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019 開拓事業スタート
しおりを挟むタケノコから竹姫(小)に成長? したことにより嬉しい誤算が生じる。
それは麾下の竹人形たちにも良い影響がおよんだこと。
まずみんなの動きが格段に良くなった。
どうやら主人がパワーアップしたことで、彼らも恩恵を受けたようだ。
おかげさまにて、自陣営がここにきて急成長と拡大を遂げつつある。
まず竹武者だが、その数が百二十にまで増えた。
剣、槍、弓で武装した三部隊構成なのは同じ。
ただし各部隊の隊員数を調整した。
剣撃を担う部隊はそのまま、あえて増員しない。
この二十体は少数精鋭にて、小隊の指揮をとったり、切り込み役として働いてもらうつもりだ。
槍の部隊は数を四十体とし、前線にて槍衾を敷いてもらったり、敵の包囲殲滅を担う。個よりも集団戦に重きを置く。
弓の部隊は数を六十体とし、遠距離支援に徹してもらう。
息の合った一斉掃射により、戦場に矢と血の雨を降らせるのだ。
竹忍者たちの斥候部隊も十体にまで増員し、さらには竹イヌを発展させた竹忍犬をひとり一頭ずつ与えた。ペアとなることで彼らの索敵能力は格段にアップしたはず。
なおこれらの指揮を執る侍大将はもちろんサクタである。
自軍の規模が大きくなり、軍備が充実するのに合わせて彼の体も造り変えた。
竹の品種のなかでも建築資材などにも使用されてきたモウソウチクをベースに、サクタのニューボディを組んだのは以前と同じだけれども、今回のモウソウチクはそんじょそこらのモウソウチクとはひと味ちがうぜ!
なにせ私の中に満ち充ちているリグニンパワーを「ふんぬぅ~、どりゃあ~」
これでもかとドバドバ注入し強化した特別版だから。
はっきり言って強度だったら、下手な鉄筋コンクリートよりも上であると自負している。
体格も以前よりひと回り大きくなっている。
ひょろっとした若侍が、貫禄のある武将へと変貌を遂げた。
竹ウマに騎乗し、五メートルを越える槍を軽々と振るう様はとっても勇ましい。
なおサクタの槍は、戦国最強との呼び声も高い本多忠勝の愛槍にして、天下三名槍のひとつに数えられる蜻蛉切を模したモノである。
といっても長柄部分は竹製だけどね。
でも穂先はちゃんと鉄製だよ。
さすがにこの先「竹だけじゃ厳しいかなぁ」と悩んでいたら、竹工作兵たちがチョイチョイと指し示したのが地面の下であった。
竹林の下には鉄鉱石がちらほら埋まっており、これを使いたいとのこと。
なので好きにさせていたら、いつのまにやら立派な穂先やら刀に鏃鏃とかをこさえるまでになっていた。
「えぇーっ! どうやって鉄なんか精製したのよ? 鍛冶場も溶解炉もないのに」
それどころか火だって使っていない。
頭にハテナマークを浮かべて首をかしげていたら、竹工作兵のひとりが実演してくれた。
竹工作兵は発掘した鉄鉱石に向かって手の平をかざし、ビビビと目には見えない念力みたいなのを飛ばしたとおもったら、あら不思議!
硬い石がたちまちぐにゃりと柔らかくなって、鉄とそれ以外とにわかれてしまった。
錬金術? それとも魔法?
いつの間にこんな芸当を身に着けたのかと、私は目をぱちくり。
さすがは異世界、なんでもアリだな。
なおそんな器用な竹工作兵たちの数も増えて、いまや五十に膨らんだ。
だから私は彼らをまとめて黒鍬衆と呼ぶことにした。
私の身の回りのお世話をしてくれる竹女官も増えて、いまや三人官女だ。
そんな彼女たちからよってたかって世話を焼かれるいいご身分となった私は、まさにお姫さま状態にて「ふはははは、わらわは満足じゃ~」
姫の身辺警護を担う竹僧兵も十体となり、薙刀片手に鉄壁の守りを敷いている。やぶ蚊一匹近寄れない。
「フム、けっこうな大所帯となったな」
そして今後も増えていく予定だ。
となると、さすがにいつまでも野宿では様にならない。
朝露に濡れると、竹皮のマントがへにょんとなるのが、じつは前からちょっと気になっていた。
そこで私は決意した。
「よし、里を作っちゃおう」
かつてタケノコの身であった頃にいた場所を中心にして、半径200メートルぐらいの竹を思い切ってバッサリカットしちゃう。
とはいえ、もちろん地下茎はそのまま残しておくよ。
だってそうしないとワイヤレス竹電が機能しなくて不便だから。
ひらけた土地を確保したところで、私はペットの竹イヌと黒鍬衆を連れて土地を見てまわっては、手にした竹棒にて地面に印をいれていく。
「ここには家を、こっちには兵たちの屯所でしょ、監視用の櫓もいるか。あとあそこに井戸を掘って……。そうそう里の周囲には空堀も欲しいわね、深さはとりあえず三メートルもあればいいかしら? その辺のことは現場の判断にまかせるわ。あとは丈夫な防壁もお願いね」
ざっくりとした指示を受けて、さっそく黒鍬衆が散っていく。
準備が整い次第手分けして作業を開始するだろう。
疲労知らずにて24時間戦える優秀な部下たちを持ち、私は幸せ者である。
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