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252 それぞれの決着
しおりを挟むコークスの命令により、グリフォンのもとに殺到していた火のツバメたち。
突撃し、一体が爆ぜると次々とあとにつづく。
小規模の爆発と爆発がひとつとなり、中規模の爆発となる。それらがまた連なっては大規模な爆発となり、空気を焼き、大気をもふるわせる。
その中心は鉄を溶かす炉のように燃えたぎり、飛び込んでくるツバメたちを燃料にして、さらなる破壊を大空に出現させていく。
怒涛の攻撃。
これにより一切の反撃の余裕はあたえず攻め切る算段。
だがそれを成しているコークスもまた苦悶の表情を浮かべておりました。
傷口からあふれる血、その痛み、なにより右目の紅玉を使った反動によって、カラダがとっくに悲鳴をあげていたからです。
呪によって強制的に高められた魔力が、洪水のごとくあふれてはのたうち、体内を暴れ回る。これをムリヤリに押さえつけての、技の行使。
気を抜けばいっしゅんで、意識が暗闇に沈んでしまいそう。
「があぁぁっ」
ノドから絞り出したかのようなうなり声。
ゴボリと血を吐き出しながらもコークスは攻撃の手をゆるめない。
うすれゆく意識の中、コークスは爆発音に混じって「ひゅん」と風の鳴る音を聞いたような気がしました。ついでに胸のあたりを小突かれたかのような軽い衝撃も感じました。
「えっ」目を見開いたひょうしに、右目の紅玉にピシリと亀裂が入る。
風の障壁を展開し猛攻を耐えに耐えた末に放たれた、起死回生の一投。
グリフォンのルシエルが風をあやつり生みだした一条の道。その行きつく先は敵の胸元。
限りなく空気が排除された、ほぼ真空に近い状況の中を、疾走するのはティアの放った槍。さえぎるモノが何もないがゆえに、とんでもなく加速された攻撃は、狙いをあやまたずに炎につつまれた大ツバメの身を貫く。
いつの間にか自分の胸から生えている一本の柄。
それが竜槍だとわかったとき、コークスは己が敗北を悟りました。
「レクトラムさま……、もうしわけありません」
パッと散る火花のように、いっしゅんだけ光が強まる。
でもそれ以上は燃えあがることなく、炎が収束して、もとの大ツバメの姿となったコークスが落下していく。
あれほど空にひしめいていた火のツバメたちも、たちまち灰となって消えてしまいました。
空での決着がつくのに前後して、地の方でもそろそろ勝敗が決せられようとしていました。
岩の巨人兵をまえにして、わざとフラフラ飛びまわり、おびき寄せていたのは赤サビ色のドラゴンのフレイア。
まるでネコのまえにたらしたネコじゃらしのように、相手を挑発しては逃げるをひたすらくりかえし、ある地点へと誘導する。
目指す先にて黒いドラゴンのレプラが浮島の一角をせっせと細工し、ラフィールは湖の上にて大技を放つために準備を整えておりました。
やがてすべての準備が整ったところで、フレイアが向かったのは浮島の端っこ。
まんまと誘い出された巨人兵。
その背後をいきなりドン! と押したのはラフィールの放った魔法。
大量にあった湖の水、そのほとんどを使って造られた竜が、空を舞い勢いよく頭から突っ込む。
都の一つや二つぐらいまとめて洗い流せるほどの水のチカラ。
にもかかわらず、数歩たたらをふむも、どうにかふん張ってみせた巨人兵。
そこに黒いドラゴンが口をあけて、追加でブレスを発射。
しかし狙いは巨人兵の大きな背中ではなくて足下の地面。
すでに何か所も穴があけられており、あとすこしで地盤がくずれるように細工されたソレは、巨人兵自身の重みとあいまってたちまち崩落をはじめる。
あわててそのへんに手をかけて、落ちないようにと抵抗をみせた巨人兵。
その顔面に渾身のシッポ攻撃を見舞ったのはフレイア。
「とっとと往生しやがれっ!」
なんとも荒っぽい別れのあいさつをされて、衝撃により首がもげそうなぐらいにのけぞった巨人兵。
そのまま崩れた地面とごっちゃになって浮島から落下。
海へと落ちて、空の上の浮島にまで届かんほどの盛大な水柱をあげました。
これこそがラフィールたちの狙いであったのです。
だって倒すたびに強くなるような敵の相手なんて、マジメにしていられませんから。
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