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254 ガァルディア対ミラ
しおりを挟む正面から飛んでくるイカヅチを切り裂いた巨大なオノ。
剛腕による凶刃が猛然と迫ろうとするも、突如として出現した蒼光の格子がその行く手をはばむ。
いっしゅん動きを止めたところに、頭上より落ちたカミナリ。
これをすんででかわしたガァルディア。
その隙にミラは距離をとる。
なんとか懐に入ろうとするガァルディアと、それをさせまいとするミラとのはげしい攻防。
ここは室内にて投げたら手元にもどってくるオノのチカラはつかえません。だからガァルディアの攻撃の手段が限られてくる。その点はミラに有利。かといって人形の剛力は一度でもつかまれた終わりなので、けっして油断はできません。
両者は目まぐるしく動き回りながら、つねに自分の得意な間合いを維持しつつ、必殺の一撃を放たんとしていました。
そんな最中にもしたたかに着々と下準備を整えていたのは紫眼のミラ。
両の手より球体のイカズチをいくつも造りだすと、これを次々に放つ。
だが遅い。ふわりふらりと宙を飛ぶものの、からくり人形に難なくよけられる。
なんのつもりだろうかとガァルディアがいぶかしんだときには、すでに周囲に多数の光る球体がパチパチと放電する姿が浮かんでいました。
困惑しているからくり人形にニヤリと笑みを浮かべたミラ。
左右の腕より交互につづけてイカズチを放つ。
一本をオノで切り払い、もう一本はしゃがんでかわしてみせたガァルディア。
前方には無防備な態勢となっているミラの姿が。
これを好機ととらえ、足を踏み込んで矢のように飛び出そうとするも、背後から迫る圧力を感じてとっさに横にはねた。
するとスグそばを通り過ぎたのは、さっきかわしたはずの蒼い閃光。
だがさらにガァルディアをおどろかせたのは、そのイカヅチが浮かんでいる光の球体に当たるなり反射、球体から球体へと伝わり、ジグザグに複雑な軌道を描き、さらなる加速と威力でもって自分へと向かってきたからです。
目まぐるしく周囲を行き来するイカズチ。
このままだとじきにさばききれなくなると判断したガァルディアが、球体の囲みから脱出を試みるも、ミラがそれをさせまいとつづけざまにカミナリを放つ。
それらがガァルディアの動きをじゃまするばかりでなく、同様に次々と反射をくりかえし、からくり人形をドンドンと追い詰めていく。
ならばとガァルディアが手近な球体にオノを打ち下ろす。
が、ふわりとよけられた! まるで引く波のような自然な動きにて。
「なっ、もしやコレもカミナリのせいか」
あせるガァルディアに、「ご明察」と答えたミラは余裕の表情。
どうやら何度もイカヅチを斬り伏せているうちに、オノに少しずつ帯電して球体と反発を招いたらしい。
己のうかつさをくやしがるからくり人形。
だがミラの攻めはさらに苛烈を極める。
「クラフト王が残したアンタをあなどるつもりなんて、はなからないよ。だから、わるいけど全力でいかせてもらう」
言うなり彼女の赤髪が燃え盛る炎のごとく逆立ち、女の魔力がグンと高まり濃度をまして、周囲の空気を陽炎のごとくゆらめかせる。
そのカラダがまばゆい光を発し、中からのそりと姿をあらわしたのは一匹の赤い大蛇。
ここにきてミラがその本性をさらけだす。
全力全開での一撃を目の前の強敵へとふるうために。
大蛇がかま首をもたげる。
紫の瞳がにらみつけたのは、幾筋もの飛びまわるイカヅチに四方から攻められて防戦一方となっているガァルディア。
「こいつで終いだよ。さすがのアンタでもこれならばよけられまい」
大蛇が咆哮をあげ、全身から強力なイカズチが放たれる。狙いなんて関係なしに、放たれた雷撃。大小無数の稲光が走り、世界を塗りつぶしていく。
膨れあがった蒼い光が大広間を埋めつくし、その場にいたすべてを呑み込む。
一切の逃げ場を封じられた状態にて、これにまき込まれたガァルディア。
防ぐこともままならず全身をカミナリに蹂躙される。
そればかりか周囲を飛びかっていたイカズチまでもが殺到し、からくり人形の身を貫く。
閉鎖された室内にて急激に高まり、解き放たれたチカラが大爆発を起こす。
それとてもこの広大かつ優美な白銀の魔女王の城を、ほんのすこしだけふるわせたにすぎない。
だが渦中にとり込まれた者を見舞った破壊は想像を絶す。
室内にこもっていた白煙が、時間とともにしだいにうっすらと晴れていく。
やがて見えてきたのは床にころがる真っ黒にこげた人形のカラダでした。
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