがしょうがない。最初に発見した割れ目をこじ開けて、遺跡内へと侵入することにした。
〇
古代遺跡の地下一階にて――
逆さピラミッドという構造上、ここが一番広い。
当然ながら内部は真っ暗。
そこで私が取り出したのは竹製の懐中電灯である。
手頃な大きさの竹筒をくりぬいたものに電球を仕込んだだけの簡単な造り。電球のフィラメントはもちろん竹製にて、私自身が電池替わりなのでよほどのことがないかぎりは電池切れの心配はない。
なおこうやって私自身が出張っていることにより、サクタたちは遺跡内でもふつうに動けていたりする。
地下茎からのびたリグニンコードによりエネルギーを供給されている竹人形たち。
ゆえに竹林内、もしくは地下茎の支配下にない地域では満足に稼働できない。
でも、私こと竹姫ちゃん(中)をあいだに挟むことで、このリグニンコードが延長される。
ようは私の体が延長コードの役割りを果たすというわけだ。
これもまた小から中へと成長した恩恵のひとつである。
地下一階部分は通路が入り組んだ迷路のようになっていた。
前後をみんなに守られつつ進む。
帰り道に迷わないように、時々、壁や床に矢印を刻みながら進むことしばし。
懐中電灯の灯りに照らされたのはトカゲの死骸である。
「マサゴの逃がした獲物ってコレ?」
訊けば竹女武者がコクリとうなづく。
トカゲの死骸は何者かに食い千切られたかのようにして、腹のあたりがごっそりと抉れていた。
それすなわち、ここには堅い鱗に覆われたワニほどもあるトカゲを捕食する危険な存在が徘徊しているということ!
これにより私たちは警戒レベルを一段階あげた。
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